比嘉清の文でおぼえるうちなあぐち

聴ち美らさ 語い美らさ 書ち美らさ 御万人ぬうちなあぐち

はいさい、ぐすうよう。いめんせえびり。 うちなあぐちの散文を丁寧文で実践している比嘉清です。 うちなあぐちへは散文から入るのも一つの手です。沖縄の団塊世代は日本語を学ぶのに100%近くが小学校の教科書から入りました。大きくなって発音の違いに苦労しましたが、長い目でみれば、今は文章から入ってよかったと思っています。

2014年08月

うちなあぐち

① 一方(ちゅかた)あやるっ人(ちゅ)お、かわてぃ肝(ちむまゆ)迷(まよ)いしい易(や)っさん。
② あぬっ人(ちゅ)お、むぬゆまってぃん、わじららあい、実(じゅん)に、肝広(ちむびる)さん
③ いいくる、いびらあや肝(ちむ)ぬ狭(しば)さん
④ あっ達(たあ)とう腹一(はらてぃい)ちやる事(くと)お、でえじな肝強(ちむじゅう)さっさあ。
⑤ 腸(わた)ぬ手入(てぃいい)りする事(くとぅ)んかいや肝(ちむ)ぬ乗(ぬ)りらん
⑥ 諸(むる)、晴(は)るみたれえ、肝(ちむ)ぬさあざあとぅなたん

日本語

① 一途な人は、特に心が迷い易い。
② あの人はとやかく言われても怒らないし、本当に、心が広い
③ だいたいケチな人は心が狭い。
④ 彼らと同胞であるという事は、とても心強いな。
⑤ お腹の手術をする事については気が進まない
⑥ 全てを釈明したら、心が清々した


【解説】
 今回の「肝語」は特に、他の語句と組み合わさって別のニュアンスに転じるという事がなく、比較的、分かり易いものです。

例文①「肝迷い」は文字通り「心の迷い」です。「一方あ」は筆者の当て字です。「凝り性の者」という意味もあります。
例文②「肝広さん」は文字通り「心が広い」の意味です。「むぬゆまりゆん」の「むぬ」は「物」ですが、ここでは悪意味での「噂」又「悪評」等です。「ゆまりゆん」は「読まれる」と関係ある語ですが、ここでは「言われる」の意味です。
例文③場所的に「狭い」意味には「いいばさん」ですが、「肝」「心」についてはこの「しばさん」を使います。
例文④「肝強さん」は「心強い」、「頼もしい」等の意味があります。
例文⑥「手入り」は花壇・田畑等の手入れに加え「外科的な手術」にも言います。特に切開手術をする事には「割ゆん」と言います。
例文⑦「さあざあとぅなゆん」の「さあざあとぅ」は「さっぱりと」を意味する副詞で、「さあざあとぅなゆん」で「さっぱりする」の意味となります。

【応用問題】
 次の文を太字部分の意味に近い語句を例文を参考に言い換えなさい。
① 今(なま)ぬ先生(しんしい)やとぅうかあん無(ね)えん人(ちゅ)やくとぅ、肝上(ちむゐい)やん
② 世界(しけ)ぬ御万人(うまんちゅ)が諸、肝(ちむ)ぬ延(ぬ)びぬあれえ、戦(いくさ)あ起(う)くらん。
③ 決わみたる事お、とぅぬうまぬう(註2)んさんようい、しわ。
④ 大和(やまとぅ)勤(ぢみ)ん無事(ぶじ)とぅずまてぃ、さっぱちな心地(くくち)なとおん。
しい欲しゃあ無えんたる参会ぬくんでぃてぃ、うみなあくなとおん。

答え:
① 肝強さん
② 肝広さあれえ。
③ 肝迷い。
④ 肝ぬさあざあとぅ。
⑤ 肝ぬ乗りらんたる。

日本語意訳:
①今の先生は分け隔てのない人だから心強い。
②世界の人々の皆が心が広ければ戦争は起きない。
③決めた事は迷わず実行せよ。
④本土勤務も無事に終え壮快な気分だ。
⑤気が進まなかった宴会が中止になりほっとしている。

