比嘉清の文でおぼえるうちなあぐち

聴ち美らさ 語い美らさ 書ち美らさ 御万人ぬうちなあぐち

はいさい、ぐすうよう。いめんせえびり。 うちなあぐちの散文を丁寧文で実践している比嘉清です。 うちなあぐちへは散文から入るのも一つの手です。沖縄の団塊世代は日本語を学ぶのに100%近くが小学校の教科書から入りました。大きくなって発音の違いに苦労しましたが、長い目でみれば、今は文章から入ってよかったと思っています。

うちなあぐち

① 昔(んかし)え、さば、今(なま)あ靴(ふや)籠(く)でぃどぅ、学校(がっこう)んかい行(い)ちゅる。
② 母(あんまあ)や帽子(ぼうし)組(く)まあ、御主前(うすめえ)や筵(むしる)打(う)ちゃあやらりいたん。
③ 父母(すうあんまあ)や田(たあ)打(う)っち、子(くゎ)ん達(ちゃあ)や、鞠(まあい)打っち遊(あし)どおん。
④ 先(ま)ぜえ土手(どふぁ)打(う)っちから、うぬ上辺(うゎあび)んかい桟敷(さんしち)打たな。
⑤ くぬ田(たあ)や返(けえ)ち、あまぬ田や深(ふか)さんでえならん。
⑥ 男(ゐきが)あネクタイはち、女(ゐなぐ)おネックレスはちゅん
⑦ 彼(あ)っ達(たあ)男(ゐきが)ん子(ぐぁ)あ諸(むる)成功(せいこう)し、女(ゐなぐ)ん子(ぐぁ)ん諸、立身(でぃっしん)そおん
⑧ 前男(めえゐきが)てぃらむぬ(の)お、ちゃあ断髪(だんぱち)詰(ち)みてぃ爪(ちみ)ん詰みれえ

日本語

① 昔は草履、今は靴を履いて学校に行くのである。
② 母は帽子作り、祖父は筵作りをしていらっしいました。
③ 父母は田を耕して、子供達は鞠を撞いて遊んでいる。
④ 先に土手を築いてから、その上に桟敷を作ろうよ。
⑤ この田は普通に(耕し)、向こうの田は深く耕さないといけない。
⑥ 男はネクタイを、女はネックレスを着ける
⑦ 彼らの男の子は皆、自立し、女の子も皆、嫁に行った
⑧ 良い男たるものは常に散髪をし、爪も切れ


【解説】
 日本語と類似する語句でも沖縄語では日本語の古い用い方或いは慣用的に別の意味で用いている事があります。

例文①「草履、下駄、靴」等を「履く」を「籠むん(込むん)」(首里語では「くぬん」)と言います。
例文②「組むん」は日本語の「編む」とほぼ同じ意味です。筵を作ることを「筵打ちゅん」と言います。
例文③「(田畑を)耕す」を意味する「打ちゅん」は「返すん」、「打ち返(けえ)すん」とも言い、特に荒畑の場合は「漁(あさ)ゆん」、「齧(かじ、かかじ)ゆん」、「切(ち)り割(わ)い割(わ)いすん」とも言います。「耕(たげえ)すん」も用いますが、「田返すん」かも知れません。鞠(まり)については「撞く」の意味に使います。野球での「玉を打つ」はそのまま「球打ちゅん」。
例文④「土手(どぅふぁ、どぅてぃ、あむとぅ)」、「桟敷(さじき)」を「築く、造る」ことにも「打ちゅん」を使います。
例文⑤「田を耕す」には「打ちゅん」や「返すん」の他に、特に深く耕す場合は「深すん」と言います。
例文⑥「ネクタイ」等、「首に着けるもの」は「はちゅん」と言います。「はきゆん」とも言います。日本語の「はく」は意味が「広い」ですが、沖縄語は「狭い」意味で使っていると言えるでしょうか。
例文⑦「成功」は日本語では「商売で成功」、「人工衛星の打ち上げに成功」等と使いますが、沖縄語では「子供が自立できる」、「独立する」等の意味に多く使います。「立身」は「(男の)立身、出世」、「女が嫁ぐ事」に多く使います。
例文⑧「断髪詰みゆん」は「断」と「詰」は近い意味ですので、「馬から落馬」するような表現になっていますが、慣用的表現です。「詰みゆん」は「切って短くする」の意味ですので「切ゆん」とは厳密に使い分けています。

【応用問題】
 例文や説明文を参考に次文中の()内に相応しい語句を左の()内から選びなさい。答えは下欄です。
(履かすくとぅ、籠ますくとぅ、切ゆし、詰みゆし、深し、打ちゅん、返す、漁ゆん、成功、はきゆくとぅ)

