比嘉清の文でおぼえるうちなあぐち

聴ち美らさ 語い美らさ 書ち美らさ 御万人ぬうちなあぐち

はいさい、ぐすうよう。いめんせえびり。 うちなあぐちの散文を丁寧文で実践している比嘉清です。 うちなあぐちへは散文から入るのも一つの手です。沖縄の団塊世代は日本語を学ぶのに100%近くが小学校の教科書から入りました。大きくなって発音の違いに苦労しましたが、長い目でみれば、今は文章から入ってよかったと思っています。

2010年03月

日本語

①サトウキビの葉を切り落として来るね。
②皮を剥いで、おいていてください。
③サバニを漕いで、糸満から北谷まできました。
④暑いから、扇で扇いでくれませんかね。
⑤眼鏡をはずして、見てごらん。

うちなあぐち

①ううじ葉(ばあ)、かさ、来(く)うい。
②皮剥(かあは)、置(う)ちょおてぃ呉(くぃ)みそおれえ。目上
③サバニ、漕(くう)、糸満(いとぅまん)から北谷迄(ちゃたんまでぃ)、来(ち)ゃあびたん。
④あち暑さくとぅ、おうじ扇さあに、扇、とぅらんさんなあ。
⑤眼鏡(がんちょう)ぬ、見(ん)ちんでぃ。

【解説】
 動詞終止形がジュン、否定(未然形+否定を表わす助動詞)がガン、接続態がジの形をしている動詞をガ行ジュン・ディ動詞と言います。「漕ぐ」等、語尾が「ぐ」となる日本語動詞が基本的に対応しますが例外もあります。
なお、 例文の接続と同じ意味を表わす別形は、例文順に、
 かさじゃあま、かさじゃあに、かさじゃあい、剥じゃあま、剥じゃあに、剥じゃあい、漕じゃあま、漕じゃあに、漕じゃあい、扇じゃあま、扇じゃあに、扇じゃあい、ぬじゃあま、ぬじゃあに、ぬじゃあい。

例文② 同じ意味の目上文は他に、「置ちょおちみそおれえ」、「置ちょおちみそおり」、「置ちょおかれえ」、「置ちょおちゃびれえ」があります。
例文① 「来うい」の「い」は疑問詞ですが、ここでは意思を表わす助詞(又は感嘆詞)です(相手の同意を得る為の軽い疑問の意味を残しています)。日本語の真意を確かめるとき等に使う感嘆詞「ね」に対応します。第3講及び第7講参照。
例文④ ほぼ同じ意味の別の言い方に、「扇じ呉みそおらんなあ」、「扇じみそおらに」等があります。
例文⑤ 目上語は、「見ち呉みそおり」、「見ぢみそうり」等。(上の太字の場合、「見じゅん」の接続態「ち」が濁音になる事に注意。

●ガ行ジュン・ディ動詞(数的には多くはなく主なものは以下の通り): ゐい泳じゅん(泳ぐ)、はじゅん(船を造る)、ち注じゅん(注ぐ)、ち継じゅん(継ぐ)、ちんじゅん(紡ぐ)、とぅ跳ぬじゅん(跳ぶ、ジャンプする、跳び跳ねる。「とぅんじゅん」ともいう)、は配じゅん(配る)、ううじゅん(あなどる、ゆすぐ)、ちむ肝ふじゅん(満足する)、きじゅん(混ぜる、攪拌する、皮肉を言う)、とぅ研じゅん(研ぐ)、ちるじゅん(連ねる、連続させる)、ちるじゅん(鳥などが交尾する。但し首里語では「ちるぶん」)、ぬじゅん(抜く、*撮る)等。*「撮る」と言う意味では『沖縄語辞典』には載っていません)等。

  
【応用問題】
 次の沖縄語文を日本語文に直しなさい。
①汚(ゆぐり)衣(じん)や、強(ちゅう)う強(じゅう)うとぅ、うう、洗(あら)り。
②あぬ島(しま)んかい泳(ゐい)、渡(わた)らりやびいん。
③上等写真(じょうとうしゃしん)、撮(ぬ)来(く)うよお。
④う菓子(くぁあし)、童(わら)ん達(ちゃあ)んかい、配(は)、取(とぅ)らせえ。
⑤山原船(やんばらあ)は、博物館(はくぶちくぁ)ぬんかい、かざてえん。

