比嘉清の文でおぼえるうちなあぐち

聴ち美らさ 語い美らさ 書ち美らさ 御万人ぬうちなあぐち

はいさい、ぐすうよう。いめんせえびり。 うちなあぐちの散文を丁寧文で実践している比嘉清です。 うちなあぐちへは散文から入るのも一つの手です。沖縄の団塊世代は日本語を学ぶのに100%近くが小学校の教科書から入りました。大きくなって発音の違いに苦労しましたが、長い目でみれば、今は文章から入ってよかったと思っています。

2013年11月

うちなあぐち

① 乞(く)うやあぬ言(い)い戻(むどぅ)しいが参(もう)ちゃん。
② 友(どぅし)とぅあらがあ合(ええ)さしが、けえ言(い)い負(ま)きたん
③ 肝要(かんぬう)な事(くとぅ)とぅないねえ、政治家(しいじさあ)あ言(い)いまんぐぁすん
④ 「すんすん」し、言(い)い流(なが)し流しさあに何(ぬう)んさびらん。
⑤ でえじな勘鈍者(かんどぅうむん)やんでぃち、言(い)い下(さ)ぎらったんよお。
⑥ 「うりがん何(ぬう)んないみ」でぃ、言(い)いしたらかさったん
⑦ 汝(やあ)が悪(や)な事(くとぅ)、言(ゆ)くとぅ、我(わあ)が言(い)い直(のお)ちゃん

日本語

① 嫁の申込者が婚約を解消しにいらっしゃった。
② 友だちと議論をしたが、論破されてしまった
③ 肝心な事となると、政治家は言い紛らす
④ 「やるやる」と、口ばかりで何もしません。
⑤ とても勘が悪い奴だとこきおろされたよ。
⑥ 「それが何の役に立つか」とけなされた
⑦ 君が縁起の悪い事を言うから、僕が良い様に言い直した

【解説】「言ん」に関する慣用句・言い回しは、直訳調の日本語とは意味合が随分、異なります。完全に別の言語のつもりで覚えた方がよいでしょう。当講におけるそれは、例文⑦以外は良い文句とは言えませんがそれらも言語の一面です。
例文① 「乞うやあ」は「嫁乞い者」の意味、婿側の親戚がを代表して行く。
例文② 「言い負きゆん」の対句は「言い負かすん」。「あらがあ」は「言い合い」、「議論」等。「あらがあゆん」は「議論する」。
例文③ 「まんぐぁすん」は「惑わす」、「紛らわす」等の意味があります。例:「人お、まんぐぁするむぬおあらんどお」で「人を惑わすものじゃないよ」。
例文④ 「言い流し流し、し」とも言います。
例文⑤ 「言い下ぎゆん」の例文訳「こきおろす」は「悪く言う」でも良いです。
例文⑥ 「言いしったかすん」とも言います。「うりがん何んないみ」は慣用句として覚えましょう。
例文⑦ 「言い直すん」は例文の意味の他に、「前言と取り消す」という意味もあります。例:「くぬ前、言ちゃる事お、言い直すんどお」(この前言った事は取り消すよ)。

【応用問題】次の文を日本語に訳しなさい。答えは下欄です。
① 女(ゐなぐ)ぬ親(をぅや)あ、言(い)い戻(むどぅ)さってぃ、けえとぅるばとおたん。
② 弟(うっと)おちゃっさ、言い負(ま)きてぃん、怖(う)じいらんたん。
③ 父(すう)や言いまんぐぁさんでぃさしが、母(あんまあ)や合点(がてぃん)さんたん。
④ 銭返(じんけえ)すんでぃち、言い流(なが)し流しびけんそおん。
⑤ 歌(うた)ぬ歌(うた)い様(よう)、言(い)い下(さ)ぎらってぃ、ちるだいそおいびいん。
⑥ うっさ、言(い)いしったらかさってぃん、口(くち)んかなあん。
⑦ 彼(あれ)が画(か)ちぇえる絵(いい)や、ちびらあさんでぃ、言(い)ちょおたるむぬ、きっさ、言い直(のお)ちょおん

