日本語

① 彼も若い頃は、とても、勇敢だったよ。
② このテレビは案外、安物だった。
③ 首里城の御内原は年中、風が強い所だったって。
④ あそこのエイサー仲間は指笛が上手だったな。
⑤ 君の夫も青年会では一人前の男だったよ。

うちなあぐち

① 彼(あり)ん若(わか)さいにいや、でえじな、意地(いじ)ゃあやたんどお。
② くぬテレビえ思(うみ)いぬ外(ふか)、値(でえ)安(やし)いどぅやたる
③ 御城(うぐしく)ぬ御内原(ううちばる)お、年中(にんじゅう)、風所(かじどぅくる)やたんでぃ。
④ あまぬエイサーしんかあ、指吹(いいびふ)ちぬ上手(じょうじ)やたっさあ。
⑤ 汝夫(やあうとぅ)ん青年会(しんにいくぁい)於(をぅ)とおてえ、ぞおま男(ゐきが)やたんどお。

【解説】
 存在動詞(第6講等)「やん(日本語の「―だ、―である」(にほぼ対応))の過去表現です。一応動詞という呼称になっていますが、動植物等の物体が主体的に動作する事を表わす語ではなく、存在する状態を表わす事から存在動詞と呼称しています。そのため、過去表現には動詞のように直接過去や間接過去の別はありません。左記は存在動詞の過去文、丁寧文及び否定文の形です。
 終止形「やん」、過去形(連用形+過去助動詞)「やたん」、丁寧形(連用形+丁寧助動詞)「や+いびいん(又は「ややびいん」)」、その過去形「やいびいたん(又は『ややびいたん』)」、否定形(未然形+否定を表わす助動詞)「あらん」、否定の過去形(未然形+否定を表わす助動詞+過去を表わす助動詞)「あらんたん」。その丁寧文は、「あいびらん(又は『あやびらん』)」、その過去形「あいびらんたん(又は『あやびらんたん』)」。

文例① 「意地ゃあ」は「大胆な者」、「肝っ玉の大きい者」等の意味があり、転じて「勇者、勇敢な者」。
文例② 「値安い(安物)」の対語は「値高(でえだかあ)」。強調助詞「どぅ」があるため「やたん」は連体形「やたる」で結びます。
例文③ 「御内原」は首里城に勤務する女官(ぐしくんちゅ)の仕事場でした。「風所」は始終、強い風が吹く場所の事です。
文例④ 「エイサーしんか」の「しんか」は「臣下」から転じた「仲間」、「家族」の意味です。動詞、形容詞、存在動詞および助動詞に感嘆詞の「さ」が付く場合は、それらの語尾「ん」は促音便化又は略されます。例:「―やっさあ」、「ふぃるまさっさあ」、「読むたっさあ」、「やいびいっさあ」等。
文例⑤ 「ぞおま」は「規格(上の)」、「標準(的)」の意味。ここでは「ちゃんとした」、「一人前」等の意味です。
  
【応用問題】
 次の文の( )の中に適切な語句を下の《 》内から選んで入れなさい。《やたくとぅ、やたん、やたる、やたしが、やたっ》 

①那覇(なあふぁ)っす所(とぅくる)お、昔(んかし)え、浮島(うちしま)どぅ(     )。 ②くねえだ来(ち)ゃる大風(ううかじ)え、でえじな強(ちゅう)ばあ(    )。
③あぬっ人(ちゅ)お、どぅく、何(ぬう)ん分(わ)からぬう(    )、目空張(みいんなば)いさん。
④あまぬ品(しな)あ、むる諸値高(でえだか)あどぅ(    )さあ。
⑤昔(んかし)え、水(みじ)え、いちゃんだどぅ(     )、今(なま)あ、銭(じん)しどぅこ買(こ)うゆる。
答え:
① やたる
② やたん
③ やたくとぅ
④ やたっ
⑤ やたしが

日本語意訳:
①那覇という所は昔は浮島なのでした。
②この前来た台風はとても強いやつだった。
③あの人はあまりにも無知なので唖然とした。
④あそこの品は全部、高いものだったさ。
⑤昔は水は只だったのに、今は金で買うのだ。