うちなあぐち

① 帽子(ぼうし)ぬ釘(くじ)んかい掛(か)かとおん。
② 二階(にいけえ)プウぬ船(ふに)ぬ港(んなとぅ)んかい掛かとおん。
③ 太郎(たるう)や今(なま)ぬまあどぅぬ試験(しちん・)ぬんかい掛かとおいぎさん。
④ 昔(んかし)ぬ童(わら)ん達(ちゃあ)や、昼間(ふぃるま)あ家(やあ)ねえ掛からんたしがる。
⑤ 人(ちゅ)ぬ口舌(くちしば)んかい掛かゆる事(くと)お、さんし(せ)えましどお。
⑥ 汝(やあ)や大人(うふっちゅ)なてぃん親(をぅや)んかいどぅ掛かかとおんなあ。
⑦ うっさ銭(じん)ぬ掛かとおるばあなあ。

日本語

① 帽子がぬ釘にかかっている。
② 蒸気船が港に停泊している。
③ 太郎は今回の試験には合格したようだ。
④ 昔の子供達は家にいる事はなかったのに。
⑤ 人の噂に上るような事はしない方が良いよ。
⑥ 君は大人になっても親の厄介になっているのかい。
⑦ こんなにお金がかかったわけねえ。


【解説】
 「掛かゆん」は日本語の「掛かる」に対応する語です。日本語にも元々、多様な意味がありますが、漢語等他の語に置き換えられて、その使用は狭められている感があります。沖縄語においては古風な使い方もまだ健在です。日本語にある「かかれ=襲え、攻めろ」や「敵の手に掛かる=敵の手に落ちる、処分される、殺される」等の意味は、沖縄語では廃れてしようされなくなったのでしょうか?

例文① ここでの意味は例文⑦の場合と同じく、最も普通に使われる例です。
例文② 「二階プウ」は「蒸気船」を表わす俗語です。大抵二階建てのビルのようで、出港等の際に「プウ」という汽笛を鳴らした事からこの名が付けられたようです。『沖縄語辞典』にはありません。ここでは「かかゆん」は「停泊する」の意味です。
例文③ 「太郎」は平民は「たらあ」。士族は「たるう」だったとの事ですが、地方では厳密ではなかったか、平民家系の筆者の実家ではずっと、叔父の名は「たるう」です。
例文④ 「家ねえ」の「ねえ」は位置を表わす助詞「に」と係助詞「え」の合成語で「には」という意味です。「我ねえ」の「ねえ」とは一応別の語です。
例文⑤ 「口舌」は「うわさ」、「評判」等の意味で悪い意味で使われます。
例文⑥ 「掛かかとおん」は日本語文では「厄介になる」になっていますが、「頼っている」の意味であります。
例文⑦ 「銭かかゆん」と「銭てえすん」との違いは、後者は「金を費やす」の意味です。

【応用問題】次の日本語文を沖縄語で表わしなさい。
① いいくる春(はる)まんぐるからあ、湿掛(しちがか)かいすん。
② 言(ゆ)しどぅかかゆる。
③ ちゃあ、親(をぅや)ぬ事(くとぅ)ぬ肝掛(ちむがか)かいし、ないびらん。
④ あんすか、掛(か)かい縋(しが、すぃが)いさりいねえ、ふしがらんしが。
⑤ 今日(ちゅう)や、ふぃっちい、家んかい掛(か)とおきよお。
⑥ 諸(むる)し、しいち掛(か)からりいねえ、恐(うとぅ)るさるならんさあ。
⑦ しんかぬ達(ちゃあ)や、仕事(しぐとぅ)、し掛(か)かたん。

答え:
① およそ、春頃から湿気を帯びてくる。
② 言う人にこそ頼む(べきだ)。
③ いつも親の事が気かがりでなりません。
④ そんなに纏わり付かれると、やりようがないけど。
⑤ 今日は、終日、家にいておけよ。
⑥ 皆に詰め寄られると(押し掛けられると)、恐くてしょうがないなあ。
⑦ 中間達は仕事に取り掛かった。