比嘉清の文でおぼえるうちなあぐち

聴ち美らさ 語い美らさ 書ち美らさ 御万人ぬうちなあぐち

はいさい、ぐすうよう。いめんせえびり。 うちなあぐちの散文を丁寧文で実践している比嘉清です。 うちなあぐちへは散文から入るのも一つの手です。沖縄の団塊世代は日本語を学ぶのに100%近くが小学校の教科書から入りました。大きくなって発音の違いに苦労しましたが、長い目でみれば、今は文章から入ってよかったと思っています。

2017年01月

うちなあぐち

① 三(さ)味(ん)線(しん)ぬ稽古(ちいく)お百重(むむかさ)に重にさんでえ、取(とぅ)い覚(う)びららん。
② ハブんかい、はっちゃかてぃ、百屈(むむかが)ん屈んしちゃん。
③ 戦(いくさ)ぬばす(そ)お、諸(むる)ぬ沖縄人(うちなあんちゅ)ぬ百(むむ)ぬ苦(くり)しゃしみらったん。
④ 平生(ふぃいじい)から体大切(からたてえしち)にしいねえ、百(むむ)命(ち)延(ぬ)ばする事(くとぅ)んなゆん。
⑤ 平和(ひいわ)ぬむとぅうとおる事(くと)お、実(じゅん)に百孵(むむし)でぃどぅやる。
⑥ うぬ回(みぐ)い者(むん)や、百(むむ)脅(うどぅ)し脅(うどぅ)さってぃん、怖(う)じいらんたん。
⑦ 彼(あ)っ達(たあ)や百一(ひゃくいち)いどぅやとおてぃ、ぞうい、積(ち)むららん。
百歳(ひゃくせ)ぬ後(あとぅ)ぬ事(くと)お、何(ぬう)ん世話(しわ)あ、さんてぃん済(し)まびいさ。

日本語

① 三味線の稽古は何度も繰り返さないと、習得できない。
② ハブに出くわして、縮み上がった
③ 戦争の時は全ての沖縄人が、ひどい苦しみを味わされた。
④ 普段から身体を大事にすれば、大切な命を長らえる事もできる。
⑤ 平和が続いている事は、本当にありがたい事である。
⑥ その活動家はどんなに脅迫されても、怯まなかった
⑦ 彼らは嘘つきなので、とても、当てにならない。
死後の事は何の心配もしなくて良いですよ。

【解説】
 例文⑧と⑨は「百(ひゃく)」ですが、例文以外の一般的な「百」に関する語句は慣用的な使い方は殆どありませんので、略します。 

例文①「百重に重に」は「幾度となく」、「何度も」、「繰り返し」等の意味です。
例文②「百屈ん屈んすん」は「縮み上がる」。なお、「屈(かが)まゆん」には「うずくまる」の意味もあります。
例文③「百ぬ苦しゃ(百ぬ苦さ)」は「多くの苦しみ」、「ひどい苦しみ」等の意味です。
例文④「百命」は「大切(大事な)な命」の意味です。
例文⑤「百孵でぃ」は「とてもありがたい事」の意味です。
例文⑥「百脅し脅すん」は「さかんに威嚇する」、「脅迫する」、「大いに脅す」等の意味です。
例文⑦「百一い」は「百回に一回しか本当の事を言わない人、つまり嘘つき」の意味です。
例文⑧「百歳ぬ後」は慣用的には「死後」ですが、寿命が延びた現代では文字通り「百歳の後」との解釈も追加しなければならないかも知れません。「済まびいさ」は「済なびいさ(首里語)」とも言います。

【応用問題】
例文・解説文を参考に次文の太字部分に近い語句を左の( )内から選びなさい。答えは下欄です。
(百命、百ぬ苦しゃ、百勇でぃ勇でぃ、百一い、百孵でぃ)

① 沖縄人(うちなあんちゅ)お戦後(いくさあとぅ)ん、今(なま)ちきてぃ、哀(あわ)りぬ段々(だんだん)しみらっとおん。
あたら命(ぬち)、失(うし)ゆる事(くとぅ)やかん、なちかさる事んあみっさ。
③ 沖縄語(うちなあぐち)え大概(てえげえ)に済(し)まさんようい、うみはまてぃ、しいなさりいびちい。
④ 沖縄語え昔(んかし)からぬ書物(しゅむち)ぬ残(ぬく)いまんどおくとぅ、有(あ)り難(がて)え事(くとぅ)やん。
嘘物言(ゆくしむに)いぬ言し(せ)え、厳(じん)重(じゅう)ならん。
答え:
① 百ぬ苦しや。
② 百命。
③ 百重に重に。
④ 百孵でぃ。
⑤ 百一い。

日本語訳
①沖縄人は戦後もいまだに多くの苦しみを味わさている。
②大切な命を失う事より、悲しいことがあるものか。
③沖縄語は大概にはせず、努力を重ねて完成させられるべき。
④沖縄語は昔から文献が多く残されているので有り難い事である。
⑤嘘付きの言う事は信用が置けない。

