日本語

① 先ほど迄仕事をしていて、厭になるほど疲れている。
② お爺さんは君の事を頭にくるほど嫌っています。
③ 声が出なくなるほど叫び(喋り)ました。
④ 働けば働くほど、お金が貯まります。
⑤ その程度で良いのだ(適当である)。
⑥ 彼は誰もが褒めるほど良くできる人です。
⑦ 足が痛むほど歩きました。

うちなあぐち

① 今先迄(なまさちまでぃ)、にりる、仕事(しくち、しぐとぅ)さあに、うたとおん。
② 御主前(うすめえ、うしゅめえ)や、汝事(やあくとぅ)、わじる、はごうさそおいびいん。
③ 声(くぃい)ぬ出(ん)じらんなる、叫(あ)びやびたん。
④ 働(はたら)ちいねえ、働ちゅるさく、銭(じん)ぬ貯(たま)まやびいん。
⑤ うぬあたいどぅ、いいさくやる。
⑥ 彼(あり)え、誰(たあ)がん褒(ふ)みゆるあたい出来(でぃき)やあやん。
⑦ 足(ふぃさ)ぬ痛(や)むるあたい、歩(あ)っちゃびたん。(足ぬ痛むか歩っちゃびたん)(「痛むる」は首里語では「痛ぬる」)

【解説】
 「か」、「さく(しゃく)」、「あたい」等については、他講の例文等でも断片的に示してありますが、本講ではそれらを用例を比較しながら改めて取り上げるものです。

◆か: 「―ほど」という意味。『沖縄語辞典』には接尾語とされていますが、用言の連体形やその変形(註)、連体形語尾「る」を略した形等に付く事から名詞としても成立します。なお、「否定文+なるか」という形(この場合も「なる」という連体形に付いています)は慣用的に「―であるか、でないかほど」、「わずかしか―ない」等という意味になります。この「―であるか、でないかほどの」の関連話題(小那覇舞天の漫才から抜粋)が第24講にあります。
◆さく(首里語「しゃく」):「ほど」、「程度」、「量」という意味の名詞。「尺」という語と関係あるのでしょうか。
◆あたい:「ほど」という意味の名詞。

例文④ 「―ねえ、―さく」は、「―すれば、―するほど」という意味の慣用句です。

註: 例文②、③及び⑦における動詞の連体形は本来、各々「にりゆる」、「わじゆる」、「痛むる」なのですが、この「か」が付く場合は「にりる」、「わじる」、「痛む」となっています。この形はどの活用形にも当てはまりません。「か」が名詞であれば本来の連体形をとる筈であり、『沖縄語辞典』の接尾語説あるいは接続助詞説の何れかだとしてもなぜそのような形になるのかは謎です。筆者は「か」を「あたい」と同じく名詞として扱い、これに付く活用形は「―する」の場合が連体形(応用問題①参照)のままである事を手掛りに連体形の「慣用的な変形」として考えています。

  
【応用問題】
 次の文を( )内の語句を用いて書き換えなさい。
① 幽霊(ゆうりい)話聞(ばなしいち)ち、諸毛(ぶりき)立(だ)ちするあたい、竦(しか)どおいびいん。(か)
② 耳(みみ)ぬ聞(ち)からんなゆるあたい、みんちゃさん。(か)
③ うぬ山道(やまみち)やれえ、にりるか歩(あ)っちゃびたん。(あたい)
④ 手(てぃい)ぬだりるか、手業(てぃいわざ)さびたん。(あたい)
⑤ ちゃあ扇(おう)じいしいねえ、すがりやびいん。(ねえ、さく)
答え:
① 幽霊話聞ち諸毛立ちする竦どおいびいん。
② 耳ぬ聞からんなる、みんちゃさん。
③ うぬ山道やれえ、にりゆるあたい、歩っちゃびたん。
④ 手ぬだりゆるあたい、手業さびたん。
⑤ 扇じいねえ、扇じゅるさく、すがりやびいん。

日本語意訳:
①怪談話を聞いて身の毛のよだつほどびくびくしています。
②耳が聞こえなくなるほど喧しい。
③その山道ならうんざりするほど歩きました。
④手がだれるほど手作業しました。
⑤扇げば扇ぐほど涼しいです。