① 下駄(ぎた)小(ぐぁあ)ん草履(さば)小ん( )、泣(な)くなよや坊主(ぼうじゃあ)小(「大村御殿」)。
② 此処(くま)あ、かわてぃ、ゆび田(た)やくとぅ、能(ゆう)う( )わるないる。
③ 父(すう)や長男(ちゃくし)、( )しみてぃ、うみなあくそおん。
④ 爪(ちみ)、伸(ぬ)ばしいねえ、うかあさくとぅ、( )えましどう。
⑤ 荒(さ)ぼうりとおる畑(はる)( )でぃち、うたたん。
答え:
① 籠ます。
② 深し、返し。
③ 成功。
④ 詰みゆし。
⑤ 漁ゆん、返すん、打ちゅん。

日本語訳
①下駄も草履も履かすから泣かないでおくれよ坊や。
②ここは特に泥深田なので深く耕さなければならない。
③父は長男を一人前にしてほっとしている。
④爪を延ばすと危ないから切った方がよい。
⑤荒畑を耕そうと疲れた。

うちなあぐち

① なあ、ああたけえなとおい、でぃか、一(ちゅ)てえや憩(ゆく)らな。
② 婆前(はあめえ)ぬああちらひゃあちら、物(ゆ)ゆみ始(はじ)みいねえ、止(や)まん。
③ 汝(いゃあ)や肝要(かんぬう)な事(くとぅ)ないねえ、あぬうくぬうどぅすんばあ。
④ シマんかい戻(むどぅ)たれえ、あながちさぬ強(つう)さぬ涙(なだ)落(う)ちゃん。
⑤ 彼(あり)え、ああらんかあやくとぅ、ふぃれえ易(やっ)さん。
⑥ あんし、'''飽(あ)ち果(は)いしいしいねえ、しい成(な)しゆさんどう。
⑦ ちゃっさが餓(か)ちりとおらあ、あんしあばらあ食(か)みいし
あらん縁(いん)結(むし)ぶる事(くと)お、いいくる不為(ふだみ)な事(くとぅ)やん。

日本語

① もう、くたくたも疲れているし、さあ、一時休もうかな。
② お婆さんがぺちゃくちゃ喋り始めると止まらない。
③ 君は肝心な事になれば、しどろもどろになるのか。
④ 故郷に帰ったら、とても懐かしいので涙を流した。
⑤ 彼は飾り気のない人なので、付き合いやすい。
⑥ そんなに、嫌々ながらやったら、やり遂げられないよ。
⑦ どれほど飢えているのだろうか、そんなに大食いして
縁の無い縁を結ぶ事は大抵、為にならない事である。

【解説】
 今回より、特定の語句に関しないその他の慣用句をご紹介いたします。101講から200講の慣用句で漏れた語句が他の語との組み合わせされている場合もあります。

例文①「ああた」は足が痛みや疲れ等でのびたりぐにゃぐにゃになっている状態のこと。単独では用いず「ああたなゆん」(くたくたに疲れる)、「ああた走い」(よちよち歩き、股を広げて滑稽に歩くこと)等の句で用います。
例文②「ああちらひゃあちら物ゆむん」(首里語は「~物ゆぬん」)は「ぺちゃくちゃお喋りをする」。
例文③「あぬうくぬう」は「しどろもどろなること」の意味で、日本語では「あのうそのう」。
例文④「あながちさん」は「懐かしい」。「あながちさぬ強さん」で「とても懐かしい」の意味となります。
例文⑤「ああらんかあ」は「飾り気のない人」、「自然体で遠慮しない人」の意味です。語句というより、単語ですが、幾つかの語から成っていると考えられることから特に取り上げました。
例文⑥「呆ち果いしい」は「いやいやながらすること」の意味です。
例文⑦「あばらあ食みいすん」は「大食いする」の意味です。「あばらあ」は「大食い」の意味です。
例文⑧「あらん縁結ぶん」は「結ぶべきでない縁を結ぶ」の意味です。「あらん」は「でない」、「違う」という意味で且つ存在動詞「やん」の否定形でもあります。

【応用問題】
 例文・解説文を参考に次文の太字部分の意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。答えは下欄です。
(飽ち果てぃはいしい、ああたなけえなとおい、あばらあ、ああちらひゃあちら物読まがなあどぅ、あぬうくぬう)

①父(すう)や一(ちゅ)けん倒(とお)りたれえ、叫(あ)び様(よう)んあま言(い)いくま言いどぅする。
②口(くち)ぱあくうあんまあ達(たあ)や井戸(かあ)油断(ゆだん)さがちいどぅ衣洗(ちんあれ)えんする。
③草臥(くた)んてぃ、足(ふぃさ)ん引(ふぃ)からんなとおい、でぃか、憩(ゆく)らなやあ。
④仕口(しくち)え、にりいしいしいねえ、却(けえ)てえ、をぅたい早(べえ)さんどう。
やとぅ餓鬼(がち)んかい腹中(わたなか)どぅ食(か)むんどうんでぃ言(ゆ)し(せ)え、どぅくやん。
答え:
①あぬうくぬう。
②ああちらひゃあちら物ゆまがなあしどぅ。
③ああたけえなとおい。
④飽き果てぃしい。
⑤あばらあ。

