比嘉清の文でおぼえるうちなあぐち

聴ち美らさ 語い美らさ 書ち美らさ 御万人ぬうちなあぐち

はいさい、ぐすうよう。いめんせえびり。 うちなあぐちの散文を丁寧文で実践している比嘉清です。 うちなあぐちへは散文から入るのも一つの手です。沖縄の団塊世代は日本語を学ぶのに100%近くが小学校の教科書から入りました。大きくなって発音の違いに苦労しましたが、長い目でみれば、今は文章から入ってよかったと思っています。

2012年08月

日本語

① 今年の夏は、とても、暑くなりそうだな。
② 足早に歩くと、後で、苦しくなるよ。
③ 髪の毛を黒く染めると、若く見えるよ。
④ 暗くすると、見えにくいです。
⑤ 難しく書けば、読みかねる。

うちなあぐち

① 今度(くんどぅ)ぬ夏(なち)え、さっこう、暑(あち)く、ないぎさあやっさあ。ク活
ぐるく、歩(あ)っちいねえ、後(あとぅ)から、あんましくなゆんどお。前者ク活、後者シク活
③ 髪毛(からじぎい)、黒(くる)く、染(す)みいねえ、若(わか)く、見(み)ゆさ。何れもク活
暗(くあら)くしいねえ、見(ん)じいぐりさいびいん。ク活
難(むちか)しく書(か)ちいねえ、読(ゆ)みいかんてぃいすん。シク活

【解説】
 形容詞連用形については、一部、第81講でも説明している通りですが、本講では否定文以外の連用修飾用法を紹介します。この用法は慣用的な言い回し以外は比較的、日本語の形容詞の用法に似ているといえます。

例文① 「さっこう」は「ちゃんとしてないもの」を表わす名詞であるが、「よくない事を表わす」場合について、文例のように副詞的にも用いられます。「ない ぎさあ」の「ぎさあ」は「ぎさん(らしい)」という接尾語の名詞形です。形容詞の形をしていますが単独では用いません。「ぎさる」という連体形も持っています。例「行ちぎさる人(行きそうな人)」。以下の例は「慣用句」として覚えたいです。
例:「ち来いぎさん(来そうだ)」、「や悪なあ やいぎさん(悪いもののようだ)」、「あち暑くないぎさん(暑くなりそうだ)」、「ましやいぎさん(良いようだ)」等。
例文② 「ぐるさん」は「足等が速い」の意味に使われます。
例文③ 「髪毛」は単に「からじ」とも言います。文語では「かしら(頭)」で「代用」される事もあります。例:「かしら結うてぃたぼり、我親がなし(髪を結うてください、私の親様)」(民謡「てぃんさぐぬ花」より)。
例文④ 「―ぐりさん(―しがたい)」も「ぎさん」同様、形容詞もどき接尾語です。以下の例は慣用句として覚えたいです。例:「飲みいぐりさん(飲みにくい)」、「取いぐりさん(取りにくい)」、「覚いぐりさん(覚えにくい)」等。
例文⑤ 「かんてぃい」も接尾語で、「しかねる事」の意味です。動詞にする場合は「すん(しゅん)」、丁寧文にする場合は「さびいん」を付けます。これも慣用句として覚えたいです。例:「歩っちいかんてぃいすん(歩きかねる)」、「降りいかんてぃいそおん(降りかねている)」、「運転しいかんてぃいそおいびいん(運転しかねています)」等。

【応用問題】
 次の文を日本語に訳しなさい。
① 天(てぃん)ぬ暗(くら)くないねえ、やがてぃ、雨(あみ)ぬ降(ふ)やびいん。
② 物(むん)ぬ値(でえ)や、たった、高(たか)くなてぃ来(ち)ょおん。
③ 家道具(やあどうぐ)ぬ多(うふ)くないねえ、座(ざあ)や狭(いば)くなゆんどお。
④ 堅(か)とうにしいねえ、しょうらあしくないびいさ。
⑤ 我(わあ)コーヒーや濃(かた)く作(ちゅく)てぃ、取(とぅ)らし。
答え:
① 空が暗くなると、やがて、雨が降ります。
② 物価はますます、高くなってきている。
③ 家具が増えれば、部屋は狭くなるよ。
④ 堅固にすれば、しっかりしたものになりますよ。
⑤ 私のコーヒーは濃く作ってちょうだい。   

