日本語

①可愛がっていた犬は、もう死んでいなくなりました。
②猫は死んでも、お墓には入れません。
③死んでしまってからは、反省のしようもありません。

うちなあぐち

①愛(かな)なさそおたる犬(いん)や、なあ死(し)、居(をぅ)らんなとおいびいん。
②猫(まやあ)や、死ん、墓(はか)んかいや入(い)りらりやびらん。
③けえ、死からあ、斟酌(しんしゃく)すぬ事(くとぅ)ん、ないびらん。

【解説】動詞「死ぬん」は否定形が「死なん」、接続態が「死じ」となります。『沖縄語辞典』には、活用を説明する箇所には「不規則」とのみ記されています。「焦がり死に」という句もあり「死ぬん」は人の死に対しても用いないわけではありません。ですが、やはり人の死には「まあすん」という語を使います。
文例③「斟酌」は日本語の「斟酌」から「反省」の意味に転じたものです。
シヌン動詞例:「死ぬん」のみです。

【関連話題Ⅰ】
 私が子供の頃、老女は「死ぬ」という言葉に敏感でした。言葉には魔力があると信じられていたでのしょう。「死」という言葉を発しようものなら、血相を変えて叱られたものです。自分の夫の死に対しても、決して「死」という言葉を使わず、「みいく目閉うとおん(目を閉じた)」等と表現しました。数年前、八十歳余の従姉の夫が亡くなった時、彼女は私に「清らすがいけえしみてえんどお(美しく着飾ってしまったよ)と連絡をくれました。彼女の夫が長らく病に臥していた事を知っていた私は、問い返す事無く、お悔やみを言いました。都市部辺りでは、「唐旅(又、ハワイ、フランス等)んかい、もうちゃん」等と言ったそうです。病気になる事さえも「寝んとおん(寝ている)」、「柔らちょおん(柔らかくなっている)」と言います(後者は『沖縄語辞典』にもあります)。ちなみに、国王(御主加那志前)の死については、「うし御過じりみせえん(過ぎ去りたまう)」とか「うく御籠むいみせえん(御籠もりあそばす)」等と表現します。

【関連話題Ⅱ】サンスクリット語やその系列であるヒンディー語では「死」や「死ぬ」を表わす語として、「marana」(マラナ、マラニャ)というのがあるそうです。「まあすん」の語幹部分に似ています?。
【関連話題Ⅲ】なぜか、「死」に関連する語句には奇妙なものがあります。「はんぶん半分じ死に」という語は、「死にかかっている事」を表わし、「はんぶんい半分生ちち」という語は、「かろうじて生きている事」を表わします。「し死にがたあまあ回あとおん」は「死にかけている」という意味の慣用句です。同じ意味の慣用句に「し死な死なあそおん」というのもあります。「し死にやん破じゅん」は「死に損なう」、「死にやん破じゃあ」は「死に損ない」という意味です。「死人」は日本語と同じ「しにん死人」の他に「し死にっちゅ人」もあれば「まあしょうる人(一部地方では『まあちょおる人』)」等があります。「死にぎわ際」には「死にめえ前」。何といっても「し死にぬく残ゆん」が「生き残る」を意味するので、いっぺんに覚えられそうです。

【応用問題】
 次の沖縄語を日本語に直しなさい。
①死(し)からあ、むぬかんげ考えやならん。
②床下(ゆかさ)んじ、鼠(ゑんちゅ)ぬ死、はごうさん。
答え;
①死んでからは、物考えができない。
②床下で、鼠が死んで、汚い。