比嘉清の文でおぼえるうちなあぐち

聴ち美らさ 語い美らさ 書ち美らさ 御万人ぬうちなあぐち

はいさい、ぐすうよう。いめんせえびり。 うちなあぐちの散文を丁寧文で実践している比嘉清です。 うちなあぐちへは散文から入るのも一つの手です。沖縄の団塊世代は日本語を学ぶのに100%近くが小学校の教科書から入りました。大きくなって発音の違いに苦労しましたが、長い目でみれば、今は文章から入ってよかったと思っています。

2017年02月

うちなあぐち

家普請(やあぶしん)家造(やあづくい)い入(い)るみ支(し)こうらんでえならん。
家小(やあぐぁあ)やてぃん、家無(やあま)でぃいやかやましどぅやる。
③ 今(なま)あ外(ふか)んじ仕口(しくち)する人(ちゅ)ぬまんでぃ、家(やあ)や投(な)ぎらっとおん
家葺(やあふ)ちいや、家(やあ)ん旋毛(ちじ)からすし(せ)え、まし(せ)えあらに。
⑤ 目(みい)ぬ病(やんめえ)や目屋(みいやあ)んじ、歯(はあ)ぬ病や歯屋(はあやあ)んじどぅ治(のお)する。
⑥ 昔(んかし)え長男(ちゃくし)ぬ家人数(やあにんず)お、いいくる、親(うや)とぅ家一(やてぃい)ちやたん。
⑦ 芭蕉衣(ばあさじん)や昔(んかし)え家(やあ)から着(ち)やあどぅやしが、今(なま)あ値高(でえだかあ)やん。
家(やあ)しいちん、なあんあらん、家割(やあわ)い迄(までぃ)すんちんあみ。

日本語

家屋建設建築費用を準備しないといけない。
小さな家でも宿無しよりはましである。
③ 今は外で仕事をする人が多く、家は留守状態である
家葺きは、屋根の天辺からしてくるのがよいではないか。
⑤ 眼病は眼科で、歯病は歯医者で治療するのである。
⑥ 昔は長男家族は、大抵、親と同じ家で同居した。
⑦ 昔は芭蕉衣は普段着だったが、今は高級である。
(苦情で相手の家に)押しかけても足りず、家を壊す事までするのか。

【解説】琉球語(沖縄語)と日本語は祖語を同じくするというのが「定説」ですが、中国を起源とする漢語(亜日本語)に依存していった日本語を尻目に、琉球語の場合は、語彙だけでなく、その言い回し・慣用句などは独自に発展しきています。とりわけ、生活語である「家」も、その使い方において、日本語とは大きなへだたりが感じられます。

例文①「家普請」は「家屋の建築」の意味で「普請」は日本語漢語からの借用語。「家造い入るみ」は「家屋の建築費用」の意味です。参:80講「家造い」。
例文②「家小」は「小さな家」、「小屋」、「家無でぃい」は「宿無し」、「ホームレス」の意味です。
例文③「家投ぎゆん」は「家を留守にする」の意味です。
例文④「家葺ちい」は(主には茅葺の場合の)「屋根葺き」。「家ん旋毛」は「屋根の天辺」の意味です。
例文⑤「目屋」は「眼科の診療書・病院」、「歯屋」は「歯科の診療所・病院」の意味です。
例文⑥「家人数」は「家族」の意味で、「家組(やあぐな)」とも言います。「家一ち」は「同じ家で同居すること」。
例文⑦「家から着やあ」は「普段着」で、「家着(やあち)やあ」とも言います。
例文⑧「家しいちゅん」は「(苦情を言う為に)家に押し入る」の意味。「しいちゅん」は「押し入る」、「押す」の意味。「家割い」は「家を壊すこと」。「家蹴り割いすん」という文句もあります。
 
【応用問題】
 例文・解説文を参考に箇条文の( )に入る語句・文を次行の( )内から選びなさい。答えは下欄です。
(家投ぎゆる、家や一ち、家着やあ、家組、歯屋)

① 歯肉(はあしし)ぬ痛(や)でぃ、くぬ前(めえ)から( )んかいどぅ通(かゆ)とおいびいる。
② ( )ばす(そ)お、締(し)まいや頑丈(がんじゅう)らさんでえならんどお。
③ 彼(あ)ってえ、夫婦別(みいとぅんだわか)りしからん、( )どぅやんどお。
④ 我(わ)ってえ( )ぬまんでぃ、まぎ家(やあ)んかいどぅ住(し)まとおる。
⑤ ちゃっさ美(ちゅ)ら衣(じん)やらわん、古(ふる)みいねえ( )どぅないる。
答え:
① 歯屋。
② 家投ぎゆる。
③ 家や一ち。
④ 家組。
⑤ 家着やあ。

