比嘉清の文でおぼえるうちなあぐち

聴ち美らさ 語い美らさ 書ち美らさ 御万人ぬうちなあぐち

はいさい、ぐすうよう。いめんせえびり。 うちなあぐちの散文を丁寧文で実践している比嘉清です。 うちなあぐちへは散文から入るのも一つの手です。沖縄の団塊世代は日本語を学ぶのに100%近くが小学校の教科書から入りました。大きくなって発音の違いに苦労しましたが、長い目でみれば、今は文章から入ってよかったと思っています。

2016年10月

うちなあぐち

今(なま)ちきてぃ、誰(たあ)ん来(く)うんでえ、ふぃるましいむんやさ。
② 彼(あっ)達(たあ)あや、ちゃあ、今々(なまなま)あし、人慌(ちゅあわ)てぃらかすん。
今(いま)前(めえ)ぬ若者(わかむん)ん達(ちゃあ)や、今(なま)ん今(なまなま)ん、考(かんげ)え様変(ようけ)えゆん。
今(なま)ぬ如(ぐとぅ)今通(なまどぅう)いそおちねえ、何(ぬう)んあらん。
今(なま)でぃいから来(く)ん、なあ、掛(か)き合(あ)あらんどお。
今(く)(此)ぬ頃(ぐる)んしいや、実(じゅん)に異風(いふう)な一件(いっちん)ぬまんどおん。
⑦ 汝達母(いったああんまあ)やてぃから、今方(なまがた)、戻(むどぅ)てぃ走(は)いたしが。
⑧ 今先(なまさち)ぬ騒(さわ)じ事(ぐと)お、今(なあ)だ如(ぐとぅ)、起(う)くりたる事(くと)お無(ね)えんたん。
⑨ 汝番(やあばん)や今(なま)とぅいやあらんくとぅ、待(ま)っちょおけえ。

日本語

未だに誰も来ないとは、珍しいことだ。
② 彼等は何時も、至急だと(言って)、人を慌てさせる。
現代の若者は、次々と、考え方を変える。
このように従来通り、やっておけば、何の問題も無い。
今頃、来たって、もう、間に合わないよ。
この頃は、本当に妙な事件が多い。
⑦ 君達の母なら、今しがた戻って行ったけど。
⑧ さっきの騒動は、今だ嘗て起きた事は無かった。
⑨ 君の番は、今直ぐではないから、待っておけ。

【解説】
 「今語(なまくとぅば)」の慣用句や言い回しは、沖縄語辞典』では殆ど紹介されていませんが、多く使われています。「今頃」、「今迄」等、分かり易い語は省きます。

例文①「今ちきてぃ」は「今だに」、「今に至るまで」などの意味です。
例文②「今々あ」は「緊急」、「至急」等の意味です。「みすみす~」を意味する「なまなまあとぅ~」という副詞がありますが、「今」に関する語であるかについては不明ですので、ここでは意味だけの紹介に止めます。
例文③「今前」は「近年」、「最近」、「現代」等の意味です。「今ん今ん」は「次々に」、「どんどん」、「間髪を入れず」、「目まぐるしく」等の意味です。訳語はそのようなニュアンスで、文脈で決めましょう。
例文④「今ぬ如」は「このように」等の意味で「なまねえし」とも言います。「今通い」は「今迄通り」、「従来通り」。
例文⑤「今でぃい」は「(予定より)遅く~(しても)」、「今になって(しても)」等の意味です。
例文⑥「今ぬ頃んしい」は「今ぬ頃んせえ」、「今頃」とも言います。ここは「今」を当てていますが、「此」でも可です。
例文⑦「今方」は「今しがた」の意味で、「今先(なまさち)」でも代用できます。
例文⑧「今だ如」は否定文を伴い「いまだかって~(し)ない」という意味です。「今だ如やたん」と単独で使う場合も「今だ嘗てなかった事だった」の意味になります。
例文⑨「今とぅい」は「今直ぐ(ではないこと)」の意味の名詞で、否定文が続きますので使い方は用注意です。

【応用問題】
 例文・解説文を参考に次文の太字部分の意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。
(今々あ、今とぅいや、今ん今ん、今だ如、今でぃい)

① 彼(あり)え、今(なま)ん、来(く)うんどお。
② 母(あんまあ)や本土(やまとぅ)んかいや、今迄(なままでぃ)、行(ん)じえんだん。
③ あんし、慌(あわ)てぃはあてぃいしみいねえ、考(かんげ)えゆるまどぅん無(ね)えん。
④ 決(ち)わみ事(ぐと)お、ぞうふぃた、変(け)えらんけえ。
⑤ 祝儀(すうじ、しゅうじ)え、未(なあ)だ、始(はじ)まらんくとぅ、よおんなあ行(い)かな。
答え:
① 今ちきてぃ。
② 今だ如。
③ 今々あ。
④ 今々ん。
⑤ 今とぅいや。