日本語

① 彼氏が張ってくれたむんじゅる笠はきれいだな。
② 涼しい風が吹けば、良い塩梅だけど。
③ 物事はすべて、良し悪しである。
④ 珍しいこと(もあるもんだ)、毎晩(のように)、泊高橋を通い、夜明け迄、泣き明かす人は。
⑤ 戦争のときの話を聞けば、恐ろしいものです。
⑥ あなたの壷は珍しいものですよ。

うちなあぐち

① さとぅ里(さとぅ)が張てぃ呉(くぃ)てえるむんじゅる笠(がさ)やちゅらむぬやっさあ。(ちゅらさるむぬ)ク活
涼風(しだかじ)ぬ吹(ふ)ちいねえ良(い)い塩梅(あんべえ、やんべえ)やるむぬ。(涼さる風)ク活
③ 物事(むぬぐと)お諸(むる)、良(い)いむん、悪(や)なむんどぅやる。(悪なさるむん)ク活 (首里語は「良たっさ、悪っさ」)
ふぃるましむん、毎夜(めえゆる)、泊(とぅまい)ぬ高橋通(たかはしかゆ)てぃ明(あ)き方(がた)なる迄泣(までぃな)ち明(あ)かする人(ふぃとぅ)や。(ふぃるまさるむん)シク活
⑤ 戦(いくさ)ぬばすぬ話聞(はなしち)ちいねえ、恐(うとぅ)るしむんやいびいん。(恐るさるむん)シク活
⑥ うんじゅが壷(ちぶ)お、珍(みじら)しいむぬやいびいさ。(珍さるむぬ)。シク活。

【説明】
 形容詞の連体形はク活用とシク活用の何れも統一的な形(語幹+さる、しゃる)になります。しかしながらク活用に於いては、例文①~③のように、またシク活用に於いては、連体形ではなく、多くは例文④~⑥のような連体修飾用法を多く用います。両者の形の違いは例文にある通りです。

●ク活用の連体修飾用法:概ね語幹が連体修飾語になります。
例:美(ちゅ)ら+影(かあぎ)(美人)、いきら+むん(少数のもの)、冷(ふぃ)ずる+水(みじ)(冷たい水)、新衣(みいじん)、固鉄(くふぁがに)、遠回(とぅうまあ)い等。例外:まあさむん(おいしいもの)、はごうりいむん(汚いもの)等。
●シク活用の連体修飾用法:概ね「語幹+し」または「語幹+しい」になります。「し」を用いる場合は、主に被修飾語は「むん」となり、概念的な日本語の「―しい事」の意味になります。この場合の「むん」は具体的な「物(もの)」ではなく「事(こと)」を表わします。「―しい」を用いる場合はその被修飾語は「具体的なもの」を表わします。
 例えば、ある三味線を見て、話し手が「ふぃるましいむん」と表現した場合は「三味線そのもの」が「珍しい」という意味ですが、「ふぃるましむん」と表現した場合は、「こういう三味線は珍しい」等の意味合いになります。

例文① 舞踊「むんじゅる笠(がさ)」と「芋(んむ)ぬ葉(ふぁあ)節」より借用しました。
例文④ 歌劇「泊阿嘉(とぅまいああかあ)」(我如古弥栄作)から借用しました。「人(ふぃとぅ)」は日本語からの借用語です。
 
【応用問題】
 次の文中の形容詞を別の表現に変えなさい。
① はごうさる物(むぬ)お、食(か)まんけえ。
② まあさしえ、無(ね)えやびらに。
③ なあふぃん、薄(ふぃ)っさる紙(かび)、とぅめえれえ。
④ 実(じゅん)に、彼(あり)え、みっくぁさるっ人(ちゅ)やっさあ。
⑤ 後(くし)ぬ原(もう)や、さぼうりてぃ、しからあさる所(とぅくる)やいびいん。
答え:
はごうりいむぬお、食(か)まんけえ。(食むなけえ)
まあさむんや、無えやびらに。
③ なあふぃん、薄(ふぃ)し紙(かび)、とぅめえれえ。
④ 実(じゅん)に、あぬっ人(ちゅ)お、みっくぁし者(むん)やっさあ。
⑤ 後(くし)ぬ原(もう)や、さぼうりてぃ、しからあしい所(とぅくる、とぅくま)やいびいん。

日本語意訳:
①汚いものは食べないで。
②美味しいものはないですか。
③もっと薄い紙を探せ。
④ほんとうに、あの人は憎たらしい人だよ。
⑤後の野原は荒れてしまって寂しい所です。

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