比嘉清の文でおぼえるうちなあぐち

聴ち美らさ 語い美らさ 書ち美らさ 御万人ぬうちなあぐち

はいさい、ぐすうよう。いめんせえびり。 うちなあぐちの散文を丁寧文で実践している比嘉清です。 うちなあぐちへは散文から入るのも一つの手です。沖縄の団塊世代は日本語を学ぶのに100%近くが小学校の教科書から入りました。大きくなって発音の違いに苦労しましたが、長い目でみれば、今は文章から入ってよかったと思っています。

2015年03月

うちなあぐち

大道(うふみち)ぬっ人(ちゅ)んかいんやてぃん人勝(ちゅまさ)い者(むん)ぬ居(をぅ)るむぬやん。
人(ちゅ)ぬ口(くち)ぬ良(ゆ)たされえ、人ぬ付(ち)ちゅん
人抜(ちゅぬ)じ者(むん)ぬん人(ちゅ)滅(ふる)ぶさあん、人(ちょ)おあらん
④ 彼(あり)え(・)人(ちゅ)あな者(むん)どぅやしが、人ばっぺえやあらに。
人(ちゅ)かまらさあや、人肌(ちゅはだだ)ぬ良(ゆ)たさん分からん。
人通(ちゅどぅう)いんかい行(ん)じゃれえ、人ぬまんでぃ人(ちゅ)酔(ゐ)いさん
⑦ 実(じゅん)に人(ちゅ)敬(うやめ)えするっ人お、人(ちゅ)うせえ物言(むに)いやさん。
⑧ 彼(あり)え、人嬉(ちゅうり)っさぎさくとう人馴(ちゅな)りしい易(や)っさぎさん。
人肝(ちゅちむ)ぐりさする心(くくる)ぬありわる人助(ちゅだし)きんなゆる。
人侭(ちゅまま)に生(ゐ)い立(た)ちいねえ、人並(ちゅな)みんかいや、ない難(ぐり)さん。

日本語

行きずりの人にも人に勝る者がいるものである。
評判がよければ、人が寄ってくる(人気があがる)
詐欺師借金を踏み倒す者も、人でなしである
④ 彼は他人なのだけど、人違いではないのか。
人間嫌いは、人肌ぬ温もりの良さを知らない
人通りに行ったら人が多くて人いきれに酔った
⑦ 真に人を敬う人人をばかにした言い方をしない。
⑧ 彼は愛想が良さそうなので人馴れし易そう。
慈愛の心があってこそ人助けもできる。
人の言いなりで育つと一人前にはなり難い。


【解説】
例文①「大道ぬっ人」は「道行く人」、「赤の他人」等の意味。「人勝い」は「人に勝っている事」。
例文②「人ぬ口」は「噂」「世間の評判」等。「人ぬ付ちゅん」は「人気が上がり人が寄り付いてくる」の意味。
例文③「人抜じ者」は「人抜じゃあ」とも。「人滅ぶさあ」は「借金を踏み倒す者」。「人おあらん」の「あらん」は「やん(である)」の否定形で「人で無し」の意味。
例文④「人あな者」は「他人」。
例文⑤「人あな者」は「他人」。「人ばっぺえ」は「人違い」。「ばっぺえゆん」は「間違う」。
例文⑥「人かまらさあ」は「人を煩がる人」。「かまらさん」は「気難しい」。「人肌」は「肌の温もり」。
例文⑦「人敬え」は「人を敬う事」。「人うせえ」は「人を馬鹿にする事又者」。「うせえゆん」は「侮る」、「軽蔑する」。
例文⑧「人嬉っさぎさん」は「(人が)愛想が良さそう」。「嬉っさん」は「嬉しい」。「人馴り」は「人に馴れる事」。
例文⑨「人肝ぐりさ」は「人を憐れ慈しむ事」。「人助き」は文字通り「人助け」。
例文⑩「人儘」は「人の言いなりになる事」。「人並み」は文字通り「人並み」、「世間並み」。
   
【応用問題】
 例文等を参考に、次の文中の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。答えは下欄です。
(人ぬ口、人抜じゃあ、人侭になとおる人、人かまらさあ、人嬉さぎさん)

大(うふ)やしいや、また、いっぺえ、えんださんあん。
人(ちゅ)好(し)かぬうんかい行逢(いちゃ)いねえ、取(とぅ)いん覚(うび)ららん筈(はじ)。
③ 社会(しけ)ぬ大人(うふっちゅ)ぬ主立(うむだ)ちゅる人ん達(ちゃあ)んかいや、人騙(ちゅだま)さあや居(をぅ)らん。
④ 大道(うふみち)んじえ、大概(てえげえ)ぬ人ん達や表向ちえ、愛想(ええそう)持(む)ちやん。
人(ちゅ)ぬ口唇(くちしば)あ恐(うとぅ)るしむん、一(ちゅ)けん広(ふぃる、ひる)がいねえ、なあ鎮(しじ)みららん。

