比嘉清の文でおぼえるうちなあぐち

聴ち美らさ 語い美らさ 書ち美らさ 御万人ぬうちなあぐち

はいさい、ぐすうよう。いめんせえびり。 うちなあぐちの散文を丁寧文で実践している比嘉清です。 うちなあぐちへは散文から入るのも一つの手です。沖縄の団塊世代は日本語を学ぶのに100%近くが小学校の教科書から入りました。大きくなって発音の違いに苦労しましたが、長い目でみれば、今は文章から入ってよかったと思っています。

2012年07月

日本語

① 今日はご飯もおいしいし、気分は悪くない。
② そんなものは今は、もう、めずらしくはありません。
③ 遊んでいた子供たちもいなくなり、うるさくなくなったよ。
④ あんまり、ひもじくさせると、可哀想ではないか。
⑤ 昨日は忙しくなかったのに、今日は忙しくて。

うちなあぐち

① 今日(ちゅう)や飯(むぬ)んまあさい、あんまさあねえらん(あんましくねえらん)。
② うん如(ぐと)おるむぬお,、今(なま)あ、なあ、ふぃるまさあねえやびらん(ふぃるましこくおねえやびらん)。
③ 遊(あし)どおたる童(わら)ん達(ちゃあ)ぬ居(をぅ)らんなやあに、ゆんがしまさあねえらん(ゆんがしましくねえらん)なとおさ。
④ どぅく、やあさしみいねえ、肝(ちむ)ぐりさあねえらに(肝ぐりしくねえらに)。
⑤ 昨日(ちぬう)や、忙(いちゅな)さあねえらん(忙しくねえらん)たしが、今日(ちゅう)や忙さぬ。

【解説】
 シク活用についても、活用部分が「さん(首里語では一部が「しゃん」)」でその上の部分が語幹となります。

●シク活用の形容詞例:「ふぃるまさん(ひるまさん)」、「みじらさん」、「あんまさん」について、語幹が各々、「ふぃるま(ひるま)」、「みじら」、「あんま」となり、活用部分「さん」が連用形では、何れも「しく」となります。
●シク活用の意味的特徴:概ね、心情や感情を表わす形容詞が主ですが例外もあります。
●シク活用には連体形の他に連体修飾をする形「し(い)」があります。ク活用にない特徴です(第83講参考)。
例:あんまし(い)むん、ふぃるましいっちゅ人、ちむ肝ぐるしいわらび童、いちゅな忙しい男(ゐきが)、珍(みじ)らしい宝(たから)、無蔵(んぞう)しい女(ゐなぐ)等。
 
 なお、本講においては、形容詞シク活用の否定形は、「―しこく(お)ねえらん」も成立しますが、ク活用の場合よりも、実際には名詞形「―さ」を使う否定文の場合が多い事から後者を主にしてあります。

例文③ 「ゆんがしまさあねえらん なとおさ」は形容詞否定文にさらに「なとおん」が接続しています。
例文④ 「やあさ」は形容詞「やあさん(ひもじい)」の形容名詞で使役を表わす動詞「しみゆん」が付いて、「ひもじくさせる」の動詞になります。
  
【応用問題】
 ( )内の形容詞を使って、次の文の否定文にしなさい。答えは下欄です。
① 変な話を聞いても楽しくはない。(いしょうさん)
② 試験に落ちても残念ではありません。(腸苦さん)
③ 君の口の聞き方は立派じゃないよ。(しょうらさん)
④ 金持ちだからといって、羨ましくはない(羨まさん)。
⑤ そんなものは、珍しくはありません。(珍さん)
答え:
① 異風(いふう)な話(はなし)、聞(ち)ちん、いしょうさあねえらん
② 試験(しき)ぬんかい掛(か)からんてぃん、腸(わた)苦(ぐり)さあねえやびらん
③ 汝物(やあむぬ)言(い)い様(よう)や、しょうらあさあねえらんどお
④ ゑえきんっ人(ちゅ)やくとぅんでぃち、羨(うれ)まさあねえらん
⑤ うぬゆうな物(むぬ)お、珍(みじ)さあねえやびらん

