比嘉清の文でおぼえるうちなあぐち

聴ち美らさ 語い美らさ 書ち美らさ 御万人ぬうちなあぐち

はいさい、ぐすうよう。いめんせえびり。 うちなあぐちの散文を丁寧文で実践している比嘉清です。 うちなあぐちへは散文から入るのも一つの手です。沖縄の団塊世代は日本語を学ぶのに100%近くが小学校の教科書から入りました。大きくなって発音の違いに苦労しましたが、長い目でみれば、今は文章から入ってよかったと思っています。

2016年12月

うちなあぐち

口(くち)ぬ性(しょう)んありわる、物(むぬ)んまあさる。
② どぅく、恥(は)じかさぬ、面性(ちらしょう)けえ抜(ぬ)ぎたっさあ。
③ 人(ちゅ)てぃらむぬお、しょうたましぬありわる実(じゅん)ぬ人(ちゅ)やる。
胴性(どぅうしょう)、大切(てえしち)にさんでえ、しょうん立(た)たん
しょう所(どぅくる)、打(う)っちぇえ無(ね)えらんでえ、支(ちけ)え無えらんさ。
性抜(しょうぬ)があサンタクロース、クリスマス前(めえ)に巡(みぐ)てぃ来(ち)ゃん。
しょう物言(むに)いすくとぅ、しょうさんでえならん。
⑧ 思事(うむくとぅ)ぬ実(じゅん)に、しょうなゆんでえ、思(うま)あんたん。

日本語

味覚もあってこそ、食事も美味しいのである。
② あまりにも、恥ずかしくて、顔色(面目)を失ったよ。
③ 人たるものは人間らしさが備わってこそ真の人間だ。
健康に気遣いする心を大切にしないと甲斐が無い
急所を打ってなければ、大丈夫だよ。
慌てん棒のサンタクロース、クリスマス前にやって来た。
まともな言い方をするので、本気にしなければならない。
⑧ 考えていた事が、本当に、実現するとは思わなかった。

【解説】この講ではひらがな表記の「しょう」は「性」ではなく、「正」の可能性もあるものの、この講で紹介します。

例文①「口ぬ性」は「味覚」、「食物の具合を“味分ける”力」等の意味です。
例文②「面性」は「面目・しっかりした顔つきを保つ力」等の意味です。
例文③「しょうたまし」は「人間らしさ」等の意味です。
例文④「胴性」は「身体・健康を思いやる精神・心」等の意味です。「しょうん立たん」は「効果が無い」等の意味です。
例文⑤「しょう所」は「急所」等の意味で、「そうどぅくま」とも言います。
例文⑥「性抜があ」は前講の「性抜ぎゆん」の派生名詞で「慌て者」、「うっかり者」「粗忽者」等の意味で「下性抜があ」とも言います。
例文⑦「しょう物言い」は「まともな口のききかた」、「ちゃんとした話し振り」等の意味です。「しょうすん」は「本気にする」。
例文⑧「しょうなゆん」は「実現する」、「本当になる」等の意味です。『正』の可能性が大です。

【応用問題】
 例文・解説文を参考に次文の太字部分に近い語句を左の( )内から選びなさい。答えは下欄です。
(胴性、しょう所、しょうたましぬありわる、性抜があ、口性ぬあれえ)

① 人ぬ事(くとぅ)考(かんげ)えゆる事ぬなゆる人(ちゅ)ぬらあさる人ぬ居(をぅ)りわる人ぬ世(ゆう)やる。
命所(ぬちどぅくる)お、あたらさし、かげえらんでえならん。
身体(からた)大切(てえしち)にする肝(ちむ)んちょおんあれえ、病(やんめえ)んかいやない難(ぐり)さん。
味(あじ)ぬ分(わ)かいねえ、食(か)まりゆしとぅ食まらんしぬ別(びち)ん分かゆん。
⑤ 墨(しみ)筆紙(ふでぃかび)ん持(む)たんようい、学校(がっこう)んかい行(い)ちゅんでえ、粗忽(すくち)な者(むん)やさ。
答え:
① しょうたましぬありわる。
② しょう所。
③ 胴性。
④ 口性ぬあれえ。
⑤ 性抜があ。

日本語訳
①他人を思いやる事ができる人間らしさがあってこその人間社会である。
②急所は大事に保護しなければならない。
③身体を大事にする心さえあれば、病気にはなりにくい。
④味覚があれば、食べられる物と食べられない物の区別も分かる。
⑤文房具も持たずに登校するとは、うっかり者だ。