答え:
① 人侭になとおる人。
② 人かまらさあ。
③ 人抜じゃあ。
④ 人嬉さぎさん。
⑤ 人ぬ口。

日本語意訳
①お人良しは、又大いに大人しくもある。
②人間嫌いに遭遇した時はどうしていいか分からないだろう。
③社会人の主な人々に詐欺師はいない。
④表通りでは大体の人は表向きは愛想が良い。
⑤世間の評判は恐ろしいもの、一度広まれば、もう沈静化できない。


「人」は文語では「ふぃとぅ」(前講参考)ですが、北部や先島では「ぴとぅです。H音の古い音がP音で、中韓がF音と言われていますもっとも広い範囲に普及しちる那覇語は殆どH音です。「ふぃとぅ」の「ふぃ」はF音で中間音は首里語音の特徴の一つです。
 また、口語の「ちゅ」が『沖縄語辞典』でQcu(っちゅ)となっているのは、「ふぃ」が促音化したものとも思われますが、前講で述べたように、促音は前後音の組み合わせて、あるいは、音節の組み合わせで、特に協調的に張りは強い破裂音的に自然にな変形(促音化)して発生するものであって、特に語頭が固有的に促音になっているものでないい考えます。
以上

うちなあぐち

人(ちゅ)てぃむぬお、右往(てぃおう)左往(さおう)するむぬやん。
人(ちゅ)ぬ言(ゆ)しん聞(ち)きわる人間(にんじん)やる。
人先(ちゅさち)ならんでぃすぬっ人(ちゅ)お人後(ちゅあとぅ)なゆし、ましえさん。
人変(ちゅが)わいい者(むん)や、人(ちゅ)びれえやさんあい、人事(ちゅぐとぅ)んさん。
人離(ちゅばな)りんじえ、人足(ちゅあし)ん切(ち)りとおん。
人(ちゅ)ぬしむち(性持ち?)え、人(ちゅ)かじ変(か)わゆん。
人(ちゅ)怖(う)じする者(むぬ)のお人音(ちゅうとぅ)聞(ち)ちん色(いる)しゅもうしゅなゆん。

日本語

人間たるもの、うろたえ騒ぐものである。
の言う事も聞いてこそ人間である。
人に先んじようとする者は人に遅れる事を嫌がる。
変人(偉人)他人との交際はしないし、他人の悪口もしない。
人里離れた所では、人の往来も途絶えている。
人の性格人によって、それぞれ異なる
人見知りする人は人の気配を感じただけで青ざめる。

 
【解説】
 「人」は口語では「ちゅ」(文語「ふぃとぅ」は次講参考)。「っちゅ」の表記も見受けられますが『沖縄語辞典』(主には首里語の発音辞典)における表記Qcuをひらがなに「逆転換」した表記と思われます。「一(ちゅ)」等、似たような語音・語句との差を明確にする必要か或いは前後の抑揚関係から、強調音は或いは強い破裂音のように語頭部分に促音が入る頻度が多いだけで、「人」の固有音として語頭が促音となるわけではないと筆者は考ええいます。
 「うちなあん人(ちゅ)」や「此処ぬ人(ちゅ)ん達」等の場合は「人」の語頭促音はありません。同様に『沖縄語辞典』でQkaと記されている「子」の場合も「あまぬ子(くぁ)ん達(ちゃあ)」、「思(うみ)ん子(ぐぁ)」等の場合は語頭促音はありません。また。日本語において「江戸っ子」、「憎まれっ子」、「いたずらっ子」等の例もありますが、促音「っ」は他のの語との組み合わせで発生するものであって、「子」が固有的に独自的も持つものではないのです。特にK音、T音、S音の一音節語音の語は語頭に促音を発生させやすいかも知れません。例:真っ赤、真っ白、そっと、あっと。

例文①ここでの「人」は「本人」以外の「人」であり、場合によっては話し手自身です。
例文②ここでの「人」は抽象的に「人間」です。
例文③「人先」は「人に先になる事」、「人後」は「人に遅れる事」の意味です。
例文④「人変わい者」は「変わり者」又「非凡な人」。「人びれえ」は「人との付き合い」。「人事」は「交際」又「人の悪口」の意味です。
例文⑤「人離り」は「人里から離れた所」の意味です。
例文⑥「人ぬしむち」は「人の性格」。「人かじ」は「人毎に」の意味です。「人かあじ」も同じです。
例文⑦「人怖じ」は日本語に同じく「人怖じ」に加え、「人見知り」の意味もあります。「人音」は「人の気配」の意味。
  

【応用問題】
 例文等を参考に、次の文中の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。答えは下欄です。
(人変わいい者、人先、人かじ、人びれえ、人後)

① うぐちぬあるっ人(ちゅ)お、ちゃあ人前(ちゅめえ)ならんでぃすん。
② 戦(いくさ)あ耄(ふ)り者(むん)ぬ始(はじ)みてぃ、うり措(う)ちゅしえ優(すぐ)り者(むん)ぬんしいぐりさん。
③ うんじゅおにっかにどぅ来(ち)ょおるむぬ、うせえらんてぃん済(し)むん。
④ 念掛(にんが)き(け)え、諸(むる)、人(ちゅ)にゆてぃ、変(か)わゆしえ、当(あ)たい前(めえ)どぅやる。
⑤ 人(ちゅ)お、ふぃれえぐとぅんしわる、楽(たぬ)しみんなゆる。

