比嘉清の文でおぼえるうちなあぐち

聴ち美らさ 語い美らさ 書ち美らさ 御万人ぬうちなあぐち

はいさい、ぐすうよう。いめんせえびり。 うちなあぐちの散文を丁寧文で実践している比嘉清です。 うちなあぐちへは散文から入るのも一つの手です。沖縄の団塊世代は日本語を学ぶのに100%近くが小学校の教科書から入りました。大きくなって発音の違いに苦労しましたが、長い目でみれば、今は文章から入ってよかったと思っています。

2014年05月

うちなあぐち

① 同(い)ぬ「肝浅(ちむあさ)さん」でぃちん昔(んかし)と今(なま)とお積(ちむ)合(ええ)ぬ違(ちが)ゆん。
② 親(をぅや)ぬ事(くとぅ)んしゆさな、今(なま)あ肝痛(ちむや)まちょおいびいん
肝割(ちむわ)てぃ、話(はなし)さんでえ、彼(あり)があ分(わ)かてえ取(とぅ)らさん筈(はじ)。
④ 悪(や)な話びけん聞(ち)かさってぃ、肝(ちむ)ん朦朧(もうどう)けえなとおさ
⑤ 今(なま)ぬ先生(しんしい)や肝(ちむ)固(ぐふぁ)い者(むん)やくとぅ、ふぃれえ易(やっ)さん。
⑥ 彼(あり・)え、ちゃっさ言(い)い習(なら)あちん、肝(ちむ)ぬ先(さち)にん掛(か)きらんさ
⑦ 沖縄人(うちなあんちゅ)お、いいくる肝長(ちむなが)さんでぃち、聞(ち)くぃいとおん。

日本語

① 同じ「浮気である」と言っても昔と今とでは意味が違う。
② 親の事(親孝行)もできず、今は心を痛めています。
心を開いて話ないと彼は分かってくれないだろう。
④ 嫌な話ばかり聞かされて、心も乱れてしまっているよ。
⑤ 今の先生は良く気配りがするお方だから付き合い易い。
⑥ 彼はいくら言い聞かせても、ちっとも気にしないよ。
⑦ 沖縄人は、大抵のんびりしているとの評判である。

【解説】今回の「肝語」は文字だけでは解釈が難しいかも知れません。ですが、その分、寧ろ記億に残り易いかも知れません。

例文① 「肝ぬ浅さん」似ていますが、この方は「心が浅い」という意味です。
例文② 「肝痛むん(首里語「ちむやぬん」)」は「肝病むん」とも当てあります。「後悔する」の意味にも用います。
例文③ 「彼があ」の「があ」は「が」と「あ」の二重格助詞で、直訳すると「がは」等と、変になりますが、沖縄語では普通に使われています。
例文④ 「頭が朦朧としてる」という言い回しは日本語的です?が、「心(肝)が朦朧としている」というのはいかにもは沖縄的です?
例文⑤ 「肝固さん」は「心が固く引き締まり、いかにも、「精神的にしっかりしている」等のイメージがあります。
例文⑥ 「肝ぬ先にんかきらん」は他には「全く動じない」、「何とも思わない」等、良い意味に悪い意味にも使います。
例文⑦ 「聞くぃいゆん」は直訳は「聞こえる」ですが、「有名である」「評判がある」等に発展しています。琉球王府において最高神官であった「聞得大君」(註)の「聞得」もその派生語からの変形です。「おもろ御さうし」では「きこゑ」と開音(合音では「ちくぃい)」で表記されます。権威のある神官や統治者や按司等に枕詞のようにかぶせる語であり、固有名詞ではありません。例:きこゑあおりやえか、きこゑせのきみ、きこゑさすかさ、きこゑあちおそい、きこゑくにおそい、きこゑにしむい、きこゑあらとみ等。

註:聞得大君(ちふぃじん、きこゑ大きみ)は、琉球国の最高神官であり、王の継承にも介入できる程の権力者であった。女は男兄弟の守り神であるする琉球古来の「をなり神信仰」を根とする。

【応用問題】次の文の太字部分を、例文を参考に、別の語句・慣用句・言い回しに直しなさい。
① 我にん行けえ済(し)むたるむんでぃち、後悔(くうくぇえ)そおん。
② 今(なま)ぬ社長や尻尾振(ずうぶ)しん、何(ぬう)んでぃん思(うま)あん。
諸(むる)が事考(くとぅかんげ)えてぃ取(とぅ)らする人(ちゅ)やりわる、ましさりいる。
④ まあぬ婆前(はあめえ)達(たあ)ん、年取(とぅしとぅ)てぃがやら諸(むる)、悠々(ゆうゆう)とぅらあさそおん。
⑤ 今(なま)ぬ若者(わかむん)やありましくりましいし、肝(ちむ)ぬ定(さだ)まらん。

