比嘉清の文でおぼえるうちなあぐち

聴ち美らさ 語い美らさ 書ち美らさ 御万人ぬうちなあぐち

はいさい、ぐすうよう。いめんせえびり。 うちなあぐちの散文を丁寧文で実践している比嘉清です。 うちなあぐちへは散文から入るのも一つの手です。沖縄の団塊世代は日本語を学ぶのに100%近くが小学校の教科書から入りました。大きくなって発音の違いに苦労しましたが、長い目でみれば、今は文章から入ってよかったと思っています。

うちなあぐち

① まるけえてぃ鋸取(ぬくじりとぅ)てぃん、受取(うきとぅ)らりいるむぬ(の)おあらん。
② 帆高船(ふうだかぶに)や島取(しまとぅ)らん、肝高女(ちむだかゐなぐ)や家(やあ)持(む)たん。(デンサー節)
③ 人(ちゅ)ぬ言(ゆ)し、徒(いちゃんだ)ん、横勘(ゆくがん)取(とぅ)ゆるむぬおあらんどう。
④ 夫婦(みいとぅんだ)ぬ仲取(なかとぅい)い傍取(はたとぅい)いや、しい様(よう)ぬあん。
⑤ 値(でえ)や売(う)やあとぅ買(こう)やあぬ言(い)い分(ぶん)ぬ中取(なかとぅ)たん
⑥ しい様(よう)にちいてぃ、早(ふぇえ)く取(とぅ)てぃ付(ち)きらんでえならん。
⑦ 精霊(しょうろう)や、たんかあどぅ取(とぅ)てぃどぅ、ちけえちょおる。
⑧ 今(なま)あ時取(とぅちとぅい)い日取(ふぃいどぅ)いする為(たみ)ねえユタ買(こう)いがあ行(い)かん。

日本語

① たまに鋸を扱っても、習得できるものではない。
② 大船は小島に寄らず、お高く留まる女は家庭を持たない。
③ 他人の言う事を、むやみに邪推するものではないよ。
④ 夫婦の仲を取り持つのはやりようがある。
⑤ 値段は売り手と買い手に言い分の間をとった
⑥ やり方について、早めに処方しないといけない。
⑦ (盆の)祖先への案内は遥拝して済ませている。
⑧ 現代は日取りや時を占うのにユタを買いには行かない。

【解説】
例文①「鋸取ゆん」は「鋸を扱う」。「蚤」、「鉋」等の大工道具の他、「包丁」等にも用います。「包丁(ほうちゃあ)取(どぅ)い」は「包丁捌き」の意味になります。
例文②「島取ゆん」は「(停泊する港として)島に投錨する」の意味です。教訓歌「デンサー節」より借用しました。歌詞は「どぅくどぅん肝(ちむ)持(む)ちいねえ、海(うみ)に転(くる)ぶる」(あまり、お高く留まると海に転落するよ)と続きます。
例文③「横勘取ゆん」は「誤解する」、「邪推する」等の意味です。
例文④「仲取い傍取い」は「仲を取り持つ」の意味。単に「仲取ゆん」とも言います。「仲」は「なあか」とも言います。「仲取ゆん」は「取い成すん」とも言います。
例文⑤「中取ゆん」は「間をとる」の意味です。「中」は「なあか」とも言います。
例文⑥「取てぃ付きゆん」は「処方する」、「手段・方法を講じる」の意味。但し、薬の調合は「配剤(ふぇえぜえ)」、「薬(くすい)盛(む)ゆん」と言います。
例文⑦「たんかあ取ゆん」は「遥拝する」。「向(ん)けえ取ゆん」、「御通しすん」とも言います。
例文⑧「時取ゆん」、「日取ゆん」はそれぞれ「(物事をする)時を占う」、「日を選ぶ」の意味です。

【応用問題】
 例文や説明文を参考に次文中の太字の語句に最も相応しい語句を次の()内から選びなさい。答えは下欄です。
(横勘取てえ、御通しし、取てぃ付きらんでえ、仲取ゆしん、包丁取い)

① いちゅなさくとぅ、今度(くんどぅ)ぬタナバタあ、向(ん)けえ取(とぅ)てぃ済(し)ますん。
② 聞(ち)ちばっぺえやれえ、済(し)むしが、うったてぃ取(とぅ)い違(ちが)てえならん。
③ とおないねえ、男(ゐきが)ぬる包丁使(ほうちゃあぢけ)えや上手(じょうじ)がやらん分(わ)からん。
④ 彼(あ)っ達(たあ)や兄弟(ちょうでえ)ぐふぁさぬ取(とぅ)い成(な)すしん、よねえあやらん。
⑤ 台風(てえふう)ぬ来(ち)ゅうるばあや、早々(ふぇえべえ)とぅ、支度(したく)さんでえならん。
答え:
① 御通しし。
② 横勘取てえ。
③ 包丁取い。
④ 仲取ゆしん。
⑤ 取てぃ付きらんでえ。