答え:
① 人先。
② 人変わいい者。
③ 人後。
④ 人かじ。
⑤ 人びれえ。

日本語意訳
①積極的な人はいつも人に先んじようとする。
②戦争は愚か者が始め、それを終わらすのは偉人でも難しい。
③あなたは遅刻して来たのだから、威張らなくよい。
④志が人によって異なるのは当然だ。
⑤人は交際もしてこそ楽しむ事もできる。

うちなあぐち

① 今日(ちゅう)や物種(むんちゃに)蒔(ま)ちゅんでぃち手足(てぃいふぃさ、てぃいひさ)倒(どお)りなとおさ。
② 揃(すり)いまんどおしいねえ、物入(むぬい)りぬ強(ちゅう)さぬ防(ふし)がらん。
③ 年取(とぅしとぅい)いねえ物覚(むぬうび)いや悪(わ)っさなゆい、物忘(むぬわし)ん強くなゆん。
④ うり手(てぃい)から放(はな)すんでえ、汝(やあ)や物(むぬ)あたらさん知(し)らん。
物(むぬ)食(くぇ)え婿(むうく)お、ましやあ、親(をぅや)ぬ家(やあ)んじ大切(てえしち)にさってぃ。
⑥ 自(どぅう)ぬ考(かんげ)え、けえ悟(さとぅ)らってぃ物含(むぬく)く叫(あ)びいどぅそおる。
⑦ 諸(むる)なかい、物笑(むぬわれ)えさってぃ、面小(ちらぐぁあ)なたん。。
⑧ 童(わらび)え物(むぬ)怖(う)じんさんようい、目(みい)青光(おおびちぇ)えそおんたん。
⑨ 泡盛(ああむい)やうちなあ物(むん)とぅしち、名(なあ)ゆるむんやん。

日本語

① 今日は作物の種蒔きをするんだと、てんてこまいなっているよ。
② 会合が多いと、経費が嵩み、大変だ。
③ 年を取れば物覚えは悪くなるし、物忘れもひどくなる。
④ それを手放すとは、君は物の大事さを理解してない。
持て成され婿は良いなあ、嫁の実家で大事にされて。
⑥ 自分の考えを感付かれて、もぐもぐ喋りするのみである。
⑦ 皆に嘲笑されて、顔があがらなかった。
⑧ 子供は物怖じもせず、黙って睨んでいた。
⑨ 泡盛は沖縄産として、有名な品である。

 
【解説】
 「物」に関する慣用句等は他にもありますが、通常の知識で理解できるものは略します。

文例①「物種」は「作物の種」の意。「手足倒り」は「手足が倒れるほどばたばたする事」。
文例②「物入り」は「物入り目」(出費)の略。「揃い」は「会合・集会」等。「-まんどお」は「まんどおん」(たくさんある)から派生語で「(-が)たくさんある様子」を表します。
文例③「物忘」は日本語と同じく「物忘れ」。
文例④「物あたらさ」の「あたらさ」は「大切がる事」。首里語系は「あたらしゃ」。
文例⑤「物食え婿」は「嫁の実家で御馳走になってばかりいる婿」の事。
文例⑥「物含ん叫びい」は「口に食べ物を含んで言う事」つまり「含み声」の事。
文例⑦「物笑え」は日本語と同じく「物笑い」また「嘲笑」の意。
文例⑧「物怖じ」は日本語と同じく「物事を怖れる事」。
文例⑨「-物」は「-産」、「-製」の意味。およそですが、農産物なら「-産」、加工品等の場合は「-製」と使い分けます。
  
【応用問題】
 例文等を参考に、次の文中の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。答えは下欄です。
(物あたらさ、物いり、物怖じし、物笑えさってぃん、物含く叫びい)

① 童(わらび)え大(ま)ぎ犬(いん)、見(ん)ち怖(う)じやあに、てぃんさま返(けえ)りたん。
物大切(むぬてえしち)にする天数(てぃんすう)、かみてぃ生(ん)まりとおんでぃ褒(ふ)みらったん。
多(うふ)くぬ入(い)り目(み)え、銭(じん)だありとお別(びち)やんでぃ賺(しか)しいまあしいさん。
④ 皆(んな)んかい笑(わら)あってぃん、うぬあたいや、如何(ちゃあ)ん無(ね)えらんさ。
⑤ 父(すう)や銭(じん)、かじみふかち、叫(あ)びららん叫びいけえそおん。

答え:
① 物怖じし。
② 物あたらさ。
③ 物入り(目)。
④ 物笑えさってぃん。
⑤ 物含く叫びい。

日本語意訳
①子供は怖気づいて、ひどく喚き散らした。
②物を大事にする運命を背負って生まれていると褒められた。
③出費の嵩みは無駄遣いとは別だと、宥め賺してやった。
④皆に嘲笑されても、それぐらいは、どうって事ないさ。
⑤父は金の隠し所が分からなくなって、含み声を出すしかなかった。

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