比嘉清の文でおぼえるうちなあぐち

聴ち美らさ 語い美らさ 書ち美らさ 御万人ぬうちなあぐち

はいさい、ぐすうよう。いめんせえびり。 うちなあぐちの散文を丁寧文で実践している比嘉清です。 うちなあぐちへは散文から入るのも一つの手です。沖縄の団塊世代は日本語を学ぶのに100%近くが小学校の教科書から入りました。大きくなって発音の違いに苦労しましたが、長い目でみれば、今は文章から入ってよかったと思っています。

2011年06月

日本語

① 彼女に彼の事は諦めてと、言ってみて。
② あの虹を見てごらんと、母は言った。
③ 津波だぞ、早く逃げろと、友が叫んだ。
④ 借金は払えとの通知がきています。
⑤ 車は用心して運転せよと、叱られました。

うちなあぐち

① 彼女(あり)んかい彼(あり)が事(くと)お、思(うみ)い切(ち)りんでぃ、言(い)ちんでえ。
② あぬ虹(のうじ)見(ん)ち見(ん)でぃんでぃ、あんまあぬ言(ゆ)たん。
③ しがり波(なみ)どおい、早(ふぇえ)く、逃(ふぃん)ぎりんでぃ、友(どぅし)ぬ叫(あ)びたん。
④ うっかあ払(はら)りんでぃぬ知(し)らしぬ来(ち)ょおいびいん。
⑤ 車(くるま)あ、心得(くくり)てぃ、歩(あ)っかしんでぃ、ぬらありやびたん。

【解説】
 この講は命令文というよりは、接続文(第21~22講)ですが、独立して取り上げたのは、命令文から接続する場合の命令形は、「本来」の形を見せるという事を示すためです。
 例文① 「彼」、「彼女」は沖縄語で何れも「あり」です。「思い切ゆん」は、日本語から受けるニュアンスとは異なり、「断念する」、「諦める」の意味になります。「言ち んでえ」の「んでえ」は日本語の「みて」と同じで、補助動詞(第88~89講)であり且つその命令形の形です。

例文② 「あんまあぬ」の「ぬ」は日本語の概ね格助詞「が」に対応します。長い文では所属や所有を表わす助詞「ぬ」と紛らわしくなる事がありますので、現代沖縄語の文章語では適度に「が」で代用してもよいと思います。ちなみに「が」は、沖縄語では所有を表わす助詞としても使われますので、格助詞との区別は文脈からする事になります。例:「彼(あり)が物(むん)」、「我(わあ)が言(ゆ)し(私のいう事)」。
例文③「しがり波どおい」の「い」は語気を強める語です。良く聞く例:「唐船(とうしん)どおい(唐船だよ)」、「ふぃいとぅどおい(イルカだぞ)」等。
例文④「うっか」は「借金」や「負債」の事です。「債(せえ)」とも言います。
例文⑤「心得てぃ」は動詞「心得(くくり)ゆん」の接続態で「気をつける」、「用心する」等の意味で日本語の「心得る」と少し意味合いスが違います。「すう(父)」を男性の名に接尾語のように付けると、「○○さん、○○氏」等の意味になります。

参考:「お食べ」という意味の「てえわ」は、命令形しかない特殊な慣用句です。主には老女等が目下の者に対して使う語だったようですが、今ではすっかり、「かめえ」に置き換わっています。
  
【応用問】
 次の文で太字の部分を本来の形に直しなさい。
① 御香(うこう)、点(とぅぶ)せえんでぃ、頼(たぬ)まりやびたん。
② まじゅん、連(そう)てぃ行(い)けえんち、ふんでえそおいびいん。
③ うぬ童(わらび)え、う菓子(くぁあし)、呉(くぃ)れえんでぃち、じいかじん無(ね)えん。
④ 雨降(あみふ)らちたぼうれえんでぃ、御(ぐ)いすうんぬきやびたん。
⑤ くぬ兎(うさじ)、かちみとおけえんでぃぬ事(くとぅ)やいびいたん。
答え:
① とぅぶ点し。
② い行き。
③ くぃ呉り。
④ たぼうり。
⑤ かちみとおき。

