比嘉清の文でおぼえるうちなあぐち

聴ち美らさ 語い美らさ 書ち美らさ 御万人ぬうちなあぐち

はいさい、ぐすうよう。いめんせえびり。 うちなあぐちの散文を丁寧文で実践している比嘉清です。 うちなあぐちへは散文から入るのも一つの手です。沖縄の団塊世代は日本語を学ぶのに100%近くが小学校の教科書から入りました。大きくなって発音の違いに苦労しましたが、長い目でみれば、今は文章から入ってよかったと思っています。

2013年09月

日本語

①今から、黍の葉を削ぎに行くつもりだ。
②もう、酒は飲まない積もりだよ。
③どちらへのお積もりですか。
④那覇の町に買い物しに行く積もりさ。
⑤彼も、一緒に、行くとの事だよ。

うちなあぐち

①今(なま)から、黍(ううじ)葉(ばあ)かさしいがんちやん。(んでぃちやん)
②なあ、酒(さき)え、飲(ぬ)まんちやんどお。否定
③まあんかいんちやいびいが。丁寧・疑問
④那覇(なあふぁ)ぬ町(まち)んかい買(こう)い物(むん)しいがんちやさ。
⑤彼(あり)ん、まじゅん、行(い)ちゅんちやんでぃさ。
  
【解説】「やん」は「である」等を表わす存在動詞としての意味の他に、「―の」を表わす助詞「んち」、「んでぃち」を伴って、「―(をする)つもりである」等と意思を表わす助動詞としての役割もあります。これらの二語、すなわち、「んでぃち」又は「んち」と「やん」は複合語又は慣用句のように、常に一体となって、この意味を表わします。したがって、、存在動詞「やん」の否定が「あらん」であるのに対し、例文②のように、否定は動詞側で行なわれ、この「んちやん」はそのままの形を維持します。「んちやん」の側を否定にすると、「飲むんでぃちえ、あらん」となりますが、意味は、「飲むつもりではない」または「飲むという事ではない」等となり、前者が「飲まない決意」を表わすのに対し、後者は「とりあえず」と「一時的な考え」を表わします。なお、「んち」は、例文①の()にあるように、「んでぃち」のつづまったものですが、口語においては、「んち」使いが多いと思われます。

   
【応用問題】次の文の太字部分を「んちやん(んでぃちやん)」を使う文に直しなさい。必要に応じて他の語も直しなさい。

①やあんや勉強心掛(びんちょうくくりが)きゆる積合(ちむええ)やんどお。
②父(すう)や家建(やあた)てぃらんでぃ、考(かんげ)えとおみせえんでぃさ。
③親(をぅや)ぬ家(やあ)ん、とぅん回(まあ)い回いさなんでぃ思(うむ)とおん。
④今(なま)から後(あと)お、しい破(や)んぜじえ、さん積合(ちむええ)そおん。
⑤なあ、誰(たあ)ん、頼(たる)がきらん考(かんげ)えそおいびいさ。

答え:
①やあんや勉強心か掛きゆんちやんどお。
②父や家建てぃゆんちやみせえんでぃさ。
③親ぬ家やとぅん回い回いすんちやん
④今から後お、しい破んじえ、さんちやん
⑤なあ、誰ん、頼がきらんちやいびいさ。

日本語意訳:
①来年は勉強を励むつもりだよ。
②父は家を建て替えるつもりだとさ。
③実家も、ときどき立寄ってみるつもりだ。
④今後は失敗はしないつもりだ。
⑤もう、誰も頼らないつもりですよ。

  
【話題-沖縄語におけるマ行とナ行の混在】
 なぜ、首里語では「読むん」が「読ぬん」となり、また「食まやびいん」等がなぜ、「食なびいん」となるのかという質問が多いです。読者の期待に副うような適切な答えになっているかどうかは読者が判断する事ですが、筆者は言語の習慣の違いからそうなっていると答えています。沖縄語には同地域でも古い語と新しい語が混在する他、地方間でも古音の多い地域と新音の多い地域があります(それが、語の変遷を知りえる環境になっています)。中でもマ行音とナ行音の混在は比較的多く、特に「みや」「まや」等が「な」に変形する例が多いです。「みふぇえでえびる」が「にふぇえでえびる」に変化したのは代表的な例です。

