比嘉清の文でおぼえるうちなあぐち

聴ち美らさ 語い美らさ 書ち美らさ 御万人ぬうちなあぐち

はいさい、ぐすうよう。いめんせえびり。 うちなあぐちの散文を丁寧文で実践している比嘉清です。 うちなあぐちへは散文から入るのも一つの手です。沖縄の団塊世代は日本語を学ぶのに100%近くが小学校の教科書から入りました。大きくなって発音の違いに苦労しましたが、長い目でみれば、今は文章から入ってよかったと思っています。

2016年11月

うちなあぐち

① 昔(んかし)ぬ魚売(いゆう)やあ女(ゐなぐ)お、かみ商(あちね)えし、歩(あ)っちょおたん。
② 寒(ふぃい)さぬ、茶(ちゃあ)やかみてぃから、飲(ぬ)むし(せ)えましどお。
③ 闘牛(うしおおらせえ)んじえ突(ち)ちかみらりいねえ、なあ、うっさやさ。
④ 山羊(ふぃいざあ、ひいざあ)ぬん、人(ちゅ)かみゆる事(くとぅ)んあん。
⑤ 柱(はあや)んかい頭(ちぶる)かみいねえ、があなあぬ出(ん)じゆんどお。
⑥ 酒癌(さきがく)がやら、腸(わた)かみらってぃふしがらん。
かみちやれえ、早(ふぇえ、へえ)く、医者(いしゃ)んかい診(み)しゆし(せ)えまし。
⑧ 彼(あり)え、天井(てぃんじょう)かみゆるあたい、丈(たき)ぬ高(たか)さん。
⑨ 父(すう)や女(ゐなぐ)ん子(ぐぁ)、所帯(すうてえ)かみらち、うみなあくそおん。

日本語

① 昔の魚売り女性は品物を頭の乗せて行商をしていた。
② 寒いし、お茶は温めてから飲むのが良いよ。
③ 闘牛では、(牛は)突き上げられたら、もうそれまでだ。
④ 山羊でも人を突くことがある。
⑤ 柱に頭をぶつけると、たんこぶが出るよ。
⑥ 胃がんなのか、胃腸に鈍痛があってしょうがない。
胃痙攣なら、早く医者に見えたほうが良い。
⑧ 彼は頭が天井を着くほど、背が高い。
⑨ 父は娘を嫁にやり、ほっとしている。

【解説】
例文①「かみ商え」は、「品物(主には魚類)を入れた笊(ばあき)を頭に乗せて行商すること」です。
例文①「茶かみゆん」は、「お茶を温める」意味です。
例文②「突ちかみゆん」は「(角などで)突き上げる」の意味です。ここでは、単に「かみらりいねえ」でも同じ意味になります。
例文③「人かみゆん」は「人を突く」の意味です。
例文⑤「頭かみゆん」は「(何かに)頭をぶつける」の意味です。
例文⑥「腸かみゆん」は「胃腸が突き上げられるような鈍痛がする」という意味になります。
例文⑦「かみち」は「胃痙攣」の意味で、「かみゆん」から派生した名詞です。例文にはありあませんが、「かみらりやあ」は「胃痙攣持ち(胃痙攣の持病の持ち主)」という意味です。
例文⑧「天井かみゆん」は本来的には「天井を頭に乗せる」ですが、「頭が天井に着く」という慣用的意味になります。
例文⑨「所帯かみらすん」は「所帯を持たす」意味から転じて「嫁にやる」の意味です。

【応用問題】
例文・解説文を参考に次文の「かみゆん」に近い語句を左の( )内から選びなさい。答えは下欄です。
(天井んかいや行逢ゃらん、頭んかい乗してぃ、温ちらち、ふぃいぬ痛むくとぅ、突ち飛ばさってぃ)

① あん小(ぐぁあ)や、かみてぃ、うり売(う)いが(「谷茶前節」より)。
腸(わた)ぬかみらりいくとぅんでぃちん、酒(さき)がくやるむぬ(の)おあらん。
ミルクんかみてぃ、飲(ぬ)だれえ、体(からた)ん温(ぬく)たまやびたん。
④ ちゃっさ、程(ふどぅ)ゐいとおんでぃ言(い)ちん、天井(てぃんじょう)迄(まで)えかみらん
⑤ くねえだ、車(くるま)なかい突(ち)ちかみらってぃ、死(し)にがたあ回(まあ)とおたん。
答え:
① 頭んかい乗してぃ。
② ふぃいぬ痛むくとぅ。
③ 温ちらち。
④ 天井んかいや行逢ゃあらん。
⑤ 突ち飛ばさってぃ。

日本語意訳
①娘が頭に乗せてをそれを売りに。
②胃腸に鈍痛があるからといって胃がんだと限らない。
③ミルクを温めて飲んだら、良いのだ。
④いくら成長したからといって、天井迄は届かない。
⑤この間、車に撥ねられ、死にそうになっていた。

