比嘉清の文でおぼえるうちなあぐち

聴ち美らさ 語い美らさ 書ち美らさ 御万人ぬうちなあぐち

はいさい、ぐすうよう。いめんせえびり。 うちなあぐちの散文を丁寧文で実践している比嘉清です。 うちなあぐちへは散文から入るのも一つの手です。沖縄の団塊世代は日本語を学ぶのに100%近くが小学校の教科書から入りました。大きくなって発音の違いに苦労しましたが、長い目でみれば、今は文章から入ってよかったと思っています。

2014年07月

うちなあぐち

① 家(やあ)んかい誰(たあ)ん居(をぅ)らんないねえ肝(ちむ)しからあさぬならん。
② 面(ちら)あ笑(わら)とおしが、肝内(ちむうち)え、くさみちょおる筈(はじ)やん。
③ 待(ま)ちゅるがな待っちん思里(うみさとぅ)や来(く)うん。肝(ちむ)どぅ暮(く)りゆる
④ 今(なま)あ昔(んかし)とお段(だん)ぬんならんでぃ肝覚(ちむうび)いしわるなゆる。
⑤ 弟(うっとぅ)ぬ自(どぅう)転(くる)びそおんでぃぬ事(くとぅ)やくとぅ肝(ちむ)ぬ忍(しぬ)ばらん。
⑥ うりが如何(いかな)な自故(どぅうゆい)やらわん、肝(ちむ)加勢(がしい)しわるなゆる。
⑦ 彼(あり)と愛想(ええそう)固(ぐふぁ)さぬ肝(ちむ)ぬ解(とぅ)うきらん。

日本語

① 家に誰も居なくなると心寂しくてどうしもない。
② 顔では笑っているが、内心は腹が立っているだろう。
③ 待つだけ待っても彼氏は来ない。気だけが滅入る。
④ 現代は昔とは大違いだと肝に銘じておかねばならない。
⑤ 弟が孤独であるという事で居ても立っても居れない。
⑥ その事が幾ら自業自得でも慰め励ましすべきである。
⑦ 彼とは性が合わないから打ち解けることができない。

【解説】
 既にお馴染みの句もあれば、目新しい句もありますが、訳文通り覚える事をお薦め致します。
例文① 「肝(心)」と「しからあさん(寂しい)」からなる慣用句です。
例文② 「肝内」は文字通り「内心」又「心の中」という意味です。
例文③ 「気が滅入る」、「心が暮れる」等の意味を表わす慣用句「肝暮りゆん」の「肝」に強調助詞「どぅ」を付けると「暮りゆん」は自動的に連体形で結ばれます。「気だけが滅入る」は意訳です。
例文④ 「肝覚い」は文字通り「心覚え」。「肝に銘じる」、「心に記億しておく事」等の意味としても用います。「段ぬんならん」は「格段の差がある」「圧倒的な差」「比較にならない程の差がある事」等の意味です。
例文⑤ 「肝ぬ忍ばらん」は「聞くに又見るに忍びない、耐えない」等の意味です。
例文⑥ 「それがいくら自己責任(自分の所為)でも精神的援助をしなければならない」と訳す事もできます。自分を表わす「どぅう」は『沖縄語辞典』では「胴」になっていますが、筆者の場合は肉体的自分には「胴」を精神的自分には「自」を当てていますの要注意。
例文⑦ 「釈然としない」、「気が進まない」、「乗る気がしない」等と訳する事もできます。

【応用問題】
次の沖縄語文の太字の部分を例文に適切な句に変えなさい。
① 約束(やくすく)やんでぃちん、しい欲(ぶ)しゃあ無(ね)えらんむん、如何(ちゃあ)し同(どぅう)ゆが。
② 夫(うとぅ)ぬ家(やあ)んじ自持(どぅうむ)ちぐりさそおんでぃぬ話(はなし)や聞(ち)ちゅしん胴(どぅう)ぐりさ思(うむ)ゆん
③ 男(ゐきが)あ、わあ、女(ゐなぐ)お愛想(ええそう)持(む)ちがるましやんでぃち、覚(うび)いとおちゅん。
④ いちゃっさ、うみはまてぃんからん、しいゆさな、ちるだいそおん。
⑤ あっ達(たあ)あ腸(わた)ぬ内(うち)え誰(たあ)がん分(わ)からん。

