比嘉清の文でおぼえるうちなあぐち

聴ち美らさ 語い美らさ 書ち美らさ 御万人ぬうちなあぐち

はいさい、ぐすうよう。いめんせえびり。 うちなあぐちの散文を丁寧文で実践している比嘉清です。 うちなあぐちへは散文から入るのも一つの手です。沖縄の団塊世代は日本語を学ぶのに100%近くが小学校の教科書から入りました。大きくなって発音の違いに苦労しましたが、長い目でみれば、今は文章から入ってよかったと思っています。

2010年10月

日本語

① 塩より酢を摂った方がよいです。
② 船が揺れるより飛行機が揺れる方が怖い。
③ 美しいものよりしっかりしたものが良い。
④ 見るより、踊れ。
⑤ 車に乗って行くより、歩いて行った方が健康に良い。

うちなあぐち

① 塩(まあす)やか、酢物食(しいむんか)むしえ、ましやいびいん。
② 船(ふに)ぬ、く返(げえ)ゆしやか、飛行機(ひこうち)ぬ、く返(げえ)ゆしえ、怖(うとぅる)さん。
③ ちゅらさしやか、しょうらさしえ、ましやん。
④ 見(ん)だやか、舞(も)うり。
⑤ 車乗(くるまぬ)ゆしやか、歩(あ)っちゅしえ、胴(どぅう)がな、かなやびいん。

【解説】
 この「やか」について『沖縄語辞典』には「老人はゆかjukaという」の記述があります。地域によっては、「へえか」、「ゆいか」となります。「やかあ」もありますが、これの語末の「あ」はヤ系係助詞です。当然、「あ」の代わり「や」を用いた「やかや」もあります。「やかん」の「ん」は日本語の並列を表わす助詞「も」に対応する助詞ですから、「よりも」の意味になります。この「やか」は、通常は名詞(用言を名詞化した語を含む)に付きますが、例文④のように、直接動詞に付く場合は未然形に付きます。
「やかあ」、「やかや」、「やかん」を用いる例を右の例文に応用するとそれぞれ、次の通りになります。
①塩やかあ、②船ぬくげえゆしやかや、③ちゅらさしやかん等。

例文② 「しょうらさん」は一部地方では「そうらさん」。「立派な、ちゃんとした、しっかりした」等の意味になります。形容詞基本形の語尾に「し」を付けると形容名詞となります。「ちゅらさ」も同じ形容名詞ですが、この方は「美しさ」という意味になります。
例文④ 「見だ やか」は「やか」が動詞に付く場合の形です。
例文⑤ 動詞から派生した名詞に付く場合の形です。「行ちゅん(行く)」の基本形語尾に「し」を付ければ、動名詞「行ちゅし」になります。「胴がな かなゆん(体が丈夫である)」は「胴がら かなゆん」とも言います。「胴がな」は単独では用いる事は稀で、例文のように「かなゆん(かなう、丈夫だ)」との組み合わせで用います。
  
【応用問題】
 次の沖縄語文を「やかん」を使う文に直しなさい。
① 肉ゆかん、魚多く、食み(わ)。
② 夏ぬ暑さへえかあや冬ぬ寒さあ凌じい易っささ。
③ クーラー点きらやか窓開きらな。
④ 曲ぐりとおる(註)っ人ゆいかん真っとうばなっ人おまし。
⑤ いちゃんだし買うらやか銭出じゃち買うらな。
答え:
① 肉(しし)やかん、魚(いゆ)多(うふ)く食(か)み(わ)。
② 夏(なち)ぬ暑(あち)さやかん、冬(ふゆ)ぬ寒(ふぃい)さあ、凌(しぬ)じい易(や)っささ。
③ クーラー点(ち)きらやかん、引(ふぃ)ち戸(どぅ)開(あ)きらな。
④ 曲(ま)ぐりとおるっ人(ちゅ)やかん、真(ま)っとうばなっ人(ちゅ)おまし。
⑤ いちゃんだし買(こ)うらやかん、銭出(じんん)じゃち買うらな。

日本語訳:
①肉よりも魚を多くたべよ。
②夏の暑さよりは冬の寒さは凌ぎやすいよ。
③クーラーを点けるより窓を開けようじゃないか。
④道理をわきまえない人よりも実直な人こそ良い。
⑤只で買うより金を出して買った方が良い。

