比嘉清の文でおぼえるうちなあぐち

聴ち美らさ 語い美らさ 書ち美らさ 御万人ぬうちなあぐち

はいさい、ぐすうよう。いめんせえびり。 うちなあぐちの散文を丁寧文で実践している比嘉清です。 うちなあぐちへは散文から入るのも一つの手です。沖縄の団塊世代は日本語を学ぶのに100%近くが小学校の教科書から入りました。大きくなって発音の違いに苦労しましたが、長い目でみれば、今は文章から入ってよかったと思っています。

日本語

①雨が降っていますか。(雨が降っているか)
②はい、雨が降っています。
③薪は、燃えているか。
④いいえ、燃えていません。

うちなあぐち

①雨(あみ)ぬ降(ふ)とおいびい。(雨ぬ降とおみ)
②うう、雨ぬ降とおいびいん。
③薪(たむん)のお、燃(め)えとお
④うううう、燃(め)えてえ居(をぅ)いびらん。

【解説】
特定の状況、特定のものを尋ねる(問う)場合には疑問詞「み」を使います。日本語では不定疑問も特定疑問も疑問詞「か」で統一されていますが、沖縄語では使い分けられます。
 但し、『沖縄語辞典』には、この特定疑問を表わす助詞「み」は、用言の語尾「n」から変化した「m」と「本来の疑問助詞」ある「i」が結合したものであるとしています。ですから、同書には助詞としても「み」は掲載されていません。(前講で取り上げた疑問助詞「に」についても同様な扱いとなっています。)
 ローマ字(音素)表記となっている前掲書としては、ローマ字で表現できる方法で説明するのは当然ですが、ひらがらを使用文字とする本書においては、「み」や「に」を語として扱わなければなりません。ひらがな表記の言語をローマ字で説明する場合は、音韻説明と文法の説明とは別けられるべきであり、混同されるべきではありません。両者を混同した場合、「み」は「むい」、「に」は「んい」等と表記するはめになってしまいます。文法説明は表記文字や表記法によって異なるのです。

例文① ( )は非丁寧文です。
例文②及び④ 日本は欧米に比べると、上下関係がうるさいです。沖縄はもっと厳密すぎます。日本語の「はい」が上下関係によって、使い分けられるのです。これでは、目上の者と話する場合は緊張してしまいますが、これも言語習慣です。沖縄語を知らずに育った現代のリベラル志向の若い方々も匙を投げずに、一応、目を通してください。目上の者には「うう」、目下の者には、「いい」、目下の年長者には、「おお」、親しい者や目下には、「んん」等と使い分けます。
 否定や拒絶の場合は、それぞれ、「うううう」、「いいいい」、「おおおお」、「んんんん」等となります。何れも、前の二文字目(2音節目)は伸ばし音で、三文字目は急激に揚げ音且つアクセントにし、最後に下げ音にします。

  
【応用問題】
次の日本語を沖縄語で表しなさい。
①その肉は安いですか。
②はい、安いです。一キロ50円です。
③もう、夜は寒くなっていますか。
④はい、もう、寒くなりましたよ。

答え:
①うぬ肉(しし)え、安(や)っさいびいみ。
②うう、安っさいびいん。一キロ50円(いん)やいびいん。
③なあ、夜(ゆる)お、寒(ふぃい)くなとおいびいみ。
④うう、寒(ふぃい)くなとおいびいんどお。

   
【関連話題-返事】呼びかけに対する応答は、本文例の他に現実には主には女性が使う「ふう」はじめ「ひい」、「ふん」、等のバージョンもあります。士族社会の名残りのある首里等で厳しい返事のし方も、特にリベラルの波が押し寄せたわけでもない地方においては上下に関係なく「んん」(肯定)、「んんんん」(否定)で通る場合が多いです。

日本語

①これは何です。(これは何か。)
②これは食べ物です。
③これは飲み物だ。
④これは、汁だよ。

うちなあぐち

①くりえ、何(ぬう)やいびい。(くりえ何やが。)
②くりえ、食(か)み物(むん)やいびいん。丁寧
③くりえ、飲(ぬ)み物やん。非丁寧
④くりえ、汁(しる)やさ。

【解説】
 沖縄語では文中に疑問詞「いつ」、「どこで」、「だれが」、「何を」、「どのように」を表わす語句がある場合の疑問文(不定疑問文)には助詞「が」を用います。日本語の「か」に対応します。(もっとも、日本語の場合は、特定疑問を表わす場合も同じく「か」をもちいます。)
例文① 近称代名詞「くりえ」は、語形保存表記(「はじめに」及び附録「ヤ系係助詞一覧」参照)です。「くり」の形をそのままにした上で、格助詞「え」をつけます。語形を保存しない表記の場合は「くれえ」となります。また、中称、遠称代名詞、「それ」、「あれ」は、それぞれ「うり」、「あり」となります。( )内は非丁寧文です。
例文② 丁寧文の例です。「やいびいん」は存在動詞「やん」の連用形「や」と「やびいん」。存在動詞は日本語の形容動詞にほぼ対応します。
例文③ 非丁寧文としての文例です。
例文④ 文末の「さ」は感嘆詞です。日本語の感嘆詞「よ」に対応する場合が多いです。

【追記】民謡「ベーベーぬ草刈いが」にある「いったー アンマー まーかいが」(あんたの母さんどこにか)」における「が」も不定疑問詞です。「まーかいが」は「まーんかいやが」の「や」(存在動詞)が略されています。「組踊」には、「たあ誰が」という台詞が出てきますが、日本語の「誰が」という意味ではなく、「(そなたは)だれか」という意味です。「誰やが」の「や」(存在動詞)が略されています。

【応用問題】
次の日本語文を沖縄語で表しなさい。
①どれがいいですか。(どれがいいか)
②これがいいです。(これがいい)
③君は、どこへ行きますか。
④学校へ行きます。
⑤あれは、どのように、作ったのですか。
⑥レシピの通り作りました。

答え:
①何(じ)るお、ましやいびい。(何るお ましやが)
②くりえ、ましやいびいん。(くりえまし)
③汝(やあ)や、まあんかい、行ちゃびい
④学校(ぐぁっこう)んかい、行ちゃびいん。
⑤ありえ、如何(ちゃあ)し、支(し)こうやびた
⑥レシピぬ通(とぅう)い 支こうやびたん。

  
【関連話題】 沖縄語の「何(ぬう)が」は、「何やが」における「や」が略されたものではありません。「何が」は日本語の「なぜ」という意味で、「何やが」は、「何か」という意味です。

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