答え:
① 肝ぬ解うきらん。
② 肝ぬ忍ばらん。
③ 肝覚いそおちゅん。
④ 肝暮りとおん。
⑤ 肝内

日本語意訳
①約束だといってもやる気がしないのに、どうして同意できるのか。
②夫に家で居づらくしているとの話は聞くに耐えない。
③男は度胸、女は愛嬌持ちが良いのだと肝に銘じておく。
④どんなに努力しても出来ないので気が滅入る。
⑤彼らの胸の内は誰にも分からない。

うちなあぐち

① 旅立(たびだ)ちゅる日(ふぃい、ひい)、月読(ちちゆ)ん日読(ふぃいゆ)んし肝(ちむ)わさわさそおん
肝わさみちそおるばすお車(くるま)あ、ゆうし歩(あ)っかする如(ぐとぅ)。
③ 早(ふぇえ、へえ)くなあ、仕事(しくち)とぅめえゆしがる我肝(わあちむ)願(にげ)えやる。
④ ちゃっさ、肝(ちむ)あしがちしん、前足(めえあ)掻(が)ちえならんあい…。
⑤ 地下(じじ)から離(はなり)んかい橋(はし)ぬ架きらってぃ諸肝誇(むるちむふく)いそおん。
⑥ 沖縄(うちなあ)やうっさぬ基地(ちち)突(ち)ち被(かん)しらってぃ肝(ちむ)いちゃさん
⑦ 悪(や)なっ人(ちゅ)とぅ頭(ちぶる)がっぱいさんがあらんでぃ肝騒(ちむさわ)じすん。

日本語

① 旅立ちの日を指折り数えて心がうきうきしている
心が浮き立っている場合は気を付けて運転する事。
③ 早く仕事を探す事こそが僕の心からの願いなのだ。
④ いくら苛立(いらだ)っても、前に進めるものではないし…。
⑤ 本島から離島に橋が架けられ皆、歓喜している。
⑥ 沖縄はこれだけの基地を押し付けられて気の毒に思う。
⑦ 嫌な男と鉢合わせになりはしないかと胸騒ぎがする。

【解説】
 「聞く沖縄語」に対応できるよう、様々なバージョン(言い方)に慣れましょう。

例文① 「わさわさ」は単独では「騒がしい様」を表わす擬音語です。「肝」と組み合わせる事によって、「心が騒がしくなる様」つまり「うきうきする様」を表します。
例文② 「肝」と「わさわさ(ざわつく)」と「みち(様子)」から成る語です。「みち」のついては前講をご参照ください。
例文③ 「肝願え」は「心からの願い」、「悲願」等の意味になります。
例文④ 「あしがち」は「焦り」の意味ですが、「肝」を被せる事によって「苛立(いらだ)ち」に発展します。地方によっては「あさがち」となります。
例文⑤ 「喜ばしい」を意味する「誇らさん(誇らしゃん)」に「肝」を被せて「心から喜ばしい」の意味になります。 
例文⑥ 「いちゃさん」には「失う事が惜しい」、「(人が)痛々しい、苦しそう」等の意味があります。これに「肝」を被せて「心が痛む。気の毒に思う」等の意味になります。
例文⑦ 文字通り「心が騒ぐ」意味になります。
 
【応用問題】
 次の文中の太字部分を例文を参考に近い語句に直しなさい。
① 復帰前(ふっちめえ)や早(ふぇえ、へえ)く日本(にほん、にふん)復帰(ふっち)する事(くとぅ)がどぅ沖縄人(うちなあんちゅ)ぬ望(ぬず)みやたる。
② 思(うむ)やあ小(ぐぁあ)んかい行逢(いちゃ)いが行(い)ちゅんでぃち、肝(ちむ)ふとぅふとぅうそおいびいん。
③ 何事(ぬうぐとぅ)やてぃん、はたはたあし、しいねえ、取(とぅ)い破(やん)じゅんどお。
④ 子(くぁ)ん達(ちゃあ)ぬ諸(むる)、立身(りっしん、でぃっしん)しいねえ、親(をぅや)あ、いっぺえ、いしょうさんてえ。
⑤ 肝通(ちむどぅう)いしいゆさんたる童(わら)ん達(ちゃあ)や肝(ちむ)ぐりさぬないびらん。

答え:
① 肝願え。
② 肝わさわさ。
③ 肝あさがち。
④ 肝誇いやん。
⑤ 肝いちゃさぬ。

日本語意訳:
①復帰前は早く日本復帰する事こそが沖縄人の悲願であった。
②恋人に逢いに行こうとうきうきしています。
③何事も焦ってやると失敗するよ。
④子供達が立身すれば親達はとても嬉しいだろうねえ。
⑤思い通りにできなかった子供達は気の毒でしようがありません。

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