日本語意訳: 
①線香を点してと頼まれました。
②一緒に連れて行けと駄々をこねています。
③その子はお菓子を呉れろと言って聞かない。
④雨を降らし給えとお祈り言葉を言いました。
⑤この兎を掴んでおけとの事でした。

日本語

① 早く、こっちへ来い。
② 庭のバラに水をかけろ。
③ そんな事は自分でやれ。
④ みんな、沖縄語を使ってくれたまえ。
⑤ どうか、みんなで、助けてください。

うちなあぐち

① 早(ふぇえ)くなあ、くまんかい来(く)う。(く来うわ、く来わ)
② 庭(なあ)ぬ長春(ちょうしゅん)ぬんかい、水(みじ)かきり。(かきりわ、かきれえ)
③ うんな事(くと)お自(どぅう)し、し。(しわ、せえ)
④ 皆(んな)、沖縄語使(うちなあぐちちか)いみそおれえ。
                   (使いみそおりわ、使いみそおり)
⑤ どうでぃん、皆(んな)し、助(たし)きてぃ、取(とぅ)らし。(取らしわ、取らせえ)

【解説】
 動詞や助動詞の命令形には二つの形があります。
(1)口語では多くは命令形の語尾音が助詞「え」を伴う事によってエ段音になり、
(2)助詞「え」を伴わない文語における場合、口語において助詞「わ」を伴う場合そして接続文が続く場合はイ段音(参考第60講)になります。
 口語においては、多くは「え」と「わ」の二種類の助詞が付きます。
 「わ」が付く場合の命令形の形は原則として語尾は「イ段音」になり、
 「え」が付く場合のそれは、命令形の本来の語尾であるイ段音が「え」につられて、エ段音に変化します。
 但し、「行き+んでぃ+言ちゃん」(行けと言った)のように、命令形に文が接続する場合は、「本来の形」に戻ります(次講)。

例文①「来ゅうん」の命令形は、本来は「く」または「くう」ですが、慣用的に助詞「わ」とセットになり、「くわ」「くうわ」等となります。「わ」はエ段に付く事もあります。例:「せえわ(しなさい)」、「食めえわ(食べなさい)」、等。
例文② ラ行ユン動詞の場合の命令形は「かきゆん→かきり」と「ゆん」の部分が「り」になります。
例文③ スン動詞の場合は「し」、「しわ」、「せえ」となります。
例文④「みせえん」「たぼうゆん」等は夫々、「みそおり」、「たぼうり」となります。
  
【応用問題】
 次の太字の命令文を助詞「わ」及び「え」を使う命令文に直しなさい。
① 汝(やあ)よ、うぬ長(なが)さる爪(ちみ)、詰(ち)みり
② うぬ髭(ふぃじ)え、風儀(ふうじ)ん無(ね)えらんくとぅ、剃(す)り
③ 妻(とぅじ)とぅめいねえ、家建(やあた)てぃり
④ 意地(いじ)ぬ出(ん)じらあ、手(てぃい)引(ふぃ、ひ)き
⑤ なあ、くまぬ家(やあ)から出(ん)じてぃ、行(い)き
答え:
① 詰みりわ。詰みれえ。
② 剃りわ。剃れえ。
③ 家建てぃりわ。家建てぃれえ。
④ 手引きわ。手引けえ。
⑤ 行きわ。行けえ。

日本語意訳:
①君よ、その長い爪を切れ。
②その髭はみっともないから剃れ。
③結婚したら家を建てよ。
④意地がでたら、手を引け。(糸満の諺、意訳:頭にきた時は、手を出すな) 
⑤もう、ここの家から出て行け。

【めんそおり考】観光客でも知っている「めんそおれえ」は「めんそおり」の砕け言葉で、「め+みそおり」という複合語の変形です。「め」については諸説ありますが、「召」ではないでしょうか。『沖縄語辞典』は全体を一語として扱っています。これを「めんそおれえ」を最上級の敬語である「いめんせえいびり」に変えようにも最早、動かざる如、山の如しです。

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