比嘉清の文でおぼえるうちなあぐち

聴ち美らさ 語い美らさ 書ち美らさ 御万人ぬうちなあぐち

はいさい、ぐすうよう。いめんせえびり。 うちなあぐちの散文を丁寧文で実践している比嘉清です。 うちなあぐちへは散文から入るのも一つの手です。沖縄の団塊世代は日本語を学ぶのに100%近くが小学校の教科書から入りました。大きくなって発音の違いに苦労しましたが、長い目でみれば、今は文章から入ってよかったと思っています。

2014年06月

うちなあぐち

① 試験前(しきんめえ)に遊(あし)びすしん、肝(ちむ)ぬ余(あま)いどぅやる。
② 祝儀(しゅうじ)ぬ支(し)こういすんち、今日(ちゅう)やひっちい、肝忙(ちむいちゅ)なさん
③ 明日(あちゃあ)あ試験やしが、掛かいがすら肝ふぃちゃぎそおん
④ 汝(いゃあ)肝当(ちむあ)てぃげえや何(ぬう)ぬ後(くし)当(ゃて)ぃん無(ね)えな、得(い)らりらん。
⑤ 初(はじ)みてぃ車歩(くるまあ)っすくとぅ、でえじな肝だくみちそおん
⑥ 今(なま)から思里(うみさとぅ)ぬ面拝(ちらうが)みいが行ちゅんでぃ、思(うむ)いねえ、でえじな、肝ぶとぅみちそおん
⑦ 孫(んまが)ん達(ちゃあ)や実(じゅん)に、うじらさんあい肝愛(ちむがな)さんあん

日本語

① 試験前に娯楽を楽しむのも心の余裕というものである。
② 御祝いの準備をするんだと、今日は終日、気忙しい
③ 明日は試験だけど、合格するのか不安である
④ 君の当て推量は何の根拠もなく信用できない。
⑤ 初めての車を運転するのでとても不安でいっぱいだ
⑥ 今から彼氏に逢いに行くのかと思うと、とても、胸がときめいている
⑦ 孫たちは本当に、美しくもあり心底可愛いくもある


【解説】
 紛らわしい語句もありますが、慣れてしまえば難しいものではありません。

例文① 「遊び」は「子供の遊び」の意味の他、「歌・楽器・舞踊」等を楽しむ事を言います。
例文② 「祝儀」は「祝い事」の意味。「ひっちい」は「ふぃっちい(首里語系)」とも言います。
例文③ 「肝ふちゃぎ」は例文⑤の「肝だくみち」より「気掛かり程度」の「軽い不安」を表します。
例文④ 「肝当てぃげえ」は、ほぼ同じ意味で「当てぃげえふう」、「さっちゅう」等があります。
例文⑤ 「肝だくみち」は擬音語である「だくだくう(心臓がどきどき、動悸・鼓動がする様)」と関係ある語です。「-みち」は「-する事、-する道。する方法」等を表わす接尾語です。但し「ふとぅふとぅう」は恐怖や不安等で「ぶるぶる」、「がたがた」と「震える様」を表わす副詞です。
例文⑥ 「面拝むん(首里語では「面拝ぬん」)は単に「逢う」としました。「肝ぶとぅみち」の「ぶとぅ」は欲しい物を早めに手に入れたい心情を表わす「ふとぅとぅ」の「ふとぅ」の濁音です。まさに「胸が欲や期待に向かってときめく心情」を表しています。
例文⑦ 単に「かなさん」より、深い愛情を表わす語です。民謡に「肝がなさ節」というのがあります。

【応用問題】
次の文中の太字の語句に誓い慣用句・言い回しを右例文を参考に言い直しなさい。
① 山道(やまみち)んじハブんかいはっちゃがらあらんでぃ、竦(しか)どおん。
② 大人(うふっちゅ)ないねえ、諸(むる)ぬ事考(くとぅかんげ)えゆるゆちみんありわるやる。
察(さっ)ちゅうや、いちゃんだん、しん済(し)むんでぃ言(ゆ)るむぬおあらんどおやあ。
④ あんし好ちょおる女(ゐなぐ)やらあ、早(ふぇえ)く妻(とぅじ)にすしどぅましやる。
⑤ 明日(あちゃ)ぬ天気(うわあちち)ぬ事(くとぅ)やれえ、何(ぬう)ん心配(しわ)(註)さんてぃん、済(し)むさ。

答え:
① 肝だくみちそおん。
② 肝ぬ余い。
③ 肝当てぃげえ。
④ 肝愛さそおる。
⑤ 肝ふぃちゃぎ。

日本語意訳:
①山道でハブに遭遇しないかと怖がっている。
②大人になれば、皆の事を世話する(だけの)ゆとりを持つべきだ。
③当てずっぽうは、むやみにやって良いというものではないよ。
④心から愛しているなら早く結婚するのがよいのある。
⑤明日の天気の事なら何の心配も要らないよ。
註:「心配」は「世話(しわ)」からの転用ですが、紛らわしいですので、筆者の場合は「心配」を当てています。

