うちなあぐち

① 歳取(とぅしとぅ)てぃがやら、近頃(ちかぐる)お夜中(ゆなか)んじ、肝早(ちむべえ)さぬならん。
② 基地(ちち)ぬ事(くとぅ)にちいてえ、沖縄(うちなあ)とぅ本土(やまとぅ)とお肝違(ちむたがあ)あてぃ、ふしがらんむん。
③ あん小(ぐぁあ)や思里(うみさとぅ)ぬ本土(やまとぅ)んかい去(は)ち、毎(めえ)が毎日(めえにち)、肝(ちむ)ちゃあ悲(がな)さそおん。
④ 童(わらび・)え親(をぅや)ぬ家(やあ)んかい帰(けえ)えてぃからあ、肝(ちむ)とぅめえとおん。
⑤ 戦世(いくさゆう)んじ、親(をぅや)までぃいなたる童(わらん)ん達(ちゃあ)や肝(ちむ)ぐりさん。
⑥ 停電(てぃいでぃん)さあに、蝋燭点(ろうとぅぶ)ちゃしが、あいゆかん、肝暗(ちむぐら)さん。
⑦ 今迄習(なままでぃなら)たる事(くと)お忘(わ)っしらねえし、肝掛(ちむが)きてぃ呉(くぃ)り。

日本語

① 歳の所為なのか、近頃は夜中に目覚め易くて嫌だ。
② 基地問題については、沖縄と本土では考えが合わず、どうしようもないな。
③ 乙女は、愛しい彼氏が本土に行ってしまい、来る日も来る日も、うらがなしい思いをしている。
④ 子は実家に帰ってからは落ち着きを取り戻している。
⑤ 戦争で親を失った子供達は本当に不憫である。
⑥ 停電して、蝋燭を点したが、とても滅入るように薄暗い。
⑦ 今迄習った事は忘れないように心掛けて欲しい。

【解説】引き続き「肝語」です。日本語とかけ離れた表現もありますので、慣用句として覚えたいです。
例文① 「―ぬならん」は、「―でならぬ」等の意味ですが、ここでは「意に反する」等の意味合いがある事から「嫌だ」にしました。地方ではあまり使われませんが、同じ意味で「心早さん」ともあります。
例文② 「防がらん」は、「防じゅん」の受動文で、主には「どうしようもない」という意味で使われます。「肝違あゆん」には、「考え方が一致しない」、「誤解する」及び「分かり合えない」等の意味があります。
例文③ 「思里」の「思」は「愛しの、愛しい」等の意味合いがあります。「毎が毎日」は『沖縄語辞典』にはありませんが良く使われますので、慣用句として覚えたいです。
例文④ 「肝とぅめえゆん」には「我に返る」、「自分を取り戻す」等の意味があります。
例文⑤ 「までぃい」は「失う事」の意味。
例文⑥ 「肝暗さん」は単に「暗い」のではなく、「滅入るような暗さ」や「心細い暗さ」等を表します。
例文⑦ ここでの「呉り」は文字通り「呉れ」ですが、「―して欲しい」の意味合いもあります。

【応用問題】次の文を「肝語」(前講含む)を使って言い直しなさい。下欄は答えです。
① 今(なま)ぬうちなかい、落(う)てぃ着(ち)かさんでえならん。
② 松明(てえ)ぬ明(あ)かがいびけんしえ、暗(くら)さぬ如何(ちゃあ)んならんむん。
③ 知(し)らん人(ちゅ)やてぃん、情掛(なさき)りわるやんどおやあ。
④ 車(くるま)あ良(ゆう)うし、歩(あ)っかさんでえならん。
⑤ 彼(あり・)え、うっさぬ重荷(うぶにい)持(む)たさってぃ、哀(あわ)りやん。

答え:
① 今ぬうちなかい肝とぅめえらさんでえならん。
② 松明ぬ明かがいしけんしえ、肝暗さぬならんむん。
③ 知らん人やてぃん、肝呉りわるやんどおやあ。
④ 車あ肝掛きてぃ、歩っかさんでえならん。
⑤ 彼え、うっさぬ重荷持たさってぃ、肝ぐるりん。

日本語意訳:①今の内に落ち着かせておかねばならない。②松明の明かりだけでは、心細い暗さだ。③知らない人であっても、情けを掛けてやるべきだよねえ、④車は気を付けて運転しなければならない。⑤彼はそれだけの重荷を持たされて可哀想だ。