比嘉清の文でおぼえるうちなあぐち

聴ち美らさ 語い美らさ 書ち美らさ 御万人ぬうちなあぐち

はいさい、ぐすうよう。いめんせえびり。 うちなあぐちの散文を丁寧文で実践している比嘉清です。 うちなあぐちへは散文から入るのも一つの手です。沖縄の団塊世代は日本語を学ぶのに100%近くが小学校の教科書から入りました。大きくなって発音の違いに苦労しましたが、長い目でみれば、今は文章から入ってよかったと思っています。

2011年07月

日本語

① ユタが君の事をそのように、明かしました。
② ユタが母の事をそのように、明かしました。
③ 私は食べ運がありました。
④ 母は食べ運がありました。
⑤ 私たちは、もう、別れてしまいました。
⑥ 彼ら二人は、もう、別れてしまいました。
⑦ 皆で、この土地を平らにしました。
⑧ ここは農地にしようと、平らにしました。

うちなあぐち

① ユタが汝事(やあくとぅ)、あんし、明(あ)かさびたん。直
② ユタがあんまあ事(くとぅ)、あんし、明かさびいたん。間
③ 我(わん)ねえ食(くぇ)え報(ぶう)ぬあいびたん。直
④ 母(あんまあ)や、食え報ぬあいびいたん。間
⑤ 我(わ)ったあや、なあ、けえ、あかりやびたん。直
⑥ あったあ二人(たい)や、なあ、けえ、あかりやびいたん。間
⑦ 皆(んな)し、くぬ地(ぢい)、とおみやびたん。直
⑧ くまあ畑(はたき)んかい成すんでぃ、とおみやびいたん。間

【解説】
 丁寧助動詞「やびいん」の直接過去は「やびたん」、間接過去文は「やびいたん」となります。例文①の「さびたん」は「しやびたん」から「しゃびたん(首里語)」を経て「さびたん」になりました。以下は「やいびいん」を終止形→直接過去→間接過去の順に示したものです。
 やびいん(又は「いびいん」)→やびたん(ゃびたん、いびたん、びたん)→やびいたん(いびいたん)
 なお、存在動詞「やん(である、だ)」の場合は直接と間接の別がなく「やたん」となります。普通文についても、間接過去しかないと考えてもよいでしょう。又、存在しか表さない動詞「あん」や「居ん」も間接過去しかありません。

例文① 「明かすん」は「解き明かす」という意味で、特にユタなどが霊視した現象を依頼者等に告げる事を言います。
例文② 「喰(くぇ)え報(ぶう)」は「食べ運」の事で、「報(ふう)」は良い意味での「報い」を意味します。「報ぬ無えらん」は「運が悪い」という意味になります。
例文③ 「あかりゆん」は物が「離れる」とか、家畜が乳離れする等の意味ですが、男女の別れにも用います。普通は「別りゆん」ともいいます。離婚については、「ぬちゅん」が一般的です。
例文④ 「皆」は「諸(むる、ぶる、ぶうる)」を多く使います。例:「諸っさし、行かな」は「みんなで行こうではないか」。

  
【応用問題】
  次の過去文を丁寧文に直しなさい。
① 我(わ)っ達(たあ)姉(あばあ)ん、なあ、立身(でぃっしん、りっしん)さん(しちゃん)どお。(註)
② 昨日(ちぬう)ぬ大風(ううかじ)え、でえじな、強(ちゅう)さたん。
③ 先生(しんしい)ぬ話(はなし)、聴(ち)ち、良(ゆ)う、分(わ)かたん。
④ 嫁(ゆみ)え、直(ちゃあ)き、湯吹(ゆうふ)かちゃん。
⑤ 女(ゐなぐ)ん達(ちゃあ)や驚(うどぅる)ち、わっとぅかすたん。
答え:
① 我っ達姉ん、なあ、立身さびたんどお。直
② 昨日ぬ大風え、でえじな、強さいびいたん。間
③ 先生ぬ話聴ち、良う、分かやびたん。直
④ 嫁え、直き、湯吹かさびたん。直
⑤ 女ん達や驚ち、わっとぅかさびいたん。間

日本語意訳:
①私どもの姉も、もう嫁にゆきましたよ。
②昨日の台風はとても強かったです。
③先生の話を聴いて、良く分かりました。
④嫁は直ぐに、湯を沸かしました。
⑤女性達は驚いて、わっと泣き出しました。