日本語意訳
①忙しいので、今年の七夕(墓の掃除および祖先への盆案内日)は遥拝で済ます。
②聞き間違いなら良いが、わざと誤解してはいけない。
③いざとなれば、男の方が包丁捌きは上手かもしれない。
④彼等は兄弟仲が悪いので仲裁する(取り持つ)のは容易ではない。
⑤台風がやってくる場合は、早めに対策を講じなければならない。

うちなあぐち

① 今(なま)あ前(めえ)やか、煙草(たばく)吹(ふ)ちゅる人(ふ)お、なんぞお、居(をぅ)いびらん。
② 小満(しゅうまん)芒種(ぼうしゅ)ぬ節(しち)え家(やあ)ん中(なあか)あ、いいくる、麹(こうじ)ふちゅん
③ エイサー臣下(しんか)ぬ指(いいび)、吹(ふ)ちゅし(せ)ん、エイサーぬ一(てぃい)ちやん。
④ 芋(んむ)んかいん色々(いるいる)あしが、粉吹(くうふ)ちゃあぬどぅまあさる。
湯(ゆう)沸(ふ)かすし(せ)え、物(むぬ)すがやあぬするぬ仕口(しくち)とお別(びち)がやら。
⑥ 悪(や)な夢(いみ)見(ん)ち後(あとぅご)、息(いいち)ん吹(ふ)からん吹ちいすぬばあんあん。
⑦ どぅく鼻(はな)吹(ふ)ちい強(じゅう)されえ、病(やんめえ)がやらん分(わ)からん。
⑧ 実(みい)ぬ無(ね)えらん人(ちゅ)ぬどぅ、口吹(くちぶ)うちんする

日本語

① 今は以前より、煙草を吹(す)う人は、多くは居ません。
② 梅雨時期には、、家の中には大抵、黴が生える
③ エイサー演舞団が指笛を鳴らすことも演舞の一つだ。
④ 芋にも色々あるが、ほくほくしているのが美味しい。
⑤ お湯を沸かすのは炊事人の仕事とは別なのだろうか。
⑥ 悪い夢を見た後、息も絶え絶えになっている場合もある。
⑦ あまり鼾をかくのが、ひどければ病気かもしれない。
⑧ 中身がない人ほど、ほらを吹くのである

【解説】
例文①「煙草吹ちゅん」は「煙草を吸う、煙草を吹かす」、「吸った煙を外に吐き出す」の意味です。
例文②「麹吹ちゅん」は「黴が生える」。「麹」は「味噌麹」は「酒麹」にも言いますが、地方によっては「かあぶい(黴)」を用いることもあります。
例文③「指吹ちゅん」は「指笛を鳴らす」の意味で、地方によっては「竿吹(そおび)ちすん」とも言います。
例文④「粉吹ちゅん」は、主に「(煮芋が)ほくほくするする」の意味で使われます。「ほくほくしている煮芋」を「粉(くう)吹(ふ)ちゃあ芋」と言います。
例文⑤「湯沸ちゅん」は首里語系で「お湯が沸く」の意味。那覇等では「湯ぬ沸(わ)ちゅん」と言います。
例文⑥「息吹ちゅん」は「息をする」。第162講「息」に関する慣用句参照。
例文⑦「鼻吹ちゅん」は「鼾をかく」。第141講の「鼻」に関する慣用句参照。
例文⑧「口吹うち」は「大言壮語」、「ほら吹き(をすること)」の意味。似たような意味で「大物言(うふむに)い」があります。

【応用問題】
 例文や説明文を参考に次文中の()内に最も相応しい語句を左の()内から選びなさい。答えは下欄です。
(米、口、湯、指、麹、息、鼻、風、竿、粉、味噌)

① あんし、しからあさる所(とぅくる)んじ、( )吹ちゅし(せ)えあらんどう。
② 茶飲(ちゃぬ)みい欲(ぶ)しゃれえ、早(ふぇえ)く( )沸(ふ)かせえわ。
③ 彼(あり)え酒(さき)ん飲(ぬ)まんあい( )ん吹(ふ)かんあい、大事(でえじ)な性入(しょうい)っちょおん。
④ ( )吹(ぶ)ちゃあぬ言し(せ)え、なあ、誰(たあ)ん聞(ち)かんなとおん。
答え:
⑤ ( )植(うゐ)いゆらあ、粉吹(くうふ)ちゃあやまし(せ)えあらに。
① 指。
② 湯。
③ 煙草。
④ 口。
⑤ 芋。

