比嘉清の文でおぼえるうちなあぐち

聴ち美らさ 語い美らさ 書ち美らさ 御万人ぬうちなあぐち

はいさい、ぐすうよう。いめんせえびり。 うちなあぐちの散文を丁寧文で実践している比嘉清です。 うちなあぐちへは散文から入るのも一つの手です。沖縄の団塊世代は日本語を学ぶのに100%近くが小学校の教科書から入りました。大きくなって発音の違いに苦労しましたが、長い目でみれば、今は文章から入ってよかったと思っています。

2016年03月

うちなあぐち

① ちゃあ、腸(わた)ぬ満(みい)、物食(むぬjか)でぃ、腸(わた)ぬ、けえ、ねえとおさ。
② 人(ちゅ)ぬ腸(わた)あ探(さぐ)らんぐうとぅう、腸々(わたわた)あとぅ話(はなし)どぅする。
③ 彼(あり)んかい腸(わた)くじ物言(むに)いけえし、腸(わた)ぐりさぬならん
④ 人(ちゅ)ぬ腸(わた)くじいねえ、後(あと)お、自(どぅう)ぬ腸(わた)ぬる、むげえゆんどお。
腸力(わたでえ)ぬあし、食(か)だくとぅ、なあだ、腸減(わたび)ないんさん。
空(ん)な腸(わた)どぅやたしが、ちゅふぁら食(か)でぃ、腸多(わたうふ)さん
⑦ 食(か)でぃ直(ちゃあき)き、長(なが)這(ぼ)おいしいねえ、腸(わた)ぬかみらりゆん
腸半(わたなか)ら食(か)むしん、良(い)い物(むん)、悪(や)な物(むん)どぅやる。

日本語

① いつも、腹一杯、食って、お腹が出てしまったよ。
② 他人の腹を探ろうとせず、親しく話をすべきである。
③ 彼に怒らせるような事を言ってしまい、後悔している
④ 他人を怒らすような言動をすれば、いずれは、自分の腹の方が煮えくりかえる事になるぞ。
腹持ちの良いのを食べたから、まだ腹は減ってない。
空きっ腹だったのだけど、沢山食べて、腹一杯なった
⑦ 食べて直ぐ、寝そべると、腹が突き上げられる様に痛い
腹半ば食べるのも、良し悪しが半々である。

【解説】
「腸」の慣用的な使い方は、姉妹語である日本語に比べると、実に独特で面白いです。

例文①「腸ぬ満」は「腹一杯」。「満」は私の当て字なので要注意。「腸{ぬ}ねえゆん」は「腹が出る」。
例文②「腸探ゆん(腸探いん)」は文字通り「腹(他人の考え)を探る」。「腸々あとぅ」は「親しく」の意味。
例文③「腸くじ物言い」は「(相手を)怒らすような物言い方」で④の名詞形。「腸ぐりさん」は「腹苦さん」とも表記される事もあります。「腹に応えるほど後悔する」という意味。
例文④「腸くじゆん」は「(相手の)腹を抉るような不快又は怒らすような言動をする事」。「腸ぬむげえりゆん」は「腸が煮えくり返る」。「むげえゆん」は「湯が沸騰、または食べ物がぐつぐぐつと煮える」の意味。
例文⑤「腸でえ」は「腹持ち」。「腸でえぬあん」で「腹持ちが良い」。「腸減ない」は「腸が減る事」。
例文⑥「空な腸」は「空きっ腹」。「腸多(わたうふさん)さん」は「わたふさん」。「わたうふぃさん」とも言い、「腹一杯」の意味。
例文⑦「かみゆん」は「上に乗せる」。「腸ぬかみらりゆん」は「突き上げられる(ように痛む)」。逆流性食道炎の類?
例文⑧「腸半ら」は「腹半分(食べる事)」で「中ら腸」とも言います。

【応用問題】
 例文・解説文を参考に次文の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。
(腸ぐりさん、腸ぬむげえりとおん、腸くじゆん、腸々あとぅ、空な腸やるばす)

① 友(どぅし)とお、愛々(かながな)あとぅ、ふぃれえらんでえ、ならん。
② 彼(あり)んかい、悪(や)な事(くとぅ)けえ言(い)ち、自腹痛(どぅうはらや)まちょおん
わちゃこおげえじ、叫(あ)びらりいねえ、うむこお無(ね)えらん。
やあさるばすお、何(ぬう)やてぃん、美味(まあ)さん。
⑤ 仕事(しくち)ぬ事(くとぅ)なかい、ぬらあってぃ、わじわじいそおん
答え:
① 腸々あとぅ。
② 腸ぐりさん。
③ 腸くじらりいねえ。
④ 空な腸やるばす。
⑤ 腸(わた)ぬむげえりとおん。