答え:
① 肝痛まちょおん。
② 肝ぬ先にんかきらん。
③ 肝固い者。
④ 肝長さん。
⑤ 肝浅さぬ。

日本語意訳:
①僕も行けば良かったのにと後悔している。
②今度の社長はごますりしても気にも留めない。
③皆の事を世話してくれる人こそ好かれるのである。
④どこのお婆さん達も年の所為なのかのんびりしてる。
⑤今の若者はあれが好きだ、これが好きだと(言って)、落ち着かない。

うちなあぐち

① うんじゅが加勢(かしい)し取(とぅ)らしいねえ、肝強(ちむじゅう)さいびいさ
肝清(ちむじゅ)んっ人(ちゅ)お、御(う)万人(まんちゅ)ぬ事(くとぅ)ん良(ゆう)うすん。
③ 知らん国(くに)んじ、肝(ちむ)とぅん体(てえ)とぅんかなん風儀(ふうじ)やたん。
肝(ちむ)ぬ思(うみ)いがやたら、見(ん)ちゃる覚(うび)いぬあたしがどぅ。
⑤ うぬ童(わらび)え(・)、肝弱(ちむよお)さぬ人(ちゅ)ぬ前(めえ)んかいやならんでぃんさん。
⑥ 隣(とぅない)ぬ御主前(うしゅめえ、うすめえ)や肝(ちむ)しっぷうさぬ如何(ちゃあ)んなやびらん。
⑦ 姑(しとぅ)とぅ嫁(ゆみ)え(・)互(たげ)えに肝(ちむ)ぬゆちゃゆんねえ、しわるなゆる。

日本語

① あなたが協力してくれたら心強いですよ。
心優しい人は多くの人たちの面倒見も良い。
③ 知らない国で途方に暮れている様子だった。
気のせいだったのか、見た覚えがあったのに。
⑤ そこの子は気が弱くて、人前には行こうともしない。
⑥ 向こう隣のお爺さんは片意地でどうしようもない。
⑦ 姑と嫁は互いに心が通じる合うようにすべきである。


【解説】
 本講の「肝語」も文字と各合成語を見れば概ねその意味が理解できます。普段は頭の中は日本語に占領され、なかなか思いつかないですが、積極的に使っていきたいものです。

例文①「肝強いさびいさ」は「安心です」と訳する事もできます。
例文②「肝清さん人」は慣用的な以下で、「肝清らさるっ人」でも間違いではありません。「肝清らさん」には「恵深い」という意味もあります。「良うすん」は、「良くしてくれる」の意味ですが、意味合い的には訳文通りの意味になります。
例文③ 「肝とぅん体とぅん叶(敵)あん」は文字通り、「心も体もかなわない」ですが、訳文通りの意味合いです。
例文④「あたしがどぅ」は「あたしがる」でも良いです。「どぅ」は前語を強調する助詞ですが、ここでの意味合いは訳文の通りです。
例文⑤ 「ならんでぃんさん」の直訳は「なろうともしない」ですが、慣用的には例文の他、「出ようともしない」等の意味になります。
例文⑥ 「肝しっぷう」は「肝」と「しぶとい、強情」等を意味する「しっぱ」との合成語です。「なやびらん」は「ないびらん」の少し古い形ですが、地方ではやや優勢、首里・那覇では混在しています。
例文⑦ 「肝ぬゆちゃゆん」は「肝」と「気が合う、馴染む」等を意味する「ゆちゃあゆん」の合成語です。「しとぅ(姑)」は「しゅうと」にも「しゅうとめ」にも言いますが、普通は「しゅうと」について言います。

【応用問題】
前の例文を参考に次の文中の語を意味が同じか又は近い語に直しなさい。
① あぬ美童(みやらび)え平生(ふぃいじい)からうゑんださんあい、うふ安っさん。
② 英語口(いんじりいぐち)ぬ分からな、とぅぬうまぬうさびたん。
③ あぬっ人(ちゅ)お、誰(たあ)とぅん肝(ちむ)ぬ違(たが)あらんさ。
④ いっ達主(たあすう)や、頑固(ぐぁんく)なてぃ、ぞうい、当(あ)たらん。
⑤ だあ、あぬ男(ゐきが)あ肝(ちむ)小(ぐう)さぬ、けえ飽(あ)ちゃがらっとおさ。
 
答え:
① 肝美(ちむじゅ)らさん。
② 肝(ちむ)ん体(てえ)ん無(ね)えやびらんたん。
③ 肝(ちむ)ぬゆちゃゆさ。肝ぬゆちゃとおさ。
④ 肝しっぷう者(むん)なてぃ。肝しっぷうなてぃ。
⑤ 肝弱(ちむよお)さぬ。

日本語意訳:①あの娘は普段から心優しい。②英語が分からず途方に暮れました。③あの人は誰とも心が合うよ。④あんたんち(君たち)の親父は偏屈で、とても付きあい難い。⑤ほれ、あの男は小心者だから飽きられてしまったよ。

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