註:「立身」は日本語の「立身」という意味の他に「嫁ぐ」等の意味があります。

日本語

① 私がこれを取ってはいけないと、言ったか。
② 私がこれを取ってはいけないと言ったのか。
③ 姉さんは学校に行けと、言いよったか。
④ 君が電灯を消したのか。
⑤ 彼が火を消したのか。(消しよったのか)
⑥ あの子も、もう大人になったか。
⑦ あの子にも、そのような計算ができたのか。
⑧ あの頃も、今のように雨が降ったか。
⑨ あの頃も、今のように雨が降りよったか。
⑩ 君は昨日はどこへ行ったか。
⑪ 君の友だちはどこへ行きよったか。
⑫ おじいさんはどうやって、歩いたか。
⑬ おばあさんはどのようにして、歩きよったか。
⑭ 君はこの間は、何をしたか。
⑮ 君の弟はあそこで、何をしよったか。

うちなあぐち

① 我(わあ)がくりえ、取(とぅ)てえならんでぃ、言(い)ちみ。直
② 我がるくりえ、取てえならんでぃ、言(ゆ)るい。間
③ 姉(あばあ)や、学校(ぐぁっこう)んかい行(い)きんでぃ言(ゆ)み。間
④ 汝(やあ)がる電灯(でぃんとう)消(ちゃ)あちるい。直
⑤ 彼(あり)がる火消(ふぃいちゃ)あするい。間
⑥ あぬ童(わらび)ん、なあ、大人(うふっちゅ)成(な)たみ。(×てぃみ)直
⑦ あぬ童ぬん、うんなさんみんぬ成ゆみ。間
⑧ うんにいん、今(なま)ぬ如(ぐとぅ)、雨(あみ)ぬ降(ふ)み。直
⑨ うんにいん、今ぬ如、雨ぬふ降ゆみ。間
⑩ 汝(やあ)みえ、昨日(ちぬう)や、まあんかい、行(ん)じが。直
⑪ 汝友(やあどぅし)え、まあんかい、行(い)ちゅが。間
⑫ 御主前(うすめえ、うしゅめえ)や、ちゃあし、歩(あ)っちが。直
⑬ 婆前(はあめえ)や、如何(ちゃ)ぬ風儀(ふうじい)し、歩っちゅが。間
⑭ 汝(やあ)や、くね間(えだ)あ、何(ぬう)さが。(しが)直
⑮ 汝弟(やあうっと)お、あまんじ、何(ぬう)すが。間

【解説】
 例文①~⑨は特定の状況やのものを尋ねる場合、また例文⑩~⑮はいつ、どこで、誰が、何を、どのように等を尋ねる疑問(疑問文については第1~11講参照)ですが、特に過去疑問文から分かる事は直接過去と間接過去の使い方が必ずしも、固定的なルールがあるわけではないという事です。
 直接過去と間接過去という表現はあくまで、表現者の考えの中にある「主観的」なものなのです。自分の動作の過去表現でも、話し相手に対して、自分の事を(客観化して)尋ねる場面等では文例②のように、間接過去文(疑問文)を使う場合もあります。
 なお、例文⑥の(× )は実際には使わない形であり、直接過去助動詞の一部「ゃ」を表示するためのものです。

例文⑩ 「汝めえ」は「汝(やあ)」の別形である「汝み(汝身?)」に係助詞「え」が付いたもので地方で多く使用されます。

【応用問題】
 次の疑問文を間接過去の疑問文に直しなさい。直せない場合は「不可」と表示しなさい。
① 汝(やあ)やくぬ包丁(ほうちゃあ)や、研(とぅ)じゃみ
② 彼(あり)え、何(ぬう)しいが、来(ち)ゃが
③ 汝(やあ)弟(うっとぅ)ん昨日(ちぬう)ぬ芝居見(しばいん)ちゃみ
④ あぬ二才(にいあせえ)達(たあ)ん、くまんかい来(ち)ゃみ
⑤ 童(わら)ん達(ちゃあ)や、まあんかい、ふぃん逃ぎたが(てぃゃが)。
答え:
① 不可 (意味的におかしくなるから)
② 彼え、何しいが、ち来ちゅうたが
③ 汝弟ん、昨日ぬ芝居、ん見じゅたみ(「見(ぬ)うたみ」)。
④ あぬ二才達ん、くまんかい、ち来ゅうたみ
⑤ 童ん達や、まんかい逃ぎゆたが(ふぃん逃ぎいたが)。