首里語以外→首里語
「飲むん」→「飲ぬん」(これは首里語のみ)
「飲まやびいん」→「飲なびいん」(首里語に影響された那覇語系地方語含む) 
「飲まびいん」→「飲なびん」(上同)

日本語

①お金があるというのは素振り、実は貧乏なのだ。
②お腹が痛いというのは素振り、行きたがってないのではないのか。
③酒を飲む振りをしているが、白湯を飲んでいる。
④煙草を吸う振りして、君を見ている。
⑤結婚祝い口実にして、綺麗な服を買いました。
⑥出張を口実にして、旅行に行きました。

うちなあぐち

①銭(じん)ぬあんでぃしえ、なじき、実(じち)え、貧(ふぃん)相者(すうむん)どぅやる。
②腹(わた)やんとおんでぃしえなじき、行(い)かんぱあやしえ居(をぅ)らに。
③酒飲(さきぬ)みなじきいそおしが、白湯(さあゆう)どぅ飲(ぬ)どおる。
④煙草(たばく)吹(ふ)ちなじきいし、汝(やあ)どぅ見(ん)ちょおる。
⑤にいびち祝儀(すうじ)なじきてぃ、ちゅら衣買(じんこ)うやびたん。
⑥出張(しゅっちょう)なじきてぃ、旅行(たび)んかい行(い)ちゃびたん。

【解説】
 「―の振り」「―する振り」「―を口実にして」は、それぞれ、「なじき」、「なじきい」、「なじきゆん(なじきいん)」を使います。
◆「なじき」:「素振り」、「振り」等の意味の名詞。士族語では「なじぃき」。
◆「なじきい」:「―する振り」の意味の接尾語で動詞連用形に付きます。同じ意味の語「ふうなあ」については次講参照。
◆「なじきゆん」:「の振りをする」という意味もありますが、「口実にする」という意味合いが強い語です。『沖縄語辞典』にはありません。
例文② 「行かんぱあ」の「んぱあ」は「―(を)嫌がる」の意味の接尾語ですが、「すん」(する)や「(どぅ)やる」(なのだ)を付けてスン・シ動詞の語幹や名詞のように用います。「行かんぱあ」は「*行ちんぱあ」とも言います。
例:「さんぱあ、*しいんぱあ」(何れも、「することを嫌がる事」。関係語に名詞にもなりえる感嘆詞「んぱ」(厭、嫌)があります。なお、*の句は、地方では殆ど用いられず主には首里で使われているようです。
例文⑤~⑥ 「なじきゆん」は多くは例文のように慣用的に接続態で用いられ、終止形その他の活用形で用いられる事は稀です。その変形である「なじきやあに」「なじきやあま」、「なじきやあい」も勿論用いられます。

  
【応用問題】
 次の文を「なじき」、「なじきい」、「なじきてぃ」、「-んぱあ」を使う文に直しなさい。

①孫(んまが)あ歯屋(はあやあ)んかい行(い)ちぶ欲(ぶ)しゃあしえ居(をぅ)らん。
②家(やあ)んかい帰(けえ)ゆんでぃしや、口回(くちまあい)、横走(ゆくば)いそおん。
③木薪燃(きだむんめ)えすん振(ふ)うなあし、芋(んむ)どぅ炙(あぶ)どおる。
④頭痛(ちぶるや)ぬんかい言寄(くとぅゆ)しさあに、仕事(しくち)憩(ゆく)たん。

答え:
①孫あ歯屋んかい行かんぱあそおん。
②家んかい帰ゆしえなじき、横走いそおん。
③木薪燃えしなじきいし、芋どぅ炙どおる。
④頭痛んなじきてぃ(なじきやあに、他)、仕事憩たん。

日本語意訳:
①孫は歯科に行くのを嫌がっている。
②家に帰る振りして道草をくっている。
③薪を燃やす振りして芋を焼いている。
④頭痛の振りをして仕事を休んだ。

註:口回い=口実。振うなあ=素振り、振り。言寄し=かこつけ。

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