うちなあぐち

① 御主前(うしゅめえ)や肝(ちむ)ぬ伸(ぬ)びぬあてぃいちゃんだん、わじらん。
② 子(くぁ)ぬ選手(いらびんちゅ)なたくとぅ親(をぅや)あでえじな、肝(ちむ)上(うゐい)やら筈(はじ)
③ 客(ちゃく)ぬめんせえいねえ肝(ちむ)煎(い)りぬ御取(うとぅ)い持(む)ちいさびいん。
④ 嫁(ゆみ)え立ち戻(むどぅ)いしいびちいどぅがやあんでぃち、肝(ちむ)たとぅるちそおる風儀(ふうじ)やたん。
⑤ 大風(ううかじ)ぬ後(あと)お村中、肝一(ちむてぃい)ちなやあに、片付(かたぢ)きらな。
⑥ 男(ゐきが)ん肝(ちむ)持(む)ち者(むん)やりわる、妻(とぅじ)なやあん居(をぅ)る。
肝温(ちむぬる)さくとぅどぅ彼(あり)え(・)仕事(しくち)んとぅめえいゆさんどぅ。

日本語

① お爺さんは寛容さがあって、むやみに怒らない。
② 子が選手になったので、親はさぞ頼もしい事だろう。
③ お客さんがいらっしゃれば心を込めて接待いたします。
④ 嫁は、(離縁して)出戻りすべきなのだろうかと、心が定まらない様子であった。
⑤ 台風の後は村中、協力して後片付けをしようではないか。
⑥ 男も人情持ちであればこそ結婚相手もいるのである。
不熱心だからこそ彼は就職できないのだ。

【解説】
「肝」に様々な形容詞や動詞それに名詞等と組み合わせる事で、実に多様な表現を可能していいます。今回の「伸び」、「温さん」等と組み合わさった慣用句も面白いです。

文例① 「肝ぬ延び」という当て字も可能かも知れませんが弾力性のある「心」という意味になる当て字にしました。
文例② 「肝上」については筆者は「心が高い位置にあって、優越感に浸っている心情」と解釈しています。
文例③ 「肝煎り」は「心を込めて世話する事」は日本語に似ていますが、「肝煎りとしている人」の意味はありません。
文例④ 「肝たとぅるち」は「肝」と「心が迷う」、「心が定まらない」、或いは「祖先の霊に支配される」事を意味する動詞「たとぅるちゅん」の名詞形との合成語です。
文例⑤ 「肝一ち」は第9講の「肝揃い」と殆ど同じ意味です。
文例⑥ 「肝持ち」は単に「心掛け」、「心持ち」という意味ですが、「肝持ち者」は一歩進んで「ちゃんとした心持ちのある者」、「心温かい人」等の意味になります。
文例⑦ 「肝温さん」とは「心」の「熱意」が冷めて温(ぬる)くなってしまったのです。
  
【応用問題】
 次の文中の太字の語句に意味の近い語句を例文の「肝語」を参考に書き直しなさい。答えは下欄です。

① 何事(ぬうぐとぅ)やてぃん、稽古(ちいく)お念入(にんい)りらんでえ、取(とぅい)い受(う)きゆさん。
② 皆(んな)し、肝(ちむ)揃(ずり)いし、作(ちゅく)いねえ、如何(ちゃあ)ぬ大(だ)てえまあんなゆさ。
③ 歌(うた)ん踊(をぅどぅ)いん心入(くくるい)りぬあぬ如(ぐとぅ)し聞(ち)かち又(また)見(み)しりわるなゆる。
④ 男(ゐきが)あ意地(いじぁ)あ、女(ゐなぐ)お肝清(ちむぢゅ)らさ
⑤ 人(ちゅ)ぬ伸(ぬ)びでえぬ無(ね)えらんないねえ、煽(おお)合(ええ)ん戦(いくさ)ぬ多(うふ)くなゆん。

答え:
① 肝温されえ。
② 肝一ちなてぃ。肝一ちなやあに。(他)
③ 肝煎り。
④ 肝持ち。
⑤ 肝ぬ伸び。

日本語意訳:
①何でも稽古事は熱心にやらないと習得できない。
②皆で協力すればどんな大きなものでも作れるよ。
③歌も踊りも心を込めて、聞かせ、そして見せなければならない。
④男は勇気、女は心の優しさ(温かさ)。
⑤人が寛容さがなくなれば喧嘩も戦争が多くなる。

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