日本語意訳
①歯茎が痛くて、この前から歯医者に通っているのです。
②家を留守にする時は戸締りはしっかりしないといけによ。
③彼らは離婚してからも同居しているんだよ。
④私たちは家族が多くて、大きい家に住んでいるのだ。
⑤どんな一張羅でも、古くなれば、普段着になるのだ。

うちなあぐち

① 「家習(やあなれ)えどぅ外習(ふかなれ)え」でぃぬ文言や国(くに)んかい同(い、ゆ)ぬ如(ぐとぅ)、当(あ)たゆん。
家意地(やあいじゃ、やあいざ)あや、いいくる、外(ふか)んじえ、ゑんださん。
家番(やあばん)のお家籠(やあぐ)まやあんかいしみれえ。
④ 昔(んかし)え長男(ちゃくし)ぬ他(ふか)あ親(うや)ぬ家(やあ)から家(やあ)立(た)たんでえならんたん。
家立(やあた)ちゃあや、家持(やあむ)ち尽(ずく)ぬ事(くとぅ)ん分(わ)かりわるやる。
家借(やあか)やあ家(やあ)ぬ主(ぬうし)んかい、家(やあ)ん代(でえ)、払(ばら)あんとおならん。
家(やあ)ぬ名(なあ)や昔(んかし)からぬシマんかいや今(なま)ちきてぃ、あん。
新家(みいやあ)んかい家移(やあうち)いするばあや味噌(んす)・塩(まあす)から持(む)っち行(い)き。

日本語

① 「家での習慣が他でも出る」という文言は国にも当て嵌まる。
内弁慶は、大抵、外では、大人しい。
留守番は、家に引き籠りがちな者にさせよ。
④ 昔は長男以外は実家から独立しなければならなかった。
家を独立する人家計の事も知らなければならない。
借家人家主に、家賃を払わなければならない。
屋号は古くからの集落(地域)には、今も残る。
新しい家引っ越しする時は味噌・塩から持って行け。

【解説】「家・屋」に関する慣用句・言い回しは多くありますが、ここでは分かり易い語句や日本語的な語句は省きます。

例文①「家習れえどぅ外習え」は「家での(悪い)習慣・躾が外でもつい出てしまう事」。良く知られた「諺」です。
例文②「家意地あ」は「内弁慶」の意味です。
例文③「家番」は「留守番」の意味で「家(やあ)ん番(ばん)」、「家ぬ番」とも言います。「家籠まやあ」は「家に籠もっている者」。その動詞は「家籠(やあく)まゆん」です。
例文④「家立ちゅん」は「(実家)から「独立して世帯を持つ」の意味で、「家(やあ)立(た)っちゅん」とも言います。参:81講「家分かやあ」。「親ぬ家」は「実家」で「親(うや)ん家(やあ)」とも言います。
例文⑤「家立ちゃあ」は例文④「家立ちゅん」の名詞。「家持ち尽」は「家計」、「家政」の意味です。
例文⑥「家借やあ」は「借家人」の意味でその動詞は「家借(やあか)ゆん」です。またその対句は「家(やあ)貸(か)らすん」です。
例文⑦「家ぬ名」は「屋号」の事。「家(やあ)ん名(なあ)」とも言います。所属等を表わす助詞「ぬ」はよく「ん」に変形します。
例文⑧ 「新家」は「(造ったばかりの)新しい家」、「新居」の意味。「家移い」は「引越し」の意味です。「殿内移い」は「士族などの屋敷の引っ越し」の意味の他、「家移い」の敬語、つまり「お引っ越し」の意味でもあります。

【応用問題】
例文・解説文を参考に箇条文の( )に入る語句・文を次行の()内から選びなさい。答えは下欄です。
(家立っちゅん、家籠まいしどぅ、家移い、親ぬ家、家ん番)

① 今(なま)ぬ童(わらばあ)達(たあ)や、外(ふか)んじえ、遊(あし)ばな、( )、遊どおる。
② ( )のお、三(みい)ちなあやがあ、ぞおい、しゆさん。
③ 今(なま)あ長男(ちゃくし)あらんてぃん、妻(とぅじ)とぅめえいねえ、いいくる( )。
④ ( )するばあや、うゎあばな荷(にい)や捨(し)てぃゆし(せ)えまし。
⑤ 妻(とぅじ)え、変気(ふぃんち、ひんち)さあに、( )んかい、走(は)いたん。
答え:
① 家籠まいしどぅ。
② 家ん番。
③ 家立ったんでえ。
④ 家移い。
⑤ 親ぬ家。

日本語訳
①今の子供は外では遊ばず、家に籠もって遊ぶのである。
②留守番は三歳児には絶対無理だ。
③今は長男でなくても結婚したら独立しなければならない。
④引越しする場合は余計な荷物は捨てた方がよい。
⑤妻は機嫌を損ねて、実家へ戻ってしまった。

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