答え:
① 女の親は破談にされて愕然としていた。註
② 弟はいくら、論破されても、恐れなかった。
③ 父は言い紛らそうとしたが母は納得しなかった。
④ 金を返すと言うのは口ばかりで返さない。(意訳)
⑤ 歌の歌い方をこき下ろされて、元気をなくしています。
⑥ あれだけ、悪く言われても、口答えもしない。
⑦ 彼が画いた絵は素晴らしいと言っていたのに、もう、発言を訂正している

註:「とぅるばゆん」は「黙って静かにする」等の意味ですが、「ショックを受けて肩を落とす」等の意味もあります。「とぅりゆん」(凪ぐ)と派生関係にある語と思われます。

うちなあぐち

① 童(わら)ん達(ちゃあ)んかい、良(ゆ)う、言(い)い習(なら)あしよおやあ。
② うぬ事(くとぅ)し、諸(むる)なかい、けえ言(い)いくじらったるむん。
③ 彼(あり)が事(くと)お、誰(たあ)んかいん、言(い)い広(ふぃる)ぎらんきよお。
④ 先生(しんしい)や生徒、(しいとぅ)言(い)い入(い)りゆんでぃち、やっぱとおいびいん。
⑤ 何(ぬう)んあらなそおてぃ、あんし、言(い)い立(た)てぃてぃ
⑥ くぬ前(めえ)ぬ約束(やくすく)お、なあ言(い)い返(けえ)すくとぅ、許(ゆる)ち取(とぅ)らし。
⑦ 彼(うり)え、都合(ちごう)ぬ悪(わ)っさぬ、言(い)い回(まあ)らさんでぃそおん。

日本語

① 子供たちに、良く、教えてちょうだいね。
② その事で、皆にけなされてしまったものだ。
③ 彼の事は誰にも言い触らさないでよ。
④ 先生は説得しようと、頑張っています。
⑤ 何でもないのに、そんなに、大袈裟に言って。
⑥ この前の約束はもう取り消すのでごめんなさい。
⑦ 彼は都合が悪いので、誤魔化そうとしている。

【解説】沖縄語の言い回しは、独自に発達してきたものが多いです。「言ん」に関する言い回し、慣用句にも独特のものがあります。

例文① 「言い習あすん」は「言って教える」。「言ち習あすん」に言い換えることもできます。
例文② 「言いくじゆん」は「言ん」と「くじゆん(穿る、抉り出す、皮肉る)」から成ります。概ね、「くじい物言いすん」と重なります。
例文③ 「言い広ぎゆん」は「言い触らす」、「吹聴する」等の意味。「叫びたっ加あすん」の言い方とも重なる部分もあります。
例文④ 「言い入りゆん」は「説得する」、「言い聞かせる」等の意味。「言ち聞かすん」とも重なります。
例文⑤ 「言い立てぃゆん」は「必要以上に言い騒ぐ」、「誇張する」、「大袈裟に言う」等の意味。勿論、「言ち騒じゅん」、「うふ物言いすん」等、別の言い方もできます。
例文⑥ 「言い返すん」は「約束等取り消す」、「前言を翻す」等の意味。
例文⑦ 「言い回らすん」は「のらりくらり言い逃れる」、「言い誤魔化す」等の意味。「あり言ちゃいくり言ちゃいし、ばばくぁあすん」という表現する事もできます。