日本語意訳
①こんなに寂しい所で口笛を鳴らすものではないよ。
②お茶を飲みたければ、早くお湯を沸かしなさい。
③彼は酒は飲まないし、煙草もすわないし、とてもしっかりしている。
④ほら吹きの言う事は、もう、誰も聞かない。
⑤芋を植えるならほくほく芋が良いのではないか。

うちなあぐち

① 新贔屓(にいびち)祝儀(しゅうじ)ぬばあや、写真(しゃしん)抜(ぬ)じゃあぬまんどおん。
② どぅく暑(あち)さるばす、肌脱(はだぬ)じゅる御年寄(うとぅす)いんめんせえん。
③ いちゃっさ、細(くめ)えきてぃ、算取(さんとぅ)てぃん、当(あ)たらん。
④ あったな事(くとぅ)なてぃ、我(わん)ねえ迷(まん)(惑)ぐぃ打っちゃん
⑤ 今(なま)ん、山原(やんばる)舟(ぶに)接(は)じゅる技(わざ)、持(む)っちょおる人(ちゅ)ん居(をぅ)ん。
⑥ 早(ふぇえ)くお着物(ち)のお剥(は)じらんようい、海(うみ)んじ浴(あ)みゆたん。
⑦ 赤子(あかんぐゎ)ぬ臍(ふす)継(ち)じゅし(せ)え、泣(な)き声(ぐぃい)聞(ち)ちからどぅやる。
⑧ 近頃(ちかぐる)お木(きい)ぬ上(ゐい)んかい、やっくゎ架(か)ちゅる人(ちゅ)お居(をぅ)らん。

日本語

① 結婚祝いの場合は、写真を撮る人が多い。
② あまり暑いとき、半裸になるお年寄りもいらっしゃる。
③ どんなに注意深く、計算しても、合わない。
④ 急なことで、私はどうして良いのか分からなかった
⑤ 今も山原舟を造る技術を持っている人がいる。
⑥ 以前は着物を脱がずに、海水浴をしたものだ。
⑦ 赤子の臍を切るのは、泣き声を聞いてからである。
⑧ 最近は木の上に、小屋を造る人はいない。

【解説】
 例文①「写真抜じゅん」は「写真を撮る(写す)」の意味です。「結婚」は、他に「根引(にいび)ち」、「新引(にいび)ち」、「女引(にいび)ち」等の表記があります。ちなみに「ふぃち(ひち)」には「縁故、親戚関係、伝手、援助」等の意味があります。
例文②「肌脱じゅん」は「肌脱ぎになる」、「(上半身)半裸になる」の意味です。
例文③「算取ゆん」は「数を数える、計算する」の意味。「さんみんすん」より「本格的」計算に言うようです。
例文④「迷ぎ打ちゅい」は「気が動転して、どうして良いか分からない」の意味です。
例文⑤「船接じゅん」は「船を造る」の意味です。
例文⑥「着物剥じゆん」は「着物を脱ぐ」の意味です。
例文⑦「臍継じゅん」は「臍の緒を切る」の意味。「継じゅん」と「切ゆん」は反対の意味ですが「切る」という語を敢えて、避けた慣用句です。
例文⑧「やっくゎ」は「木の上等に造る小屋」で、これを造ることを「架(構)ちゅん」と言います。

【応用問題】
 例文や説明文を参考に次文中の()内に最も相応しい語句を左の()内から選びなさい。答えは下欄です。
(継じゅる、切ゆん、抜じゅる、写する、算取たれえ、肌脱がん、衣剥じらん、迷ぐぃ打ちゅん、どぅまんぐぃゆん)

① ちゃんとぅ、( )、儲きとおる事ぬ分かやびたん。
② 景色ぬ写真や、うゎあちちぬ良たさるばあどぅ( )。
③ 赤子ぬ臍( )し(せ)え、かってぃいんかいしみゆしどぅましやる。
④ 立ち仕口するばあやてぃん、太陽ぬ強されえ、( )し(せ)えまし。
⑤ ちゅふぃちゃん、泣ち掛かりいねえ、いいくる、( )。
答え:
① 算取たれえ。
② 抜じゅる。
③ 継じゅ。
④ 肌脱がんしえ。
⑤ 迷ぐぃ打っちゅん、どぅまんぐぃゆん。

日本語意訳
①ちゃんと、計算したら儲けている事が分かりました。
②風景写真は、天気の良い日に撮るべきである。
③赤子の臍を切るのは専門家にさせるのが良いのである。
④肉体労働する場合でも日差しが強い場合は、半裸にならない方が良い。
⑤急に泣き付かれると、大抵、途方にくれる。

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