日本語

① その道は泥だらけで、歩く事もできない。
② 私の歯は入れ歯なので、固いものは食べる事もできません。
③ ペンキは長らく使わないと、固くなってしまって、塗る事もできないよ。
④ その赤ん坊はあまりにも泣き過ぎるので賺す事もできないよ。
⑤ 氷は冷えて、掴む事もできなかった。

うちなあぐち

① うぬ道(みち)え、泥(どぅる)ぶったあなてぃ、歩(あ)っちいんならん
② 我歯(わあはあ)や抜(ぬ)じ挿(さ)しやくとぅ、固物(くふぁむん)のお、食(か)みいんないびらん
③ ペンキえ、長(なげ)えさ、使(ちか)らんでえ、けえ固(くふぁ)てぃ、塗(ぬ)いんならんどお。
④ うぬ赤(あか)ん子(ぐぁ)あ、どぅく、泣(な)ち強(じゅう)さぬ、賺(しか)しいんならんさ。
⑤ 氷(こうり)え、冷(ふぃ)ずりてぃ、掴(か)ちみいんならんたん。

【解説】
 「なゆん」(日本語の「なる」および「できる」に対応)はラ行ユン・ティ動詞(第29講)の一つであり、使用頻度の高い語で、これまでの例文でも断片的に紹介しましたが、その動名詞に否定形が付く文を本講であらためて取り上げているものです。
 「ならん」は例えば、「やあさそおてえ、戦あ、ならん」(腹が減っては、戦はできない)のように、名詞+係助詞に付いて、「―はできない」という意味を表わしますが、動名詞+並列を表わす助詞「ん」(日本語の助詞『も』に対応)+「ならん」となる場合は「―する事もできない」の意味になります。

例文② 「抜じ挿し」は「抜いたり填めたりできるもの」。ここでは「入れ歯」。『沖縄語辞典』には載っていません。

●「な成ゆん(ないん)」の慣用的使用例:「なんくるないさ(どうにかなるさ)」、「なとおんどお(できているよ、よくできているよ)」、「如何(ちゃあ)んならん(どうにもできない)」、「何(ぬう)なとおが(どうなっているんだ)」、「汝(やあ)があ、ならん(君にはできない)」、「彼(あり)がんないみ(彼にできるものか)」、「何(ぬう)んならん(役に立たない、何もできない)」、「ないれえ、なれえ(できれば)」、「ないぬ事(くとぅ)やれえ(できることなら)」等。なお、「なゆん」の他動詞「なすん」には、「する、なる」の意味の他、「寄こす、移動させる」等の意味もあります。例:「うり、くまんかいなせえ」(それをここに寄せて)。

  
【応用問題】
  次の文を「―んならん」を用いた文に直しなさい。
① うに荷(にい)や、重(んぶ)さぬ、かみゆる事(くとぅ)んないびらん。
② うぬ添具(、しいぐ、小刀)お、鈍(なま)りてぃ、切(ち)ゆしんならん。
③ 太陽(てぃだ、てぃいだ)あ、目光(みいふぃちゃ)らあさぬ、見(ん)じゅる事(くとぅ)んならん。
④ 天(てぃん)ぬ諸星(ぶりぶし)え、数(ゆ)むる事(くとぅ)んならん。
⑤ しらあ後(くさあ)、諸敵(むるてぃち)なてぃ、逃(ふぃん)ぎゆる事(くとぅ)んならん。
答え:
① うぬ荷や、重さぬ、かみいんないびらん
② うぬ添具お、鈍りてぃ、切いんならん
③ 太陽あ目光らあさぬ、見じいんならん
④ 天ぬ諸星え、数みいんならん
⑤ しらあ後あ、諸敵なてぃ、逃ぎいんならん

日本語意訳:
①その荷物は重くて頭に載せて運ぶ事もできません。
②そのナイフは鈍って切る事もできません。
③太陽は眩しくて見る事はできません。
④天の群れ星は数える事もできません。
⑤四面楚歌、全て敵で逃げる事もできません。

語句:添具=ナイフ、小刀。しらあくさあ=前後左右。諸星=読み方は「ぶりぶし、むるぶし、むりぶし」等。