日本語

① その赤ん坊はもう、立つ事ができる。(立てる)
② 僕でさえ、ペンキを塗る事ができるよ。(塗れる)
③ 芭蕉衣を織る事のできる人は少ない。(織れる)
④ 彼でも、車の運転ができるのか。
⑤ あの医者こそが手術できるのであって、誰もできない。

うちなあぐち

① うぬ赤(あか)ん子(ぐぁ)、なあ、立(た)ちゆすん。(立っちいすん)
② 我(わあ)がんちょおん、ペンキ塗(ぬ)いゆすんどお。(塗いすん)
③ 芭蕉(ばさあ)衣織(じんう)いゆする人(ちゅ)おいきらさん。(織いする人)
④ 彼(あり)がん、車(くるま)ぬ運転(うんてぃん)しゆすてぃから。
⑤ あぬ医者ぬる割(わ)いゆする、誰(たあ)がんしゆさん。

【解説】
 可能を表わす接尾語的な動詞です。
 動詞+ゆ(又は「い」)+すん(又は「しゅん」)の三つ語からなります。
 例文④の「―すてぃ」は一応、接続態の形をしていますが、イ、助詞「から」に接続する、ロ、「言い切りの形で確認疑問の意味を持つ等、その機能は限定的であり、他の動詞の接続態とは大きく異なります。
 「てぃ」自体が動詞の一部でなく、接続助詞の可能性もある事から接続態の形を以って動詞を分類する方法はできません。
 「―する事ができる」、「―できる」は、沖縄語では日本語からの直訳調である「する事ぬ成ゆん」等を含め複数の言い方が可能です(もっとも、前述の日本語直訳調は現在はすっかり沖縄語の言い回しとしても馴染んでいます)。
 「ゆすん(又は「いすん」)」は「ゆうすん」と伸ばす場合が多いようです。なお、一部地方では「いふん」となります。

例文② 「ゆすん」に感嘆詞が付く場合の例です。「塗いゆすさ」で「塗れるさ」、「塗いゆすっさあ」で「塗れるなあ」、「塗いゆすんてえ」で「塗れるんじゃない」のニュアンス。「塗いゆすんどお」で「塗れるよ」。「我がん」の「がん」は「でも」の意味。「ちょおん」は「でさえ」。文語には「でんし」という語もありますが、口語では使用されません。
例文④ 例文のように、本来、接続すべき文がない言い切りの「―しいゆすてぃから。」は、文脈にもよりますが、「できるものか」、「できるのであれば」等のニュアンスになります。接続文がある場合は、「―できるのであれば、―」の意味にもなります。「から」は本来、「―(どこ)から」を表わす助詞なのですが、例文のような尻切れの言い方で、疑問のような意味になります。
例文⑤ 「医者ぬる」は「医者がる」でも良いです。「割ゆん」は文脈から「手術する」の意味になります。本来の「割る」という意味から転じて使われています。 
 
【応用問題】
 次の文を必要な部分のみ可能文に直しなさい。
① 我(わん)ねえ、自(どぅう)し、断髪(だんぱち)すぬ事(くとぅ)ぬ成(な)いびいん。
② 汝(やあ)や、芝居(しばい)ん成(な)ゆんなあ。
③ 若(わか)さいねえ、ハブ掴(かち)みゆる事(くとぅ)ぬなゆたしが、今(なま)あ、恐(うとぅ)るさぬならん。
④ 如何(いか)な何(ぬう)やらわん、あが遠迄(とぅうまで)え、泳(ゐい)じゅる事()くと)おならん。
⑤ くぬ靴(ふや)あ、狭(いば)さぬ、くむる事(くと)おならんさあ。
答え:    
① 断髪しゆさびいん
② 芝居しゆすんなあ。
③ ハブ掴ちゆすたしが
④ 泳じゆうさん。
⑤ くみゆさんさあ。

日本語訳:
①私は自分で散髪できます。
②君は芝居もできるか。
③若い頃はハブを掴まえる事もできたが、今は恐くてできない。
④いくら何でも、あんな遠い所迄は泳げない。
⑤この靴は狭くて履けないさ。