日本語

① あの人は知恵がありますが、情がありません。
(知恵はあるが、情は無い)
② あの女は器量は悪いけど、ハートはあるよ。
器量は悪いですけど、ハートはありますよ。
③ あんたんちは田んぼは無いけど、畑はあるかい。
    ありませんが、畑はありますか。

うちなあぐち

① あぬっ人(ちゅ)お、じんぶんのお、しが情(なさき)え、
  無(ね)えやびらん。(じんぶんのお、しが情え無えん
② あぬ女(ゐなぐ)お、影(かあぎ)え、無(ね)えらんしが、肝(ちむ)おあんどお。
影え無えやびらんしが、肝おあいびいさ。
③ いったあや、田(たあ)ぶっくぁあ、無(ね)えんしが、畑(はたき)えみ。
     無えやびらんしが、畑(はる)お、あいびいみ。

【解説】
 日本語の「ある」は「あん」で、丁寧語は「あいびいん」です。日本語の「無い」は「無えん」又は「無えらん」です。丁寧は何れも普通は「無えやびらん」ですが、「無え(い)びらん」とする人もいます。沖縄語の「無えん」は未然形の形をした「無え+らん」があります。未然形に否定を表わす「ん」を付けて「無えらん」としても、否定の否定で肯定の意味になるわけでなく、意味は同じです。したがって、何も未然形の形である必要はないと思うのですが、その差は何なのでしょか。慣用句として捉えましょう。また、「あらん」と「あいびらん」はあたかも「あん」とその丁寧語の「あいびいん」の否定の形であるかのような形をしていますが、実際は「やん(である、だ)とその丁寧語「やいびいん(です)」の否定語なのです。これについては、第50講で扱います。

例文①「じんぶん」は「知恵」の他に、「思慮分別」、「常識」等の意味ですが、「存分」という説もあります。数多くの転用語を持つ沖縄語の事ですから、あながち否定はできません。
例文③ 「やあ(君、汝)」の複数形である「いったあ」は「やあ」の丁寧な言い方でもあります。「うんじゅ」は目上語(敬語)です。ここは、日本語の「君」に対応する「汝(やあ、いやあ)」でも間違いではありませんが、丁寧に言う場合は例文のように「いったあ」を使います。

【応用問題】次の沖縄語文を日本語文に直しなさい。
① あまんかい、憩(ゆく)い処(どぅくる)ぬあいびいみ。
② あまんかいや無(ね)えやびらん。くまんかいあいびいん
③ やあ汝や千円(しんいん)ぬんちょおん持(む)っちぇえ無(ね)えらんどぅみ。
④ あぬっ子(くぁ)あ、聞(ち)ち分(わ)きん、無(ね)えらん
⑤ 沖縄(うちなあ)んかいんい戦前(いくさめえ)や、軽便(けえびん)ぬたしが、今(なま)あ無(ね)えらん
答え:
① あそこに休憩所はありますか。
② あそこには、ありません。ここにあります。
③ 君は千円さえも持って無いのか。
④ あの子は聞き分けもない。
⑤ 沖縄にも戦前には軽便鉄道があったが今は無い。
  
【損しない知識】日本語文では過去形で表わす文を、沖縄語に直訳すると変な沖縄語になる事があります。例えば、「独立した言語」を「独立さる言語」と直訳すれば、「んん?」等と、ちょっと首を傾げられますが、「独立そおる言語(独立している言語)」と進行形で訳せば、何の問題もなく通じます。特に日本語を訳する場合に感じるのは、沖縄語は案外論理性のある言語だという事です。