日本語意訳
①彼は未だに来ないよ。
②母はいまだ嘗て、本土に行った事はない。
③そんなに、急いでさせたら、考えるゆとりもない。
④決め事は、しょっちゅう、変更するな。
⑤祝宴は未だ始まらないから、ゆっくり行こうよ。

うちなあぐち

空物(からむん)とぅ空茶(からざあ)びけえ、みせいねえ、貧(ふぃん)相者(すうむん)ぬ如(ぐと)とおん。
空酒(からざき)、ちゃあ飲(ぬ)みいしいねえ、酒(さき)がくがなゆら。
空地(からじい)ぬ上(ゐい)ん空床(からゆか)ぬ上ん、足(ふぃさ)まんちしいねえ足ぬ痛(や)むん。
④ あぬっ人(ちゅ)お、空威張(からいば)いさあに、、空咳(からざっくい)びけんそおん。
⑤ 何(ぬう)ん食(か)まんようい、酒飲(さきぬ)むくとぅどぅ、空嘔(からゐいばち)そおる。
⑥ 木薪(だむん)燃(め)えち後(あとぅ)ぬ空灰(からふぇえ)、畑(はたき)んかい持(む)っち行(ん)じ取(とぅ)らし。
⑦ 長(なげ)えさ雨(あみ)ぬ、降(ふ)らな、まあんくん、空渇(からがあ)きそおん。
⑧ 亡(ま)あちゃる人(ちゅ)ぬ空骨(からふに)ぬ供養(くよう)ぬ為(たみ)、空御花(からんぱな)うさぎら。
⑨ 弦(ちる)ぬ鳴物(ないむん)ぬ空弾(からば)んち(ちぇ)え、良(ゆ)う響(ふぃび)ちゅん。

日本語

おかず無しの飯から茶だけ、召し上がると貧乏みたい。
ストレートの酒を飲み続けると胃癌になるのだろうか。
地べたでも空床でも、正座すると、足が痛む。
④ あの人は。空威張りして、空咳だけしている。
⑤ 何も食べずに酒を飲んだから嘔(からえずき)しているのだ。
⑥ 薪を燃やした後のは、畑に持って行ってくれ。
⑦ 長らく、雨が降らず、どこもかしこも干上がっている。
⑧ 死者の亡骸を供養する為に、御花米を供えしよう。
⑨ 弦楽器の開放弦は、良く響く。

【解説】
例文①「空物」は「おかずなどのないご飯だけの食事の事」で「空米(からめえ)」とも言います。
例文②「空酒」は「つまみや食事をとらないでのむ酒」又は「水等で薄めない酒」の意味です。
文例③「空地」は「地べた」。「空床」は「何も敷いてない床」。
例文④「空威張い」は文字通り「空威張り」。「空咳」は「空咳(からせき)」。
例文⑤「空嘔(からゐいばち)」は「からえずき」。
例文⑥「空灰(からふぇえ、からへえ)」は「薪を燃やした灰」。「木薪」は「薪(たむん)」と同じです。
例文⑦「空渇き」は「井戸や川が干上がっている事」。
例文⑧「空骨」は「白骨」又「亡骸」。「空御花」は、「洗ってない祈願用の米」。「ぱな(花)」は「はな」の「古音」で北部や先島地方に残っています。
例文⑨「空弾んち」は「弦楽器における開放弦」又は「開放弦を弾く事」の意味です。

【応用問題】
 例文・解説文を参考に次文の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。答えは下欄です。
(空酒、空騒じ、空待ち、空乾き、空骨)

空米(からめえ)びけん食(た)みいねえ、食(か)みぶらありなゆんどお。
② 昔(んかし)え、さあいないねえ、やあさ死(じ)にする人(ちゅ)ん居(をぅ)たんでぃさ。
③ 洗骨(しんくち)え、なれえ、骨(ふに)なてぃから、すし(せ)えまし。
④ 強(ちゅう)ばあ振(ふ)うなあし、何(ぬう)ん糅(か)てぃらんようい、酒(さき)飲(ぬ)むし(せ)えあらん。
⑤ ハープお諸(むる)弦(じる)、指(いいび)なかい押(う)すらんようい、弾(は)んち鳴(な)らすんでぃさ。
答え:
① 空物。
② 空渇き。
③ 空骨。
④ 空酒。
⑤ 空弾んちし。

日本語意訳
①米だけ食べると、栄養不足になるよ。
②昔は旱魃になれば、餓死する人もいたとさ。
③洗骨(註)は、できれば、白骨になってからした方が良い。
④強がって、薄めないで酒を飲むものではない。
⑤ハープは全ての弦を開放弦で鳴らすのだとさ。
註:嘗ては「洗骨」の習慣がありました。

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