比嘉清の文でおぼえるうちなあぐち

聴ち美らさ 語い美らさ 書ち美らさ 御万人ぬうちなあぐち

はいさい、ぐすうよう。いめんせえびり。 うちなあぐちの散文を丁寧文で実践している比嘉清です。 うちなあぐちへは散文から入るのも一つの手です。沖縄の団塊世代は日本語を学ぶのに100%近くが小学校の教科書から入りました。大きくなって発音の違いに苦労しましたが、長い目でみれば、今は文章から入ってよかったと思っています。

2010年08月

日本語

① 草は枯らさないと、燃えないよ。
② かがまないと、床下は覗けません。
③ 絵は、よほどの興味が無いと、描けません。
④ 包帯で巻いておかないと、しみて痛むよ。
⑤ しっかりしないと、お灸を据えられることになるけど。

うちなあぐち

① 草(くさ)あ枯(か)らさんとお、燃(め)えらんどお。
② 屈(かが)まらんとお、床下(ゆかさ)あ、すう見(みい)やないびらん。
③ 絵(いい)や、すうまんとお、描(か)ちゆさびらん。
④ 包帯(ほうてえ)し、巻(ま)ちょおかんとお、すうむんどお。
⑤ しょう入(い)らんとお、灸(やあちゅう)、焼(や)かりいしが。

【解説】
 接続文「―しないと、―」の意味の別の構文です。「とお」を使用する接続は本島中部辺りでは前講同様に使用頻度は多いですが、『沖縄語辞典』には語句や使用例等がありません。
例文② 「床下」は「ゆかしちゃ」ではなく「ゆかさ」となります。
例文③「すうむん」は「夢中になる、大いに興味がある」等の意味の動詞です。「すうみ」は「興味」という意味の名詞です。

例文④ ここの「すうむん」は例文③の「すうむん」と同音・同抑揚(上げ声)ですが、「染みる、染みて痛む」等の意味を持つ別の動詞です。首里語は何れも「すうぬん」。
例文⑤ 「しょう」については、189頁の例文④に関する記事を参考。

【応用問題】
 次の沖縄語文を「んでえ、でえ」(第44講参照)を使う文に直しなさい。答えは下欄です。
① うぬ茶(ちゃあ)や早(ふぇえ)く、飲(ぬ)まんとお、温(ぬる)っくぃゆんどお。
② 大叫(うふあ)びいさんとお、聞(ち)ちいぐりさいびいんどお。
③ 急(いす)がんとお、夜(ゆう)ぬけえ、ゆっくぃゆしが。
④ 座(ざあ)や華(はね)えかさんとお、面白(うむ)くん無(ね)えらんどお。
⑤ うぬ水(みじ)え、ゆてぃらんとお、けえ、あんでぃゆんどお。
答え:
① うぬ茶や、早く飲まんでえ、温っくぃゆんどお。
② 大叫びいさんでえ、聞ちいぐりさいびいんどお。
③ 急がんでえ、夜ぬけえ、ゆっくぃゆしが。
④ 座や華えかさんでえ、面白くん無えらんどお。
⑤ うぬ水え、ゆてぃらんでえ、けえ、あんでぃゆんどお。

日本語訳:
①そのお茶は早く飲まないと、温んでしまうよ。
②大声で喋らないと、聞きづらいですよ。
③急がないと、夜が更けてしまうけど。
④座は賑やかにしないと、面白くないよ。
⑤その水はこぼさないと、溢れてしまうよ。

【沖縄語のN音】沖縄語には三通りのN音があります。ローマ字表記をしている『沖縄語辞典』は工夫を施しています。本来のn音はn、主に開音の「い、う、お、ゆ」等に由来する音は?N(例?Nmu「芋」)、又主に開音のマ行等に由来する音はn(例Nni「胸」)で表記しています。ひらがな表記では全て「ん」としか表記できないのが悩ましいです。

日本語

① 君がしないと(やらないと)、誰がやるのか。
② 沖縄語も習わないと、いけないよ。
③ 台風が来ないと、珊瑚は死滅してしまうけど。
④ 薬を飲まないと、良くならないよ。
⑤ 早く決めないと、はかどりません。

うちなあぐち

① 汝(やあ)がさんでえ、たあ誰がすが。
② うちなあぐちん、習(なら)らんでえ成いびらんどお。
③ 台風(ううかじ)ん、来(く)うんでえ、珊瑚(さんぐ)お、けえ死(し)ぬしが。
④ 薬飲(くすいぬ)まんでえ、ましえならんどお。
⑤ 早(ふぇえ)く、決(ち)わみらんでえ、めえ前(めえ)あがちん成いびらん。


【解説】
 「―しないと、―だ、(又―する)」という意味の構文に相当する「―(ん)でえ」は、実際は「―動詞未然形+否定助動詞(ん)+んでえ、―」つまり、「―さ+ん+んでえ」という形ですが、「ん」の連続を嫌って、例文のような文型になっています。この講では太字は「でえ」の部分のみにしておきました。第21講の「―(ん)でぃ」の場合も「ん抜」きの「―でぃ」にしてもあります。なお、この「でえ」は、日本語の「―でないと」、「―しないと」等における「と」に対応する接続助詞「でぃ」にヤ系係助詞「え」が付き「でえ」(日本語の「とは」)となったものと考えられます。ただし、「―だらあ」(第46講応用問題等参考)の約まったものであるする人もいます。
意味がほぼ同じ構文に「―とお、―」(第45講)、「―あれえ、―」(第46講)、「―さんだらあ、―」(強調助詞が絡む「―さんどぅんあれえ」が約まった言い方)等もあります。沖縄語の話者達は無意識の内に普通にこれらの言い方をしていますので嫌でも覚えておく必要があります。

例文②「習らんでえ」は「習あんでえ」でも構いません。参考第29講。
例文⑤「決める」は、日本語風に「ち決みゆん」等と使う人もいますが、「ちわみゆん」が正しいです。「前あがち」は「(働く事が)前進する事、はかどる事」の意味で、「あがちゅん」は「労働する、はかどる」という意味があります。
  
【応用問題】
 次の沖縄語文を日本語文に直しなさい。答えは下欄です。
① 晴(は)りらんでえ、洗(あれ)え衣(じん)のお、乾(かあ)らちゃびらんどお。
② 夏(なち)ぬ夜(ゆる)お、クーラー点(ち)きらんでえ、寝(に)んだりやびらん。
③ 誂(あちれ)えらんでえ、品(しな)あ作(ちゅく)やびらん。
④ 人(ちゅ)ぬ揃(すり)らんでえ、商(あちねえ)えや、成(な)いびらん。
⑤ 彼(あり)え、あぎまあさんでえ、何(ぬう)んさんしが。
答え:
① 晴れないと、洗濯物は乾きませんよ。
② 夏の夜はクーラーを点けないと、眠れません。
③ 注文しないと、品物は製作しません。
④ 人が集まらないと、商売はできません。
⑤ 彼は急かさないと、何もしないけど。
  

↑このページのトップヘ