註:「曲ぐりゆん」は「道義をわきまえない」等の意味。派生語に「まぐりむん者(わからずや、道義をわきまえない者)」、「まぐらあ(前語と同じ意味)」等。

日本語

① 日が落ちたので、もう誰も来ないよ。
② 高離島は苦労を知らせる所なので、二度と行くものか。
③ 気分が悪いので、少し、休みましょうよ。
④ 誰も掃き掃除しないから、庭は汚れっぱなしです。
⑤ 働かないのに、手間賃が貰えるものか。

うちなあぐち

① てぃだ、てぃいだ太陽ぬう落てぃとおるむぬ、なあたあ誰んく来うんさ。
② たかはなりじま高離島やむぬし物知らしどぅくる所やるむぬ、又とぅい行ちゅみ。
③ あんまさるむぬ、ちゅてえや、ゆく憩とおちゃびらな。
④ たあ誰んほう掃ちかちさんむぬ、なあ庭やちゃあゆぐ汚いそおいびいん。
⑤ あがかんむぬ、てぃま手間ぬい得いらりいみ。

【解説】
 やや文語的ではありますが、口語でも多く使われている表現です。主には「―むぬ」が多く使われますが、口ごもったように聞こえないように、力強く発音する「―むんぬ」という変形もあります。「物」や「者」が「むん」ともなるように、この「むぬ」もまた「むん」とも言います。この表現は第14講「―くとぅ」や第15講のような「―やくとぅ」で代用する事もできます。

例文② 古典民謡「高離節」の歌詞には「高離島や、ものしらしどころ、にや、もの知やべたん、わたちたぼうれ」とあります。口語(合音)で書き直すと、「高離島や、むぬ知らしどぅくる、なあ、むぬ知やびたん、渡ちたぼうり」(日本語訳は、「高離島は(苦労を)知らせるところ、もう、(十分苦労するという事が)分かりました。(どうか、本島に)渡して(帰して)ください。」。「知やべたん」は「知ゆん」の丁寧文をさらに過去文にしたものですが、近年は「分かやびたん」が一般的となりました。
例文④「掃ちかち」の「かち」は作業のこと。「ちゃあ―」は「―し続ける」の意味の副詞で、日本語とは逆に動詞の前に付ます。次はその「ちゃあ」との複合語です。「ちゃああびい(喋りっぱなし)」、「ちゃあ頑丈(ずっと元気)」、「ちゃあしい(し続け)」等。同じ発音で「ちゃあ如何」もありますが、文章では文脈で、話し言葉では抑揚で区別できます。前者は下げ声(音)で、後者は上げ声です。後者の例:「ちゃあすが(どうするか)」、「ちゃあやが(どうなのか)」、「ちゃあん成らん(どうしようもない)」等。
例文⑤ 「あがちゅん」は「労働する」「はかどる」等の意味があります。

【応用問題】
 次の沖縄語文を「むぬ、むんぬ」または「むん」(何れも同じ意味)を使って言い換えなさい。
① 目光(みいふぃちゃ)らさくとぅ戸閉(はしるく)うやびたん。
② 昇(ぬぶ)たい降(う)りたいぬあんまさぬ荷(にい)やかやあさらん。
③ クーラーん点(ち)きらんくとぅ寝(に)んだりいんなあ。
④ うぬふぃいらあやはごうさぬ触(さあ)らりやびらん。
⑤ 良(い)い監督(くぁんとぅく)ぬ加護(かぐ)さみとおくとぅ優勝すしえ当(あ)たい前(めえ)。
答え:
① 目光らさるむんぬ、戸閉うやびたん。
② 昇たい降りたいぬあんまさるむん、荷やかやあさらん。
③ クーラーん点きらんむんぬ、寝んだりいんなあ。
④ うぬふぃいらあやはごうさるむん、触らりやびらん。
⑤ 良い監督ぬ加護さみとおるむぬ、優勝すしえ当たい前。

日本語意訳:
①まぶしいから戸を閉めました。
②昇り降りがきついのでその荷物は運べない。
③クーラーも点けないのに眠れるものかねえ。
④そのゴキブリは汚いので触れません。
⑤良い監督が指導しているんだもの、優勝するのは当然。

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