比嘉清の文でおぼえるうちなあぐち

聴ち美らさ 語い美らさ 書ち美らさ 御万人ぬうちなあぐち

はいさい、ぐすうよう。いめんせえびり。 うちなあぐちの散文を丁寧文で実践している比嘉清です。 うちなあぐちへは散文から入るのも一つの手です。沖縄の団塊世代は日本語を学ぶのに100%近くが小学校の教科書から入りました。大きくなって発音の違いに苦労しましたが、長い目でみれば、今は文章から入ってよかったと思っています。

2012年01月

日本語

① 彼らは大抵、野原で遊んでいたのだった。
② おやおや、クーラーも、かけていたんだね。
③ あのバッターも良く、打っていたんだなあ。
④ 彼の歌をずっと、聞いていたわけなんだ。
⑤ 君もハワイに行っていたんだって。
⑥ この着物はお母さんのものだったんだ。

うちなあぐち

① あっ達(たあ)や、いいくる、原(もう)んじどぅ遊(あし)どおてえる
② あいなあ、クーラーん、かきてえてえさやあ。
③ あぬバッターん、良(ゆ)う、打(う)っちょおてえっさあ。
④ 彼(あり)が歌(うた)、ちゃあ、聞(ち)ちいそおてえるばあやさ。
⑤ 汝(やあ)ん、ハワイんかい、行(ん)じょおてえてぃから。
⑥ くぬ衣(ちん)のお、母(あんまあ)むんどぅ、やてえさ。

【解説】
 過去の出来事を思い出して発する文で、動詞、存在動詞、助動詞及び形容詞の基本形(終止形の語尾「ん」を省いた形)に「てえん」が付いたものです。
 会話体では、殆ど、「さ」、「さあ」、「どお」、「やあ」等の感嘆助詞や、その連体形「てえる」に「ばあなあ(訳か)」、「ばあてえ(訳さ)」、「ばあやさ(訳なんだ)」、「てぃ から」等を付けて使われます。
 活用形は終止形「てえん」、連体形「てえる」、補助連用形(接続態)「てえてぃ」以外は殆ど用いられません。例文⑤のように、接続態を用いる場合、本来は助詞である「から」を添えると、確認疑問文(―だって?)のような表現になります。

例文① 終止形の言い切り形で用いる事は少ないので、話者にはなんとなく、パンツをはき忘れたような心もとない感じのする表現ですが、使用頻度が少ないだけです。
例文① 強調助詞「どぅ」を受けて「遊どおてえん」が連体形「遊どおてえる」で結ばれています(第6講参考)。「原」は、多くは「毛」という当て字が当てられています(「万座毛(まんざもう)」、「毛(もう)遊(あし)び」等)が意味は「原」です。
例文② 完了保存文に「てえん」が付いたものです。完了保存「かきてえん」+回想「てえん」。
例文③、④ 進行文に「てえん」が付いたものです。
例文⑤ 「てぃ から」の「てぃ」は接続態の語尾(あるいは接続助詞?)であり、助詞「から」と組み合わさって確認疑問文を作ります。確認疑問文は疑問詞を用いているわけでもないのに疑問文であるかのように振舞う文です。
例文⑥ 「やてえん」は存在動詞「やん」を回想文にしたもの。
  

【応用問題】
 次の文を回想文を用いた表現に直しなさい。答えは下欄です。
① あぬ人お、うぬ病んかい、ちゃあ罹かいそおん。
② くぬ前や、足どぅ痛まちぇえたんなあ。
③ あぬ二才ん、我とぅ、同ぬちるみいどぅやっさあ。
④ 昔え、沖縄んかいん、田ぬまんどおたん。
⑤ 昔ぬ景色え、なあふぃん、美らさたん。
答え:
① あぬっ人(ちゅ)お、うぬ病(やんめえ)んかい、ちゃあ罹(か)かいそおてえん
② くぬ前(めえ)や足(ふぃさ、ひさ)どぅ痛(や)まちぇえてえてぃから。
③ あぬ二才(にいせえ)ん、我(わん)とぅ同(い)ぬちみるいどぅやてえさ。
④ 昔(んかし)え、沖縄(うちなあ)んかいん田(たあ)ぬまんどおてえん
⑤ 昔(んかし)ぬ景色(ちいち)え、なあふぃん、美(ちゅ)らさてえん

日本語意訳:
①あの人はずっと、その病気に罹っていたのだ。
②この前は足を痛めていたんだって。
③あの青年も僕と同い年だったのだ。
④昔は沖縄にも田んぼが多かったのだ。
⑤昔の景色はもっと、美しかったんだ。

日本語

① 私は居間で休んでおきます。
② 無駄なものは覚えておかない。
  覚えておきません。
③ 落とさないように、ずっと、掴まえておけ。
④ お婆さん、裏座でお休みになさっておいてください。
⑤ それは、知らん振りしておいた方がよいではないか。

うちなあぐち

① 我(わん)ねえ、なかめえんじ、ゆくとうちゃびいん
② ゆうちらん無(ね)えらんむぬお、覚(うび)いとうかん。否定。
  覚いとうちゃびらん。丁寧否定
③ 落(う)とぅさんねえし、ちゃあ、かちみいそうけえ。
  ちゃあ、かちみいそうき。命令
④ 婆前(はあめえ)、くちゃんじ、憩(ゆく)とうかれえ。命令、目上
  憩とうかり。憩とうちみそおり。憩とうちみそうれえ。
⑤ うりえ、知(し)らん振(ふ)うなあそうちゅしえ、ましえあらに。

  
【解説】
 継続文に関連する構文です。
 継続文を構成する補助動詞「―うちゅん(―おく)」の活用は動詞「置ちゅん(置く)」と同じです。したがって、否定や命令等も同じ形になります。
 丁寧文は「うちゅん(置く)」の丁寧文と同じで、「―うちゃびいん」となります。否定文は「うちゅん」の否定文と同じ形で、「―うかん」、さらにその丁寧文は「―うちゃびらん」となります。
 命令文は、「うちゅん」の命令文と同じ形で、「―うき」、「―うけえ」(例文③)等となります。

例文② 「ゆうちらんね無えらん」は例文のように慣用句として使います。「ゆうちらあ無えん」とも言います。「ゆうちら」は憶測するに、元々は「有益」という意味だったのでしょうか。
例文④ 「くちゃんじ」の「くちゃ」は「裏座」ですが、実質的には「夫婦の寝室」です。首里城正殿の「みこちゃ」という部屋は「御くちゃ」の事で「控えの間」の事でしょうか。
  
【応用問題】
次の文を、日本語に訳しなさい。
① 薬(くすい)や、飲(ぬ)どうかんてぃん、済(し)むさ。
② 車(くるま)あ、くまんかい、停(とぅ)みとうけえ。
③ 今日(ちゅう)や、ふぃいさぬ、家籠(やあぐ)まいそうちゃびいん。
④ ちゅら花(ばな)やれえ、咲(さ)かちょうけえ。
⑤ なかみ(註)ぬ吸(し)い物(むん)や、何時(いち)やてぃん、食(か)まりいんねえし、煮(た)じらちょうちゅさ。
答え:
① 薬は飲んでおかなくても、良いよ。
② 車は、ここに停めておけ。
③ 今日は寒くて、家に閉じ籠もっておきます。
④ 美しい花なら、咲かしておいて。
⑤ なかみの吸い物は何時でも、食べられるように、煮ておくよ。

註 「なかみ」は、沖縄では主に豚の小腸を具とする汁物料理で元々は祭祀用やお祝い用ですが、最近はスーパーでもパックで売られています。

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