比嘉清の文でおぼえるうちなあぐち

聴ち美らさ 語い美らさ 書ち美らさ 御万人ぬうちなあぐち

はいさい、ぐすうよう。いめんせえびり。 うちなあぐちの散文を丁寧文で実践している比嘉清です。 うちなあぐちへは散文から入るのも一つの手です。沖縄の団塊世代は日本語を学ぶのに100%近くが小学校の教科書から入りました。大きくなって発音の違いに苦労しましたが、長い目でみれば、今は文章から入ってよかったと思っています。

2015年12月

うちなあぐち

手(てぃい)ぶらありやたしが、子(くぁ)ぬ手(てぃい)ぬ生(み)いてぃ来(ち)、楽(らく)やん。
手下(てぃいしちゃ)んかいんやらわん、手喰(てぃいくぁあ)あ足喰(ふぃさくぁ)あすしえあらん。
手上(てぃゐい)やるっ人(ちゅ)、手(てぃい)うせえいし、手(てぃい)ねえてえならん。
手(てぃ)早(べえ)さてぃん、手(てぃい)鈍(にい)さてぃん、手荒(てぃいあら)くお、さんけえ。
手足(てぃいふぃさ)倒(どお)りそおくとぅ手分(てぃわ)きさあに手(てぃ)がねえし取(とぅ)らし。
切(てぃいち)り包丁(ぼうちゅう)そおたしが、手油出(てぃいあんだん)じゃち如何(ちゃあ)がななたん。
⑦ 明日(あちゃ)ぬ事(くとぅ)なかい、手(てぃい)まあまあし、手(てぃい)上(かみ)とおん
手仕事(てぃいしぐとぅ)んでぃる思(うむ)とおたるむぬ手乱(てぃいんじゃ)り仕事(しぐとぅ)どぅやる。

日本語

手不足だったが、子が働けるようになってきて楽だ。
身分の低い者に対してでも、喰ってかかるものではない。
手腕が勝る者甘くみて手を出してはいけない。
仕事が早くても遅くても、手荒くはするな。
てんてこまいしているから手分けし手伝いしてくれ。
料理材料が少なかったが、念入りにして何とかなった。
⑦ 明日の事で準備不足でうろたえ頭をかかえている
簡単な手先仕事だと思っていのに、手を煩わす仕事だ。
 
【解説】「手紙(てぃがみ)」、「手掛(てぃがか)かい」、「手助(てぃだし)き」、「手柄(てぅがら)」、「手心(てぃぐくる)」、「手並(てぃな)み」、「手真似(てぃまに)」、「手間賃(てぃまちん)」等、日本語遣いにほぼ同じ語句や「相手(ええてぃ)」、「勝手(かってぃ)」、「番手(ばんてぃ)(番人)」等のように単に単語の一部と思われる語については省略させていだきます。

文例①「手ぶらあり」は「手不足(てぃいぶすく)」とも言います。「手ぬ生いゆん」は「子供が大きくなって働けるようになる」意味。
文例②「手下」は「手下(てした)」からの転意で自分より下の者」。「手喰あ足喰あすん」は「いちいち食ってかかる」。
文例③「手上」は「自分より腕が上である事」。「手うせえい」は「相手も見縊る事」。「うせえゆん」は「あなどる、馬鹿にする」の意味。「手ねえゆん」は単に「手を差し出す」意味の他、「手を出す、殴る」の意味にもなります。
文例④「手早さん」は「手が早い」の他、「仕事が早い」、「短気で直ぐ手を出す」等で、「手鈍いさん」は「手が遅い」、「仕事が遅い」等の意味です。「手荒さん」は「やる事が荒っぽい」の意味です。
文例⑤「手足倒り」は「手足が倒れるほど忙しい様」。「手がねえ」は「手助け、手伝い」の意味。
例文⑥「手切り包丁」は「手さえ切りそうなほど材料が少なく調理に苦労する事」。「手油」は「念入りに料理する」。
例文⑦「手まあまあ」は「手が空回りする様」であり、準備不足等で「うろたえる様」。「手上ゆん」は「(苦悩して)手て頭を抱え込む」意味。「かみゆん」は「頭に物を乗せる」、「(闘牛等において角で)突き上げる」、「頂く」等の意味。
例文⑧「手仕事」は「手先で出来る簡単な仕事」。「手乱り」は「手を汚すような仕事」。

【応用問題】
例文・解説文を参考に次文の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。
(手がねえ、手仕事、手早く、手まあまあそおた、手喰あ足喰あ、手早さくとぅ)

胴(どぅう)易(やし)い仕事(しぐとぅ)お、とぅめえいぐりむぬやさ。
② 萩倒(ううじとお)しぬばあや、加勢(かしい)しいが、行(い)かんでえならん。
支度(したく)んしえ居(をぅ)らな慌(あわ)てぃとおたしが、さあらないさん。
④ 短気(たんちゃ)あや、直(し)ぐ手(てぃい)ねえゆくとぅ、心得(くくるい)り。
⑤ いちゃんだん、くじい物言(むに)いさってぃ、手上(てぃいかみ)たん。
答え:
① 手仕事。
② 手がねえ。
③ 手まあまあそおた、手早く。
④ 手早さくとぅ。
⑤ 手喰あ足喰あ。

日本語訳
①簡単な仕事は、探し難いものだよ。
②砂糖黍の収穫の際は手伝いに行かなければならない。
③準備もせず、慌てていたが、手早く済ませた。
④短気者は手が早いから気を付けて。
⑤何でもないのに、批難されて頭を抱えた。