【応用問題】次の文の太字の部分を下の慣用句で言い直しなさい。
①今先(なまさち)あちれえたるむぬお、なあ、済(し)まびいさ。(言い返すん)
②彼女(あり)が事訊(くとぅち)ちちん、彼(うり・)え、別(びち)ぬ物言(むぬい)いどぅさびいる(言い回らすん)。
③行(い)くなんでぃち、ちゃっさ言(い)ちん、聞(ち)ちゃびらん。
④太郎(たるう)や次郎(じらあ)なかい、叫(あ)びらってぃ、面白(うむく)ん無(ね)えんたん(言いくじゆん)。
⑤うっぴ小(ぐぁあ)ぬ事(くとぅ)ん、あんすか、叫(あ)びやあ叫びやあし(言い立てぃゆん)。

答え:
①言い返さびいん。
②言い回らしいどぅさびいる。
③言い入りてぃん聞ちゃびらん。
④言いくじらってぃ。
⑤言い立てぃてぃ。

日本語意訳:
①先ほど注文したものは取り消します。
②彼女の事を訊いても、彼は誤魔化すのです。
③行くなと、いくら説得しても、聞きません。
④太郎は次郎に皮肉られて、面白くなかった。
⑤それだけの事で、そんなに大袈裟に言われて。

このブログにおけるうちなあぐちの表記法の方針

◆単語の持つ固有音の長音は母音(あ、い、う、え、お)で表記する。(例語の太字部分)
沖縄語例:と、あんせ、うしゅめ
日本語例:じゃあ、、おじさん。
但し、カタカナ表記されている外来語の場合は固有音であっても「―」を使う。
◆臨時的伸ばし音の場合は棒引ち記号「―」を使う。
沖縄語例:いぇえー、しまぶく。(島袋氏呼ぶ場合の「しまぶく」の伸ばし音)
日本語例:おい、島袋さーん。(「おい」の臨時伸ばし音)
(したがって、会話体以外(=地の文)においては使われる事は無い)

註:「おもろさうし」「組踊」等のそうであったように日本語の表記法に準じています。

「はなしことば」、「​かきことば」及び「​文語」の区別に関する考え方(異なる意見があることは承知いたしおります)。​
◆​「はなしことば」=会話調のことば。語尾に感嘆詞「ねえ」、「​よ」、「​さ」を頻繁に用いる。同じ事を繰り返したり文法(語順)が乱れがちだが、話し手、聞き手とも気にしなくて済まされる世界。また、それらを「単にメモったもの」。

例:きよーわねー、天気がいーじゃない。だからさー、みんなで、うんどーこーえんにいこーよー。

◆「書きことば、文章にすることば、文章語」=​感嘆詞を取り除いた澄まし言葉で成り立つ。無駄な語を省き、文法(語順)や文の流れを気を気にして書く。したがって概ね起承転結が明確である。
​ 
例:今日は、天気が良いので、皆で、運動公園に行こう。

◆「文語」=辞典上では二通りの意味がある。一つは「書きことば」や「文章ことば」の意味。二つには、江戸時代までの書きことば。したがって、「古語」とは意味が重なる部分がある。

 現在、「書きことば」のつもりで流行している棒引き記号「ー」​を使う文章は、固有長音と伸ばし音の区別されてなく、「はなしことば」をそのまま「メモ書き」に直したようなものの域をでない。ことばを「書いたもの」だからといって、イコール「書きことば」とはかぎらないのである。

日本語表記である「ひらがら」を借用するのであれば、その使い方(歴史的慣習ルール)もセットで借用すべきであると考える。
​ ちなみに、日本語のひらがな使用のルールは、
1.単語の固有長音(太字部分)は母音(あ、​い、う、え、お)で表示する。したがって、日本語辞書にはカタカナで表記される外来語以外は「ー」を使う単語はない。
  例:それじゃ、またね、おじさん、おばさん。
2.伸ばし音(臨時的)対しては、「ー​」を使う。
  例:おーい、ひろしくーん、こっちへ、きてよー。(「おい、ひろしくん、こちへきてよ」の臨時伸ばし音)
3.但し、外来語などカタカナで表記される語については「ー」使用もありうる。

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