日本語

① 心安らかでない話は子供たちにはするな。
② 勇気あるものは、涙もろくありません。
③ 今頃は寒くも、暑くもない。
④ 板を薄く切るのは容易いことではない。
⑤ 煙は煙いが、霧は煙くない。
⑥ 今はひもじくない。
⑦ あなたは何も悪くありませんよ。

うちなあぐち

① なだ安(やし)くねえらん話(はなし)や、童(わら)ん達(ちゃあ)んかいや語(かた)らんけえ。
② 意地(いじ)ゃあや涙弱(なだよう)くねえやびらん。
③ 今頃(なまぐる)お、寒(ふぃい)くん、暑(あち)くんねえん。
④ 板(いちゃ、いた)、薄(ふぃし)く、切(ち)ゆしえ、どぅう易(やし)くおねえらん。
⑤ 煙(きぶし)え煙(きぶ)さしが、霧(ちり)え煙(きぶ)くおねえらん。
⑥ 今(なま)あ、やあさあねえらん。
⑦ うんじょゅお、何(ぬう)ん、悪(わ)っさあねえやびらんさ。

  
【解説】
 形容詞の活用部分は、「さん(首里語の一部は「しゃん」、以下略)で、その上の部分が語幹となります。
 なお、沖縄語の形容詞は日本語のようなク活用とシク活用形の別は無いとする説がとても有力です。
 しかしながら、同じ形容詞でありながら、連用形語尾が「ク」となる群と「シク」となる群及び何れとも判別し難いごく小数の郡が存在する事に着目し、さらにはこれらの型に連動して、意味的にもやはり二つのグループに分かれます。
 本書では、そうした点に着目し、前述の連用形語尾を主な区別基準として、ク活用及びシク活用の別が存在するものとして扱います。

●ク活用形容詞の例:「ちゅらさん」、「安(やし)さん(促音便化して『やっ安さん』)」、「薄(ふぃし)さん((促音便化して『ふぃっ薄さん』))」について、語幹が各々「ちゅら」、「やし」、「ふぃし」となり、活用部分「さん(しゃん)」が連用形では何れも「く」となります。 
●ク活用の意味的特長:概ね物理的な現象を表わす形容詞が主ですが例外もあります。
例文② 形容詞連用形を使う否定文の場合は連用形語尾「く」と否定を表わす「ねえらん」または「ねえん」の間にヤ系係助詞(附録「ヤ系係助詞一覧」参照)を付けます。
例文⑥~⑦ 形容名詞にヤ系係助詞「あ」を伴って、否定文を作る場合の文例です。
  
【応用問題】
 次の文中の形容否定文を形容名詞を用いた表現に変えなさい。
① 今日(ちゅう)や、飯(むぬ)お、まあくおねえらん
② 空気(かじ)ぬ乾(かあ)らちょおる日(ふぃい)や、しぷたら暑(あち)くおねえん
③ くぬ緒(をぅう)や、緩(ゆる)くおねえらに
④ 汝(やあ)が、支(し)こうてえるコーヒーや、濃(かた)くねえらんくとぅ、まあくおねえらん
⑤ くぬ花(はな)あ、あんすかあ、香(かば)ばくおねえらん
答え:
① 今日や、飯おまあさあねえらん
② 空気ぬ乾らちょおる日やしぷたら暑さあねえん
③ くぬ緒や緩さあねえらに
④ 汝が支こうてえるコーヒーや濃さあ無えらんくとぅ、まあさあねえらん
⑤ くぬ花あ、あんすかあ、香ばさあねえらん

日本語意訳:
①今日は、飯は美味しくない。
②空気が乾燥している日は蒸し暑くない。
③この緒は緩くないか。
④君が作ったコーヒーは濃くないので美味しくない。
⑤この花はそれほど香ばしくない。

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