うちなあぐち

腰掛(くしが)きとおたる親(うや)ん居(をぅ)らんなてぃ、腰(くし)弱(よお)くなとおん。
腰骨(くしぶに)ぬ痛(や)むれえ、腰剥(くしは)じい、せえわ腰叩(くしたた)ちし取(とぅ)らさ。、
③ 彼(あり)え後(くし)(腰)引ち者(むん)なてぃどぅ、後(くし)なてぃ立(た)っちょおる筈(はじ)。
④ 今(なま)ぬ世(ゆう)や、腰(くし)冷(ふぃず)らする事件(いっちん、じきん)ぬまんでぃ大事(でえじ)やん。
腰当(くしゃ)てぃ方(かた)ぬ頑丈(がんじゅう)くとぅ、何(ぬう)ぬ心配(しわ)ん無(ね)えやびらん。
⑥ 御主前(うしゅめえ)や腰力(くしでえ)ぬ弱(よお)さくとぅ腰擦(くしし)てぃうさぎれえ。
銭腰掛(じんくしが)きしいねえ、後お銭(じん)なかいうっちぇえらりいん。
後(くさ)あ持(む)ち反(す)りとおたれえ、後(くさ)あうっちぇえてぃねえらん。

日本語

頼りにしていた親もいなくなり、心細くなっている。
背骨が痛いのなら上半身脱いでよ按摩をしてあげよう。
③ 彼は面汚し者だから、顔を背けて立っているのだろう。
④ 今の世の中は、背筋も凍るような事件が多くて大変だ。
⑤ 後ろ楯がしっかりしているから、何の心配も要りません。
⑥ お爺さんは腰が弱いから背中を流してさしあげなさい。
お金を鼻にかけると、いずれ、お金に裏切られる。
後に反り返っていたら、後ろにひっくり返ってしまった。

【解説】
「くし」には「腰(くし)」と「後(くし)」(卑語は「くさあ、くしゃあ」)の意味があります。「背中全体」や「背面」(「後方」)をも表わします。本書では文脈によって「後(くし)」と当てる場合もあります。「腰憩(くしゆっくぃい、くしゅっくぃい)」(農繁期の終わりに行う骨休みの行事)、「腰(くし)じゃあ」(機織器具の一つ)等は省きます。なお、「腰のくびれ」の部分は特に「がまく」と言います。

例文①「腰掛き」は「頼みにする事」の意味の他、転じて例文⑦のように「威を借りる」、「かさに着る」にもなります。「腰弱さん」は「心細い」。
例文②「腰骨」は「ながに骨(ぶに)」ともいいます。「腰剥じい」は「腰剥じゆん」の名詞で、「上半身脱ぎ」の意味です。「腰叩ち」は「腰叩ちゅん」の名詞で「腰叩き」、「按摩」の意味となります。
例文③「後引ちゅん」は「名を汚す」、「面汚しをする」という意味「後引ち」はその行為。「後引ち者」はそれをする者。
例文④「腰冷らすん」は「ぞっとする」、「背筋が凍る」等の意味です。
例文⑤「腰当てぃ」は「腰当て」つまり「寄りかかるもの」の意味から「背にするもの」。「後ろ楯」ひいては「根拠」の意味。「腰当てぃすん」は「頼りにする」、「根拠にする」等の意味。特に「腰当てぃ方」は「嫁ぎ先」の意味。
例文⑥「腰力」は「腰の力」の意味の他、「頼みとするもの(の力)」の意味もあります。「腰擦ゆん」は「背中を流す」。
例文⑦「腰掛きゆん」は例文①の通り。「銭腰掛きゆん」は「金を鼻にかける」等の意味になります。
例文⑧「後あ持ち反りゆん」は「後に反る」。「うっちぇえゆん」は「裏返る、ひっくり返る」。転じて「仰天する」の意。

【応用問題】
例文・解説文を参考に次文の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。
(腰剥じてぃ、腰引ちいねえ、腰当てぃん無(ね)えらなそおてぃ、腰力やたるっ人、腰冷らちゃん、腰弱さぬ)

短(いん)ちゃ棒(ぼう)持(む)っち、長(なが)追(うう)いしいねえ、笑(わら)ありいん。
② 親(うや)ぬ面汚(ちらゆぐ)し、しいねえ、後(あと)お汝(いゃあ)がる恥(は)じさ思(うみ)いやする。
頼(たゆ)とおたるっ人(ちゅ)ん、何(ぬう)ん分(わ)からんあい、肝暗(ちむぐら)さぬならん。
④ あったに、やまししんかい、はっちゃかてぃ、魂(たまし)脱(ぬ)ぎたん
⑤ 汗走(あしは)い仕事(しくち)え、上衣(うゎあじん)剥(は)じてぃ、すし(せ)まし。
答え:
① 腰当てぃん無えらなそおてぃ。
② 腰引ちいねえ。
③ (上)腰力やたるっ人、(下)腰弱さぬ。
④ 腰冷らちゃん。
⑤ 腰剥じてぃ。

日本語訳
①根拠もなく深追いすれば、笑われる。
②親の面汚しをすれば、何れは君が恥ずかしい思いをするのだ。
③頼っていた人も何も知らないし心細い。
④急に猪に出くわし、ぎょっとした。
⑤汗かき仕事は上着を脱いでした方がよい。

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