うちなあぐち

正月(しょうぐち)かみてぃ、うんじゅなあ達(たあ)百(むむ)果報(がふう)願(にが)やびら。
② 御祭(うまちい)んかい行(い)ちゆさんたる人(ちゅ)んかいや花米(はなぐみ)かみらせえ
徳(とぅく)かみとおる人(ちゅ)ぬ寄(ゆし)し事(ぐと)お、良(ゆ)う聞(ち)ちゅし(せ)えまし。
④ 物食(むぬか)むる前(めえ)ねえ、御(うめ)箸(えし)かみてぃ、三拝(にふぇえ)拝(うが)みわるやる。
⑤ 父(すう)や取(とぅい)い破(やん)てぃ、笑(わら)やがなあ手(てぃい)かみとおみたん
贈物(うくいむん)かみらちうたびみしょうち、三拝(にふぇえ)でえびる。
⑦ 夫婦(みいとぅんだ)あ共(とぅむ)に白髪(しらぎ)かみゆる迄(までぃ)、愛々(かながなあ)とぅしわるやる。
御香(うこう)かみてぃ、仏壇(ぶちだ)ぬんかい手押(てぃいう)さあちゃん。

日本語

正月を迎え、皆様方のご多幸を祈願いたします。
② 穂祭に行けなかった人には頭に御花を乗せなさい
徳を備えている方の教え良く聞くべきである。
④ 食事の前に箸を持ち上げ、感謝を述べるべきである。
⑤ 父はしくじって、笑いながら頭を掻いていた
⑥ '''贈り物を頂きまして、感謝申し上げます。
⑦ 夫婦は共に白髪を授かる迄、仲良くすべきである。
香を供えて、仏壇に手を合わせた。
  
【解説】
「かみゆん」は首里語系。多くは「かみいん」です。「頭に頂く」「頭に乗せる」等の意味から、文例のような色々な意味に転じています。例文を参考に関連の造語をつくる事も可能です。尚、「かみゆん」の習慣は本島今帰仁辺り迄で、それより北部では「はさぎいん」(紐の付いた背負い籠を頭から下げる)の習慣に変わります。

例文①「正月かみゆん」は「正月を迎える」ですが、あくまで慣用的意訳です。「迎える」の意味としては人その他に使いません。例えば、「人かみゆん」は「人を迎える」ではなく、次講にあるように「人を突く」意味になってしまいます。
例文②「花米」は「御花(みはな)」とも言い、御願(うぐぁん)(神事)をする時に使う米で清める効果をあるされています。
例文④「徳かみゆん」は「徳を授かる」、「得が備わる」の慣用的意味。単独では「授かる」、「備わる」等の意味はありんません。
例文⑤「手かみゆん」は直訳では「手を頭に乗せる」ですが、この場合は「頭を手で掻く」の意味です。
例文⑥「贈物かみゆん」は「贈り物をいただく」の意味です。「頭に乗せる」という仕草が連想されますので、恭しく頂くのニュアンスになります。
例文⑦「白髪かみゆん」は、白髪を老化と捉えず、「天下の授かり物」とする発想から「白髪を授かる」と訳します。
例文⑧「香かみゆん」は直訳は「香を頭に乗せる」ですが、この場合は「香を供える」の意味となります。

【応用問題】
 例文・解説文を参考に次文の「かみゆん」に近い語句を左の( )内から選びなさい。答えは下欄です。
(頭んかい乗してぃ、拝でぃ、置ちきてぃ、儲きてぃ、生いとおる)

① 花(はな)や露(ちゆ)頂(かみ)てぃ、摘(む)いやならん(「貫花」より)。
② 働(はたら)ちゃあに、銭(じ)ぬん、かみてぃ、めんそおれえ。
美公事(ゑえだい)かみてぃ、うりやかぬ果報事(かふうぐとぅ)や無(ね)えやびらん。
かみてえるあたら白髪(しらぎ)、染(す)みいし(せ)え、如何(ちゃあ)がやら。
⑤ 二(にん)合(ごう)やうたびみそり、かみてぃ、みぐやびら(「サフエン節」より)。
答え:
① 置(う)ちきてぃ。
② 儲(もう)きてぃ。
③ 拝(をぅが)でぃ。
④ 生(み)いとおる。
⑤ 頭(ちぶる)んかい乗(ぬ)してぃ。

日本語訳
①花は露に濡れて、摘むことはできない。
②働いて金を稼いで、いらっしゃい。
③官職を賜り、これほど幸せな事はございません。
④せっかく生えた白髪を染めるのはどうだろうか。
⑤(酒は)二合ばかりください、頭に乗せて巡りましょう。

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