うちなあぐち

① あぬ童(わらび)え、でえじな、しょう入(い)っちょおん
② うかあさる大道(うふみち)んじ遊(あし)ぶんでえ、実(じゅん)にしょうん無(ね)えん
③ 近頃(ちぐぐる)お性魂(しょうたまし)性かにん無(ね)えん人(ちゅ)ぬ増(うゎあ)あちょおる風儀(ふうじ)。
④ 年取(とぅしとぅ)いねえ、目(みい)ぬ性(しょう)耳(みみ)ぬ性鼻(はな)ぬ性ん無(ね)えんなゆん。
⑤ 年度末(にんどぅしい)ないねえ、どぅく、忙(いちゅ)なさぬ、肝性(ちむしょう)ん思(うま)あらん
⑥ 人(ちゅ)ぬ性分(しょうぶん)のお、ふぃれえてぃ、見(ん)だんでえ、分(わ)からん。
性無(しょうま)でぃい、来(く)うんでえ、くぁっちいや当(あ)たらんどお。
⑧ あんし、性抜(しょうぬ)ぎてぃ、食(か)でぃん、味(あじ)ん分(わ)かいがすら。

日本語

① あの子は、とても、利口でしっかりしている
② 危ない大通りで遊ぶとは、本当に迂闊だ
③ 近頃は人間らしさ理性も失った人が増えたよう。
④ 年を取れば、視覚聴覚臭覚も衰える。
⑤ 年度末になると、とても忙しくて、頭が混乱する
⑥ 人の性格は付き合って見ないと、分からない。
急いで来ないと、御馳走にありつけないよ。
⑧ そんなに、慌てて食べても、味が分かるのだろうか。
 
【解説】
 「性」は同音で「正」(そう物、そう名、そう事)とは別ですが、「しょうぶりむん(全くの狂り者)」等、何れとも判別しがたい語句(また何れでも良い語句)もあります。なお、「性」とは限らない語もありますが、この場合はひらがなで表記します。発音は「しょう」と「そう」の二通りがあります。

例文①「しょう入ゆん」は「小利口になる」、「しっかりする」の意味です。「しょう入らあ」は「しっかりした子」。
例文②「しょうん無えん」は「精神がしっかりしてない」、「心がこもってない」、「甲斐がない」等の意味です。
例文③「性魂」は「精魂」、「精神」等の意味。「性(正)かに」は「精根」、「本性」、「理性・知性」等の意味です。
例文④「目ぬ性」は「視力・視覚」等の、「耳ぬ性」は「聴力・聴覚」等の、「鼻ぬ性」は「嗅覚」等の意味です。
例文⑤「肝(ぬ)性ん思あらん」は「心身ともに混乱する」「自分を見失う」等の意味。「しょうん無(ね)えん」にも似ます。
例文⑥「性分」は日本語とほぼ同じ意味で「性質」、「性格」等の意味です。
例文⑦「性無でぃい」は「『性(魂)』を失うほどに」という意味から単に「早く」という意味で主に地方で使われ、「そうまりい」とも言います。「無でぃい」の使われ方は「親無(うやま)でぃい」(孤児)、「家無(やあま)でぃい」(ホームレス)等。
例文⑧「性抜ぎゆん」は「『性(魂)』が抜けてしまう」、「肝を潰す」、「慌てふためく」等という意味で「性抜ぎてぃ」は「慌てて」という意味で使われます。 

【応用問題】
 例文・解説文を参考に次文の太字部分に近い語句を左の( )内から選びなさい。答えは下欄です。
(肝性ん思あらん、性無でぃい、性かに、性抜ぎとおたん、耳ぬ性ん無えん、性抜ぎてぃ)

① 今(なま)ぬ世(ゆう)や並(なみ)ぬ人迄(ちゅまでぃ)ん、かに外(はん)でぃとおるうぬまんどおん。
② 汝(やあ)や、しょうん思(うま)あらんどぅあみ、あんし、どぅまんぎぃてぃ。
③ 正月市(しょうぐぁちまち)んじえ、早(ふぇえ、へえ)く、買(こ)おゆしがむぬうどぅやんどお。
④ 子(くぁ)ぬあしゅらなとおんでぃぬ話聞(はなしち)ち、母(あんまあ)やどぅまんぎとおたん
⑤ 御主前(うすめえ)や耳(みみ)ん聞(ち)からんがあら、いれらんでぃん、しんしょうらん。
答え:
① 性かに。
② 肝性ん思あらん。
③ 性無までぃい、性抜ぎてぃ。
④ 性抜ぎとおたん。
⑤ 耳ぬ性ん無えん。

日本語訳
①現代は普通の人でも理性を失っている者が多い。
②君は混乱しているかね、これほどうろたえて。
③正月市では早く買うのが勝ちだぞ。
④子が迷い子になったと聞いて母は、落ち着きを失っていた。
⑤祖父は耳が聞こえないのか、返事をしようともなさらない。

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