答え:
①汚れた服は強めに濯いで洗え。
②あの島には泳いで渡れます。
③良い写真を撮ってきてよ。
④お菓子を子供らに配ってくれ。
⑤山原船を造って、博物館に展示してある。

日本語

①今年の冬は温かく、雨も多いです。
②あそこにあるお茶を取ってきてください。
③この子も、つれていって。
④今日は皆で民謡を歌って、遊んだ。
⑤あの会社の入社試験受けて、合格しました。

うちなあぐち

①今度(くんどぅ)ぬ冬(ふゆ)お、温(ぬく)ばあってぃ、雨(あみ)ん多(うふ)さいびいん。
②あまんかいあぬう茶(ちゃ)、取(とぅ)てぃ来(ち)、呉(くぃ)みそおれえ。目上
  呉みそおり(目上、澄まし)
③うぬ童(わらび)ん、連(そ)うてぃ行(い)けえ。
④今日(ちゅう)や、諸(むる)し、民謡歌(ふぁあうたうた)てぃ、遊(あし)だん。
⑤あぬ会社(くぁいしゃ)ぬ入社試験(にゅうしゃしきん)、受(う)きてぃ掛(か)かやびたん。

【解説】
 否定形(未然形+否定を表わす助動詞)がラン(註)、終止形がユン(イン)、接続態がティの形をしている動詞をラ行ユン(イン)・ティ動詞と言います。『沖縄語辞典』にはこれらの動詞について、補足的に「=ran,=ti」と否定形と接続態の形が表示されています。なお、終止形ユンの変形であるインは多くの地方で使われますが、元々、首里語であるユンも屋取集落(首里士族の落集落)の影響等もあって地方に点在しています。この動詞は沖縄語動詞では最も数の多い動詞です。
 なお、「思(うま)あん」、「構(かま)あん」、「習(なら)あん」、「洗(あら)あん」等は否定がアンですが、それらは単に開音(又は日本語)「―わん」部分が合音に変化(つまり「わ」が「あ」に変化)したものであると考える事ができます。

◆変則ラ行ユン・ティ動詞: 前述の「構(かむ)ゆん」等。(但し、「習う」「洗う」等の否定は「習らん」「洗らん」の二通りある。)

文例① 日本語の「今年」は沖縄語の口語では「今度」。日本語の「今度」は「なま今ぬまあどぅ、なま今ぬまある」となります。
文例②「あぬ」は動詞「あん」の修飾語法です。連体形「ある」にして「ある茶」でも良いです。
右の接続と同じ意味の別形は、例文順に、温ばやあま、温ばやあに、温ばやあい、取やあま、取やあに、取やあい、連うやあま、連うやあに、連うやあい、歌やあま、歌やあに、歌やあい、受きやあま、受きやあに、受きやあい。
 日本語の動詞語尾が「る」及び「う(古語は「ふ」)」であるものは「する」(スン・シ動詞)を除き、概ねラ行ユン・ティ動詞になります。ただし、「言う」、「見る」、「来る」、「知る(接続態のみが『知っち』となる)」等は変形が著しく別の種類に分類します。「来る」は現代語では「チュウン」ですが、「くゆん」からの(口蓋化含む)変形と考えられます。また、「見る」は「ミユン」から「ヌウン」などを経て、「ンジュン」になったと考えられます。中間と思われる「ヌウン」は現代でも使用されています。「―してみる」等のように「みる」を補助動詞(第89講)とする丁寧文が「-し、んじゃびら」ではなく、「-し、なあびら」が圧倒しているのは「ヌウン」を引きずっている関係だと思われます。

  
【応用問題】
 次の沖縄語文を日本語に直しなさい。
①ヤマトゥんじ、儲(もう)きてぃ、来(く)うよお。
②年取(とぅしとぅ)てぃ、白毛(しらぎ)ぬ生(み)い強(じゅう)さぬ、ふしがらん。
③あんまあんかい、買(こ)うてぃ、うさがらせえ。
④温度(うんど)お、開(あ)きてぃん、閉(く)うてぃん、同(い)ぬむんやいびいん。
⑤御主前(うすめえ、うしゅめえ)や、耳(みみ)ぬ崩(くじ)りてぃ、むぬお聞(ち)ちゃびらん。

答え:
①本土で、儲けて、来てね。
②年取って、白毛が多すぎて、どうしようもない。
③お母さんに、買ってさしあげなさい。
④温度は、開けても閉じても同じです。
⑤おじいさんは、耳が遠くなって、聞こえません。

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