註:「肝に関する慣用句・言い回し」は本講で終わります。多くは『沖縄語辞典』にありますが「肝ぬ暮ゆん」等無いのもあります。常識的に分かる句は紹介していません。今後、創作活動等を通して造語句が生まれる事を期待しましょう。
註2:「とぅぬうまぬう」は「戸惑う」「判断に迷う」等の意味があります。『沖縄語辞典』にはありません。

うちなあぐち

付(ち)ち肝(じむ)ぬ愛(かな)しゃぬありわる親子(をぅやっくぁ)やる。
② あっ達(たあ)や我(わ)っ達(たあ)んかい、さっこう悪(や)な肝(ちむ)持(む)っちょおん。
③ 彼(あり)が真肝(まじむ、まあじむ)やくとぅどぅ、一(ちゅ)まなやびたる。
④ あぬっ人(ちゅ)お選(いら)ばってぃんうせえらん、肝変(ちむが)わい者(むん)やん。
⑤ 年取(とぅしとぅ)いねえ、なあ肝(ちむ)ぬ暇(ふぃま、ひま)んありわるやしが…。
肝(ちむ)さあさあそおるばすお、落(う)てぃ着(ち)ち考(かんげ)えり。
⑦ 若(わか)さるさら万(ばん)事(じ)え、肝(ちむ)さくさんあくとぅ、良(ゆ)う言(い)い入(い)らんでえならん。

日本語

愛しく思う心があるからこそ親子なのである。
② 彼らは、我々に対してとても悪意を抱いている。
③ 彼が正直者だからこそ一緒になったのです。
④ あの人は当選しても威張らず、心掛けが違う人だ。
⑤ 年取ればもう心配事がない方がよいのだけど…。
気が高ぶっているときは、落ち着いて考えよ。
⑦ 思春期は心が折れ易いので、よくよく言い聞かせてやらねばならない。


【解説】「肝語」を構成する各語の意味が分かれば、句の慣用的な想像できる場合もあれば、別の意味合いを持つ事があります。

例文① 「付ち肝ぬ愛しゃ」とは例えば、「母親を恋しがる子の心」や「祖母に懐く孫の心」等を表します。
例文② 「悪な肝」は「悪肝」とも当てます。「嫌な心」や「厭らしい悪意」等のニュアンスがあるので、私の初期の散文作品は多く「嫌」を当てています。
例文③ 「真肝」は「正直者」の他には「真面目」等のニュアンスもあります。「一緒になる事」の意味では「一(ちゅ)ま」は『沖縄語辞典』にはありません。
例文④ 「肝変わい者」又「肝変わいい者」は普通は好い意味で用います。
例文⑤ 「肝ぬ暇」は「考える事が無くなった事」では誤解を招きますので、「心のゆとり」や例文通りの解釈がよいでしょう。
例文⑥ 「肝さあさあ」は「気が高ぶって落ち着きが無い様子」を表します。
例文⑦ 「肝さくさん」は「肝」と「脆い」や「壊れ易い」等を意味する「さくさん」からなる句です。

【応用問題】】次文の太字の語や句に近い意味を持つ語句を例文の語から選びなさい。答えは下欄です

① 人(ちゅ)んかいぬ愛想(ええそう)や犬(いん)ぬるまんどおる筈(はじ)。
② あっ達(たあ)や何(ぬう)ぬ世話事(心配事)(しわぐとぅ)ん無(ね)えらんでぃぬ事(くとぅ)やん。
悪(や)なだくまやれえ直(し)ぐに分(わ)かゆくとぅ、如何(ちゃあ)ん無(ね)えん。
怖(うとぅる)さ思(うみ)いやくとぅ、あぬ女童(ゐなぐわらび)えはんてぃ事(ぐと)おさん。
⑤ 彼(あり)がまっとうばやんでぃぬ話(はなし)えはごうりいむんやん。

答え:
① 付ち肝ぬ愛しゃ。
② 肝ぬ余いぬあん。
③ 悪な肝。
④ 肝さくとぅ。
⑤ 真肝。

日本語意訳:
①人へ懐く心は犬の方がより勝っているだろう。
②彼らは何の心配事の無いとの事です。
③悪巧みなら直ぐにばれるからどうって事ない。
④怖がりだからあの娘は冒険はしない。
⑤彼が真っ当であるという話は大袈裟である。

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