日本語意訳:
①君はこの包丁は研いだか。
②彼は何しに来たか。
③君の弟は昨日、芝居を見たか。
④あの青年もここへ来たか。
⑤子供たちはどこへ逃げたか。

日本語

① 昨日、私は遊びに行った。
  昨日、彼は那覇に行った(行きよった)
② このあいだ、凧を飛ばした。
  あの子はバッタを飛ばした(飛ばしよった)。
③ 私は給料を貰って直ぐに、計算をした。
  彼も計算をした(しよった)。
④ 私は彼の事で、笑った。
  子ども達はみんな笑った(笑いよった)。
⑤ 朝は、私たちは、コーヒーを飲んだ。
  彼らはジュースを飲んだ(飲みよった)。

うちなあぐち

① 昨日(ちぬう)、我(わん)ねえ、遊(あし)びいが、行(ん)じゃん。直
     彼(あり)え、那覇(なあふぁ)んかい行(い)ちゅたん。間
② くねえだ、ぶうぶう凧(だく)、飛(とぅ)ばちゃん。直
      あぬ童(わらび)え、せえ、飛(とぅ)ばすたん。間
③ 我(わん)ねえ、手間得(てぃまい)いてぃ直(ちゃあ)き、計算(さんみん)さん(しゃん)(しちゃん)。直
     彼(あり)ん計算(さんみしん)すたん。間
④ 我(わん)ねえ、彼(あり)が事(くとぅ)なかい、笑(わら)たん。(×笑てぃゃん)直
     童(わら)ん達(ちゃあ)や、諸(むる)、笑(わら)いたん(わら笑ゆたん)間
⑤ 朝(あさ)あ、我(わ)っ達(たあ)や、コーヒー飲(ぬ)だん。(×でぃゃん)直
     あっ達(たあ)や、ジュース飲(ぬ)むたん(飲ぬたん)。間

  
【解説】
 沖縄語の過去表現には、直接表現(直接過去助動詞「(ゃ)ん」を使う)と間接表現(間接過去助動詞「たん」を使う)の二通りあります。話し手自身の過去表現については直接表現を使います。
 他人や動植物および自然が主体となる過去表現の場合であっても、話し手の「直接的な体験の感覚」で表現する場合は直接表現を用います。
 間接過去表現は他人や動植物及び自然が主体となる行為の過去について客観的に表現する場合に使います。
 逆に自己の過去表現であっても「夢の中の自分」等、特殊な場面では間接過去表現にする事もあります。
例:「我ねえ海んじうぶきゆたん(私は海で溺れよった)」等。
 なお例文③、④の( )内は実際に使われる形ではなく動詞連用形に吸収されて、文に表われない直接過去助動詞の一部「ゃ」を表示するためのものです。
疑問形における過去の表現は「汝や、物食だんなあ」等と相手の立場に立つ直接表現がなされます。

例文② スン・チ動詞における例です。他例:(終止、直説過去過、間接過去の順に)為すん→為ちゃん→為すたん等。
例文③ スン・シ動詞における例です。他例:運転すん→運転さん→運転すたん等。
例文④ ユン系動詞(イン系動詞)における例です。他例:開きゆん→開きたん→開きゆたん(開きいたん)等。
例文⑤ ムン・ディ動詞(首里語では「ヌン・ディ動詞」)における例です。他例:読むん→読だん→読むたん等。

  
【応用問題】
 次の文を間接過去表現にしなさい。答えは( )内です。
① ちゃっさきいぬ犬(いん)ぬ寄(ゆ)てぃ、来(ち)ゃん。(ち来ゅうたん
② 御主前(うしゅめえ、うすめえ)や、どぅく、暑(あち)さぬ、クーラー、点(ち)きた。(点きいたん、点きゆたん
③ 父(すう)や、童(わらび)んかい、書物(しゅむち)読(ゆ)でぃ、聞(ち)かちゃん。(聞かすたん
④ 風(かじ)ぬ吹(ふ)ち、雨(あみ)ぬ降(ふ)た。(降いたん、降ゆたん
⑤ うんな事(くと)お、すなんでぃ、あんまあぬ言(い)ちゃん。(言《ゆ》たん

日本語意訳:
①たくさんの犬がやってきた。
②おじいさんは、とても暑いのでクーラーを点けた。
③父は子どもに本を読んで聞かした。
④風が吹き雨が降った。
⑤そんな事はするなと母が言った。

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