日本語意訳
①友だちとは、親しく付き合わないといけない。
②彼に嫌な事を言ってしまい、後悔している。
③あてつけがましく、言われると面白くない。
④腹が減ったときは何でも美味しい。
⑤仕事の事で、怒られ腹立たしい。

うちなあぐち

歩(あ)っち足(びしゃ)あ猫(まやあ)やてぃん、足車(あしぐるま)入(い)てえならん。
② 客(ちゃく)ぬめえせえるばすお、高足(やかびしゃ)遣(じけ)えさんでえならん。
③ あんし忙(いちゅな)しばあに、足畳(ふぃさたく)でぃ座(い)ち、何(ぬう)ぬ積合(ちむええ)やが。
足跡(ふぃさかた)見(んん)じいねえ、足弱(ふぃさよう)やる事迄分(くとぅまでぃわ)かゆん。
⑤ 靴(ふや)あ足(ふぃさ)ぬ腸(わた)んかいん足(ふぃさ)なあんかいん合(あ)たゆし(せ)えまし。
足(あし)まるびし、痛(や)まちぇえる足(ふぃさ)あ、足(ふぃさ)擦(し)り擦りしん治(のお)らん。
⑦ 年寄(とぅす)ぬ、けえ寝(に)んじいねえ、足力(ふぃさじから)ぬ無(ね)えんなゆん。
足(あし)まるび手(てぃい)まるびし、走合(はあええ)ないねえ、どぅ返(げえ)ゆんどお。

日本語

外出癖のある猫でも足枷をはめてはいけない。
② お客様がいらっしゃる時は、気遣いしなければならい。
③ こんな忙しい時に何もしないでいるとは何の積もりだ。
足跡をみれば、足が弱いという事迄、分かる。
⑤ 靴は足の裏にも、足の甲にも合うものがよい。
足を滑らして痛めた足は、足擦りしても治らない。
⑦ 年寄りが寝込んだら、足力がなくなる。
慌てふためいて、走ると、転ぶよ。

【解説】
文例①「歩っち足あ」は「よく歩く足」、「(外を)歩き回る癖のある足(人)」の意味。
文例②「高足遣え」は「足音戸を立てないように爪先立ちで歩く事」の意味から「気を使うこと」の意味にもなります。
文例③「足畳でぃ座ゆん」は「足を畳んで座る」意味から「何もしないでいる」、「無為徒食」そして「楽している」という意味に発展しています。「忙しばあ」は「忙なさるばあ」という意味の慣用句です。
文例④「足弱」は「足が弱い事」。
文例⑤「足ぬ腸」は「足の裏」。「足なあ」は「足の甲」。
文例⑥「足まるび」は「(慌てる等して)足がうまくコントロールできない様」や「足を滑らす事」の意味。
文例⑦「足力」は前講の「足(あし)どおに」と同じく「足の力」、「脚力」の意味。「寝んじゅん」は「病気等で寝込む」意味もあります。
文例⑧「足まるび手まるび」は文例⑥の「足まるび」と同じ意味ですが、「手まるび」を加える事によって大袈裟な表現となります。「転ぶ」を意味する「どぅ返りゆん」は「転(くる)ぶん」より土着語的であり一般的に多く使われています。
  
【応用問題】
 例文・解説文を参考に次文の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。答えは下欄です。
(歩っち足あ、手まるび足まるびし、足高あ、足畳で座ちょおちいねえ)

① 子(くぁ)ぬ怪我(きが)さんでぃぬ話聞(ばなしちん)ち、落(う)てぃたい舞(も)おたいし来(ち)ゃん。
② 今(なま)ぬ世(ゆう)や、女(ゐなぐ)やてぃん、家(やあ)んかい掛(か)からぬうやしがる普通(ふつう)やる。
③ あたら若者(わかむん)ぬ家(やあ)んじ、空居(んない)いしん、仕口(しくち)え、とぅめいゆさん。
④ しょう脱(ぬ)ぎとおるばあや、どぅ返(け)ゆる事(くとぅ)ん有(あ)くとぅ、良(ゆ)うし。
⑤ 三(さ)味(ん)線(しん)や高鳴(たかな)いすくとぅ、稽古(ちいく)するばあや、気遣(ちじけ)えすん。
答え:
① 手まるび足まるびし。
② 歩っち足あ。
③ 足畳でぃ座ちょおちいねえ。
④ 足まるびする。
⑤ 高足遣え。

日本語意訳
①子が怪我をしたと聞いて、躓いたり、転んだりしながら来た。
②現代は女性でも外出するのが普通である。
③あたら若者が家で無為に座っていても仕事は探せない。
④びっくりした時は、転ぶこともあるので気を付けて。
⑤三味線は音が大きいので、練習する場合は気遣いをする。

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