日本語

① 雨を降らして給われ。
② どうか、静かにしてくれ給え。
③ お忘れにならないでくれ給え。
④ 今年、私どもが作る作物も豊作を給われ。
⑤ 忍ぶ夜は月も、お気遣い給われ。

うちなあぐち

① 雨降(あみふ)らち、たぼうり
② どうでぃん、静(しじ)かあてぃたぼうり
③ 忘(わし)りてぃ、たぼうな(たぼうんな)
④ 今度(くんどぅ)、我(わ)っ達(たあ)が作(ちゅく)ゆる作物(むじゅくい)ん、万作(まんさく)ゆたぼうれえ。
⑤ 忍(しぬ)ぶ夜(ゆ)や月(ちち)ん、心(くくる)あてぃたぼうり(「新殿様節」より)。

【解説】
 「たぼうゆん」は「呉ゆん(下さる)」より上級の敬語で「給わる」の意味です。否定形は「たぼうらん」、補助連用形(接続態)は、「たぼうち」という一応の形はありますが、話し言葉では接続態は用いません。『沖縄語辞典』には「口語としては命令形のtaboori(下さい)のみを用いる」との説明がありますが、実際は例文③等のように禁止形(第57講)も用います。
 「―してください(給え)」の意味で使う場合は、動詞・助動詞等の接続態に付きますが、独立した動詞でもありますので、当然、例文④のように、「―ゆたぼうり(―を給われ)」という使い方もします。なお、「たぼうゆん」には「呉ゆん」という意味があるにも拘らず、「呉てぃたぼうり」という使い方もあります。例:咲(さ)ち出(んじ)らはちゅ一枝(ゆだ) 持(む)たち呉(くぃ)てたぼり(仲里節)。それらは「呉れ給え」という意味になります。実際の話し言葉では、「呉ゆん」やその敬語である「呉みせえん」の命令形(呉り、呉れえ、呉みそおり、呉みそおれえ)等に圧されて、その使用は少なくなっているものの、琉歌や民謡等で使う場合は、語数を短くした「たぼり」が好んで用いられています。

例:①里(さとぅ)が行(ゆ)く先(さち)や照(てぃ)らちたぼり(彼氏が行く先を照らし給え)「軍人節」より。②我(わん)や虎(とぅら)でむぬ 羽(はに)ちきてたぼり(私は虎なのであるから、羽を付けてくれ給え。「ヒヤミカチ節」より。③ぬちぬある間(えだ、ゑだ)や思出(うびん)ぢゃちたぼり(命のある間は、思い出し給え)「新里前とよ」より。
また、特に先島の古謡等では受動態の形をした「たぼうられ」という形もあります。意味は同じです。沖縄語には「受動態」形をした敬語の例は多くはありませんが、「医者やらりいん(医者でいらっしゃいます)」や「かなっとおかりよお(達者で居られよ)」等で見受けられます。「たぼうられ(たぼうらり)」を用いる例:とぅかぐ十日越しぬゆあみ夜雨たぼうられ(「祖納嶽節」より)。んかしゆ昔世ばかん神ぬゆ世ばたぼうられ(「くんのはし節」より)。

  
【応用問題】
 次の文を「たぼうゆん」を用いた文にしなさい。
① くぬ魚買(くぬいゆこ)うてぃ、呉(くぃ)みそおり。
② 親(をぅや)ぬ言(ゆ)しん、良(ゆ)う聴(ち)ち呉(くぃ)みそおれえ。
③ 何時(いち)迄(までぃ)ん、我事思(わあくとぅうむ)てぃ、呉(くぃ)りよお。
④ わがままぬ昔(んかし)、許(ゆる)ち、うたびみせえびり。
答え:
① くぬ魚買うてぃたぼうり
② 親ぬ言しん、良う聴ちたぼうり
③ 何時迄ん、我事、思てぃたぼうりよお。
④ わがままぬ昔、許ちたぼうり

日本語意訳:
①この魚を買って賜れ。
②親の言う事も良くお聞き賜れ。
③何時までも私の事を思って賜れ。
④我侭な過去を許して賜れ。