日本語意訳
①父は一度(脳梗塞で)倒れた後は喋り方もしどろもどろになった。
②お喋りな奥さん方は井戸端会議をしながら、洗濯をするのである。
③疲れて足もうごけなくなったし、さあ休憩しようかな。
④仕事は、嫌々ながらすれば、却って疲れ易いよ。
⑤大変な食いしん坊に腹半分だけ食べよというのはあんまりだ。

うちなあぐち

① 沖縄(うちなあ)民謡(ふぁあうた)あ、悪(や)な声(ぐぃい)し、歌(うた)てぃん、味(あじ)ぬあれえ済(し)むん。
② 初(はじ)みてぃ行会(いちゃ)ゆる人(ちゅ)んかい、悪(や)な言(い)いすし(せ)えあらん。
③ 夕(ゆ)べえ、悪(や)な夢(いみ)、見(ん)ちゃしが、何(ぬう)んあらんでえ済(し)むしが。
④ 誰(たあ)んしい欲(ぶ)しゃ無(ね)えん悪(や)な業(わざ)あ、大概(てえげえ)、手間(てぃま)ぬ高(たか)さん。
悪(や)な理屈(りくち)から直(し)ぐ、悪な企(だく)まあやんでぃち、分(わ)かゆん。
悪(や)な叫(あ)びいする悪(や)な童(わらば)あや何処(まあ)にん居(をぅ)いどぅする。
⑦ 親(をぅや)ぬ子(くぁ)んかい悪(や)な口(ぐち)すし(え)え、悪な性(し)持(む)ちからああらん。
⑧ 昔(んかし)ん人(ちゅ)やか、今(なま)ぬ人(ちゅ)ぬどぅ悪(や)な衣(ち)のお着(ち)ちょおる。

日本語

① 沖縄民謡は悪い声質で歌っても味わいがあれば良い。
② 初対面の人に不快な言い方をするものではない。
③ 昨夜は不吉な夢を見たが、何事もなければ良いが。
④ 誰もやりたがらない危険な仕事は大抵、報酬が高い。
屁理屈から、直ぐに悪巧みをする奴だと気付く。
厭な叫び声を立てる憎まれっ子はどこにでもいるもの。
⑦ 親が子に悪口するのは、意地悪からではない。
⑧ 昔の人より、現代人の方がセンスの悪い服を着けている。

【解説】
例文①「悪な声」は「音質の悪い声」、「だみ声」、「悪い声」等の意味です。
例文②「悪な言い」は「厭な物の言い方」、「不快な言い方」等の意味です。
例文③「悪な夢」は「悪い夢」、「不吉な夢」の意味です。
例文④「悪な業」は「危険な仕事」、「汚い仕事」、「つらい仕事」等の意味です。
例文⑤「悪な理屈(りくち、でぃくち)」は「悪知恵」、「ヘ理屈」、「理不尽」等の意味。「悪な企まあ」は「悪な企み」(悪い企み)をする人の意味。
例文⑥「悪な叫びい」は「不快な叫び声」、「不快な言い方」の意味。
例文⑦「悪い口」は「毒舌」、「悪口」。「悪(や)な口(ぐちゃ)あ」は「毒舌家」。「悪な口すん」は「悪口をたたく」。「悪な性持ち」は「根からの意地悪」、「悪根性」等の意味です。
例文⑧「悪な衣」は「センスの無い服」、「品の無い服」、「汚い服」等の意味。

【応用問題】
 例文・解説文を参考に箇条文の太字部分に近い語句を左の( )内から選びなさい。答えは下欄です。
(悪な衣着ち、悪な声、悪な業、悪な性持ち、悪な言い)。

① 年若(とぅしわか)さてぃん身体(からた)ぬ弱(よお)いねえ、年寄(とぅすいぐぃい)い声(ぐぃい)するっ人(ちゅ)ん居(をぅ)ん。
② 縁故(ゑえか)巡(みぐ)いするばあやてぃん、悪(や)なすがいし(せ)え、出(ん)じらんきよお。
③ 今(なま)あ知(し)らん人(ちゅ)んかいん悪(や)な叫(あ)びいするっ人ん居(をぅ)くとぅ大事(でえじ)。
④ 生(ん)まりてぃ直(ちゃあき)から悪(くくる)な心(くくる)、持(む)っちょおるっ人(ちゅ)お居(をぅ)らん。
手乱(てぃいんじゃあ)りするはごうりい仕事(しくち)ん我(わん)んから我からあし、しわ。
答え:
① 悪な声。
② 悪な衣着ち。
③ 悪な言い。
④ 悪な性持ちえ。
⑤ 悪な業。

日本語訳
①若くても身体が弱れば、掠れ声する人もいる。
②親戚巡りであっても、ダサい格好では出かけないでよ。
③昨今は知らない人にも不快な言葉を浴びせる人もいるから大変。
④生まれつき根からの悪い心を持った人はいない。
⑤手を汚すような汚い仕事も率先してやれ。

追記:「ある言葉」に関する「慣用句・言い回し」は、まだありますが、それぞれ、数が少ないですので、以後(来年)は「その他の慣用句・言い回し」に引き継いでまいります。以上。
あんせえ、いい正月、迎えてぃうたびみせえびり。

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