うちなあぐち

百事(むむくとぅ)ん御計(うはか)れえぬあくとぅ、何(ぬう)ぬ世話(しわ)ん無(ね)えらん。
② 銘苅子(みかるし)や女(ゐなぐ)ぬ飛衣(とぅんす)、蔵(くら)んかい百隠(むむかく)し隠しそおたん
③ 御胴(うんじゅ)なあ達(たあ)ぬ百情(むむなささき)故(ゆい)に、病(やんめえ)ん、諸治(むるのお)いさびたん。
④ うずでぃ、百縋(むむしが)い縋いすんでぃ思(うみ)いねえ、肝(ちむ)ん肝ならん。
百(むむ)勇(いさ)み勇でぃ、露(ちゆ)程(ふどぅ)ん敵(てぃち)ぬ知(し)らぬ如(ぐとぅ)に。
⑥ 沖縄(うちなあ)んじぬ戦(いくさ)ぬ事(くと)お御(う)万人(まんちゅ)なかい、百(むむ)伝(ちて)えさっとおん。
⑦ うじゃが守(むい)や、百按司(むむじゃな)、首里(しゅい)んかい、移(うつ)さびたん。
百年(むむとぅ)何時(いち)迄(までぃ)ん百(むむ)果報(がふう)かみらちうたびみせえびり。

日本語

全ては計画済みであるから、何の心配も無用である。
② 銘苅子は女の羽衣を蔵にひたすら隠していた
③ 皆様方のご厚情により、病気も完治いたしました。
④ 目覚めて、縋りっ放しになるのかと思うと気が気でない。
全力を尽して、少しでも敵に知られないように。
⑥ 沖縄戦は全ての人々によって、数多く語り継がれている。
⑦ 尚真王は、諸候を首里に移住させました。
百歳なる迄も御多幸を我に賜れ。

【解説】
 「百(むむ)」は、多くは組踊作家等が好んで使用した「文語」です。「百」は「多くの」、「とても」等の意味を含んでいますが、単に強調の意味しかない場合もあります。造語も容易ですので、話し言葉でも使用していきたいものです。「百」に続く語句が動詞からの派生語(名詞)が繰り返される場合とこれに派生元の動詞が付く場合のそれは副詞となりますが、以外は基本的には名詞となります。例:「百縋い」(名詞)、「百縋い縋い」(副詞)、「百縋い(副詞)縋ゆん」。

例文①「百事」は「色んな事」、「全ての事」の意味です。「御計れえぬあん」は「ご計画がある」の意味です。
例文②「百隠し」は「ひたすら隠す事」。「百隠し隠し」は「ひたすら隠して」の意味となります。
例文③「百情」は「多くの情」、「ご厚情」等の意味になります。
例文④「百縋い」は「(子供等が母親に)縋り続けている事」、「百縋い縋い」で、「縋りっ放しになって」の意味です。
例文⑤「百勇み」は「大いに勇む事」、「百勇み勇み」で「全力を尽して」、「果敢に」等。例文は「忠士身替の巻」より。
例文⑥「百伝い」は「沢山聞かせる事」、「多く語り継ぐ事」の意味です。「うじゃが守」は尚真王の神号。
例文⑦「按司」は「琉球各地に割拠していた豪族」。「百按司」は「諸侯」。
例文⑧「百年」は「百年、百歳」。同類に「十百歳(とぅひゃくせ)」があります。「百果報」は「ご多幸」、「とても幸せなこと」。

【応用問題】
 例文・解説文を参考に次文の太字部分に近い語句を左の( )内から選びなさい。答えは下欄です。
(百事、百隠し、百勇でぃ勇でぃ、百果報ぬ付ちょおしん、百縋い縋い)

① あぬ童(わらび)え母(あんまあ)んかい、たっくぁいむっくぁいそおん。
② 汝(やあ)があんし、幸(せえゑえ)いやしん、諸(むる)ぬ御陰(うかじ)どぅやんどお。
③ 世(ゆ)ぬ中(なあか)んかい、実(じゅん)に色(いる)んな事(くとぅ)ぬあんやあ。
④ 家組(やあぐな)ぬ為(たみ)ねえ、命(ぬち)うみはまてぃ、働(はたら)きわるやんどお。
⑤ 知(し)らしびちいやる事(くと)お、ちゃあ隠(かく)しいし(せ)えならん。
答え:
① 百縋い縋い。
② 百果報ぬ付ちょおしん。
③ 百事。
④ 百勇でぃ勇でぃ。
⑤ 百隠し。

日本語訳
①あの子は母親にくっ付いて(ばかり)いる。
②君が幸せになったのも皆のお陰だぞ。
③世の中にはほんとうに色んな事があるね。
④家族の為には、全力で働かなければならよ。
⑤知らせるべき事をひた隠しにしてはならない。

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